Transcendence


2014年6月28日(土)「トランセンデンス」

TRANSCENDENCE・2014・英/中/米・1時間59分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビーATMOS、ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり、IMDbでは中国は3D上映も)

公式サイト
http://transcendence.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

人工知能を開発中の天才科学者ウィル・キャスター(ジョニー・デップ)は、同じ研究者で妻のエヴリン・キャスター(レベッカ・ホール)、友人の神経生物学者のマックス・ウォーターズ(ポール・ベタニー)らとともに、研究資金を稼ぐため講演会を行うが、そこに来ていた博士に反対する過激派の1人に銃で撃たれるが、軽傷で難を逃れる。そして、キャスター夫妻の恩師であるジョセフ・タガー(モーガン・フリーマン)の紹介で、FBI捜査官のブキャナン(キリアン・マーフィ)に捜査にも人工知能は貢献できると援助を求める。そんなとき、ウィルが撃たれた銃弾に毒が仕込まれていたことが判明、余命4〜5週間と告げられる。人工知能開発をやめ、妻と一緒に過ごそうとするウィルだったが、妻のエヴリンは、量子コンピューターに夫の意識をアップロードし、生かそうと試みるが……。


74点

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 SFながら、ひょっとしたらあり得るのではないかと思わせる想定。ただ意識というものをどう定義するかとか、いろいろ実際にはいくつものハードルが存在するのだろうけど。このありそうな感じが怖さにつながる。そして興味もわく。

 しかしこの設定は、人工知能のOSが意志や感情、人格をもったらという話でもあって、同時公開されている「her 世界でひとつの彼女」(her・2013・米)ともつながる話。あちらは暴走しないが、こちらは暴走する。

 ただ、コンピューターだけでどうやって世界征服するつもりなのかと思ったら、ナノテクを使った粒子のような微小ロボットとはなあ。そして自分でプログラミングすると。これはあるのかも。これが新興宗教のように広がって行くというのも興味深かった。

 銅のネットで電磁波(無線LANの?)をさえぎって人工知能に知られないようにしていたが、他の映画やTVでも良く描かれているように、ネットには多くの監視カメラがつながっており、これらを駆使するともっと敵は強力になるのではないかという懸念は生じた。それはともかく、デジタルを使わずに戦うしかない、というのがおもしろいところだが、あまりそれは出てこなかった。せいぜい銅のネットくらい。

 メインは愛の話ということになるので、それも「her 世界でひとつの彼女」につながる。ただハッピー・エンドとは言いがたいので、アメリカの評価は低いだろう。タイトルのトランセンデンスは、予告でも言っていたが、英語の「超越」という意味なんだとか。

 ウィル・キャスターのジョニー・デップもよく映画に出ている。稼ぎまくり。本作の前には「ローン・レンジャー」(The Lone Ranger・2013・米)に出ていた。まじめな役もやるが、だいたいエキセントリックな役が多く、それがまた似合っている。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)シリーズが有名だが、最近で言えばボク的には「パブリック・エネミーズ」(Public Enemies・2009・米)とか「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏/伊)が良かった気がする。しばらく俳優業を休むような話だったが、公開を控えている新作が6本ほどもある。すごいなあ。

 妻のエヴリンはレベッカ・ホール。本作の監督ウォーリー・フィスターとは「プレステージ」(The Prestige・2006・米/英)で撮影監督として仕事をしている。ベン・アフレックの「ザ・タウン」(The Town・2010・米)では重要なヒロインを、「アイアンマン3」(Iron Man Three・2013・米/中)では若き日のトニー・スタークを誘惑する植物学者を演じていた。

 ウィルの暴走を止めようとする科学者マックスはポール・ベタニー。悪役が多い感じだが、ジョニー・デップと共演した「ツーリスト」では警部を演じていた。「レギオン」(Legion・2010・米)や「プリースト」(Priest・2011・米)などB級作品にも良く出ている。ボク的には「ビューティフル・マインド」(A Beautiful Mind米・2001・)や「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)が良かった。奥さんは「ビューティフル・マインド」で共演したジェニファー・コネリー。

 恩師のジョセフ・タガーはモーガン・フリーマン。残念ながら本作ではあまり活躍していない。それでも存在感はあるのだからさすが。1937年生れというからもう80歳近い。それでも映画に出まくり。2013年に公開されたものだけで4本。近い内にリュック・ベッソンの「LUCY/ルーシー」(Lucy・2014・仏)が公開される。公開を控えているのものが5本もある。

 過激派の女性リーダー、ブリーに「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)のケイト・マーラー、FBI捜査官ブキャナンにクリストファー・ノーラン作品に良く出ているキリアン・マーフィ、施設の建設技術者マーティンに「パシフィック・リム」(Pacific Rim・2013・米)のクリフトン・コリンズ・Jr。

 脚本はジャック・パグレン。これが初の長編劇場映画作品。2012年、ハリウッドの業界人が選ぶまだ製作されていない優秀脚本「ブラックリスト」に選ばれたという。これをクリストファー・ノーランが製作総指揮となり、ノーラン作品のほとんどで撮影監督を務めているウォーリー・フィスターを監督に実現させた。

 監督はこれが初の監督作品となるウォーリー・フィスター。撮影監督だった人で、クリストファー・ノーラン作品以外では、痛快クライム・アクションの「ミニミニ大作戦」(The Italian Job・2003・米/仏/英)や、野球経営ドラマ「マネーボール」(Moneyball・2011・米)などを撮っている。

 登場した銃は、冒頭に登場する軍はM16A2/A3。過激派たちはレミントンM700ボルト・アクション・ライフル。PMCらしい男たちはM4カービン、G36C。マックスは突入のとき表面処理がはげかかったM1911オート、たぶんA1ミリタリーを使う。過激派の女性リーダー、ブリーは、たぶんベレッタ90-Two。

 そういえば量子コンピューターの前面に、日本語でコンピューティングとか書かれていた。2011年の世界最速スーパー・コンピューター「京」に敬意を表したのか。これ、開発は理化学研究所だそうで、2012年にはアメリカが首位を、2013年には中国が首位を奪回している。「京」は現在世界第4位らしい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケで確保。当日は10分前ほどに開場。若い人から中高年まで、割りと幅広かった。男女比はほぼ半々。最終的に607席に5.5割くらいの入り。

 気になった予告編は……宮沢りえが主演するという上下マスクの「紙の月」は、ティーザーのため良くわからなかったが、巨額横領事件を描くらしい。なんだか暗ーいイメージ。11/15公開。

 上下マスクの「ファーナス 訣別の朝」はクリスチャン・ベール主演で、兄弟のストリート・ファイターを描くらしい。9/27公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「クワイ河マーチ」の口笛が聞こえてきて、あの男たちが横一列に勢ぞろいは「エクスペンダブルズ3」。作るんだ。しかもすごいメンバー。11/1公開。

 本編前にコンピューターとかトランセンデンスの日本語の説明あり。しかし、どう考えても必要だったとは思えない。日本独自のもののようで、逆に興ざめだった。


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