Oldboy


2014年6月29日(日)「オールド・ボーイ」

OLDBOY・2013・米・1時間43分(IMDbでは104分)

日本語字幕:黒フチ付き丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(FLECHER、一部8mm、16mmフィルムも)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.oldboymovie.jp
(全国の劇場リストもあり)

1993年10月8日、広告代理店に勤めるジョー・デュセット(ジョシュ・ブローリン)は、離婚した妻と3歳の娘の養育費を払い忘れたことでケンカし、さらにクライアントとの食事で女性にちょっかいを出し、仕事を得ることに失敗する。ヤケになり、泥酔したジョーは、道端で気を失ってしまう。気付くと、ホテルのような部屋に監禁されていた。訳がわからないまま月日が経ち、ある日、TVのニュース・ショーで、妻がレイプされた上に惨殺され、自分が重要容疑者になっていることを知る。そして3歳の娘は養女として、ある家庭に引き取られたことも。さらに月日が流れ、またTVのニュース・ショーで成長した娘の姿を見る。衝撃を受けたジョーは、それから酒をやめ体を鍛え始めると、脱出する計画を練る。ところが、20年目のある日、気が付くとトランクに閉じこめられており、出るとそこは野原の真ん中だった。


74点

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 2004年のカンヌでグランプリに輝いたオリジナルの韓国版「オールド・ボーイ」(Oldboy・2003・韓)を上回る残酷表現。あえ映さなくても良いようなところも、ドキュメンタリーのように切り取っている。省略や雰囲気で伝えるのではなく、ズバリ見せる。想像力に訴えるやりかたではない。だから視覚的な衝撃は大きい分、心理的な衝撃は小さいかもしれない。

 当然ながら、ハリウッド作品なので、オリジナル版より分かりやすくなっている。ただ、その反動で、細かなところでつじつまが合わないと言うか、展開が飲み込めないところはある。一度脱獄を試みていながら、出たようなのにあきらめたのはなぜなのか。なぜアメリカの話なのに敵は銃を使わないのか。家族を惨殺するシーンでは水平二連とか使っているのに……とかとか。

 20年たって出てきたら、人々がタバコを吸わなくなっているというのも面白かった。しかし、日本ではR15+指定なのに、ボカシ多過ぎ。っていうか、ここまで残酷表現が多いのならR18とかにして、ボカシを減らした方が良かったのでは。まさかDVDなんかを発売するときに、無修整版とかいって売るため? 勘ぐりたくなってしまう。

 とにかくがんばっているのはジョシュ・ブローリンだろう。全裸、丸坊主だ。ゲロや立ちションまでやっている。最初はかなりいけ好かないヤツ。そうでなければ、この話は成立しない。あえてそれをやるとは。魅力的な女性マリー役のエリザベス・オルセンも全裸でがんばっている。サミュエル・L・ジャクソンは黄色のモヒカンだ。

 オリジナル韓国版でチェ・ミンシクが演じていた囚われた男、ジョー・デュセットはジョシュ・ブローリン。ハンマーで戦うシーンは本作の方が鮮やかだが、迫力というか気迫や、狭い廊下という設定も韓国版の方が良かった。たしかほぼワン・カットだったのではないだろうか。もちろんジョシュ・ブローリンはがんばっている。見せかたの問題。二枚目なので良い方の役が多かったから、リメイク西部劇「トゥルー・グリット」(True Grit・2010・米)の悪役は意外だった。「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)も強く印象に残った。最近は「L.A.ギャングストーリー」(Gangster Squad・2013・米)の警官のリーダー、見ていないが「とらわれて夏」(Labor Day・2013・米)で脱獄囚を演じている。

 男を監視している組織のボス、チェイニーはサミュエル・L・ジャクソン。黄色のモヒカンとは驚いたが、悪い感じは良く出ていた。つい最近「ロボコップ」(RoboCop・2014・米)にニュース・ショーの強烈なMC役で出ているが、いわゆるアメコミ系の大作ではあまり光っていない気がする。「ジャンゴ 繋がれざる者」(Django Unchained・2012・米)の影の悪役も強烈だった。

 オリジナル版でユ・ジテが演じていた謎の男はシャールト・コプリー。衝撃SF アクション「第9地区」(District 9・2009・米ほか)で主演を演じていた人。本当は二枚目なのに、不気味でエキセントリックな役柄が多く、「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」(The A-Team・2010・米)や「エリジウム」(Elysium・2013・米)、そして「マレフィセント」(Maleficent・2014・米/英)でも素晴らしい悪役を演じている。

 オリジナル版でカン・ヘジョンが演じていたジョーを助けるくれる美女、マリーはエリザベス・オルセン。ロバート・デ・ニーロとシガーニー・ウィーバーが出た超能力ホラー「レッド・ライト」(Red Lights・2012・西/米)に出ていた。クレジット無しで「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」(Captain America: The Winter Soldier・2014・米)のマキシモフ姉弟をやっていて、近日公開の「GODZILLA ゴジラ」(Godzilla・2014・米/日)にも出ている。本作では全裸でかなり過激なシーンも演じている。ボカシが彼女を冒涜しているようで、かわいそうな気がした。

 原作は韓国版と同じく土屋ガロン(作)、嶺岸信明(画)による同名の漫画。ハリウッド版の脚本はマーク・プロトセヴィッチ。あの面白かったSFスリラー「ザ・セル」(The Cell・2000・米/独)を書いた人。ほかに残念なリメイク版の「ポセイドン」(Poseidon・2006・米)やウィル・スミスのリメイクSFアクション「アイ・アム・レジェンド」(I Am Legend・2007・米)も書いている。リメイクが得意なんだろうか。

 監督はスパイク・リー。古くは実在の黒人活動家を描いた「マルコムX」(Malcolm X・1992・米/日)などで有名な人だが、ちょっと前はクライム・サスペンスの「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)や、第二次世界大戦中のミステリーを描いた「セントアンナの奇跡」(Miracle at St. Anna・2008・米/伊)などを監督している。なかなか強烈な作風を持った人だ。

 武器はバールやハンマー、カッターナイフ。どれもイメージ的には銃より怖い。いちぶ日本刀もあったような。銃はベレッタM92、たぶんレミントンM870ショットガン、水平2連ショットガン、謎の男はシルバーのガバメント・カスタム。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は12〜13分前くらいに開場。この劇場はアニメが多いためか、最近若い女子が増えてきた。ロビーには若い女の子がいっぱい。ところがこちらはメインは中高年で、韓国版を見た人たちだろうか。男女比は思ったより女性も多く、6対4くらいで男性。最終的には137席に4.5割りくらいの入り。映画としては面白いと思うが、かなり残酷表現があるので、しようがないか。ラストもすっきりはしないしなあ……。

 気になった予告編は……上下マスクの「ダイバージェント」は未来社会では性格診断で人間を分類するという話で、その中でどこにも分類できない異端者(ダイバージェント)が現れて、というお話らしい。7/11公開。おもしろそうだが、おおいにB級の匂いがする。

 ジブリ・アニメ「思い出のマーニー」は、随所にジブリ・カットがあるが、とにかく悲しい物語のよう。プリシラ・アーンの曲がただひたすら良い。7/19公開。

 「WTF」は汚い言葉の省略形らしく、内容もそれに応じて酷い。こんなのを劇場公開するなんて。10月2週間のみの限定公開とか。

 「ある優しき殺人者の記録」は韓国映画かフランス映画かという感じのタイトルだが、日本人監督による日韓合作。18人を殺害した連続殺人犯の話らしい。かなりエログロ。9/6公開。

 上下マスクの「アイ・フランケンシュタイン」は王道のフランケンシュタイン映画ではなく、現代が舞台。ただし、いかにもB級のどこにでもある天使と悪魔の戦いという構図はどうなんだろう。主演がアーロン・エッカートというのは期待できそうだが。9/6公開。

 上下マスクの「猿の惑星 新世紀ライジング」は新予告に。とにかく猿がリアルだ。見たい。9/19公開。

 ポリス・アクション「ケープタウン」は舞台が南アフリカのケープタウンだけに、貧困の感じがものすごく、キャッチにあるように、まさに「神に見捨てられた街」のまま。オーランド・ブルームとフォリスト・ウィティカーという配役が意外というか、でなければ見たくないかも。8/30公開。

 スクリーンの上下がせばまってシネスコ・サイズになって本編へ。暗くなるのは直前だが、もう少し早く暗くして欲しいところ。


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