Edge of Tomorrow


2014年7月5日(土)「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

EDGE OF TOMORROW・2014・米/豪・1時間53分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ、一部Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビーATMOS、SDDSも)

(米R指定、日R15+指定)(3D上映、日本語吹替版、IMAX版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/edgeoftomorrow/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

未来の地球。人類はエイリアンの侵略を受け、フランス、ドイツなどヨーロッパ主要国が占領されてしまった。そして5年目にヴェルダンでカリスマ的女性戦士リタ(エミリー・ブラント)が現れ、人類に大きな勝利をもたらした。そこで起死回生をかけ、ロシア軍、中国軍と協力し、アメリカ軍とイギリス軍がフランスへ上陸し「殲滅作戦」を決行することになる。そんな時、実戦経験の全くない軍の広報官ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、ブリガム将軍(ブレンダン・グリーソン)に直接呼び出され、最前線で取材してPRするように命じられる。しかし、それを断ったケイジ少佐は逮捕され、脱走した新人二等兵として、ヒースロー基地の上陸部隊J分隊に配属される。訓練もそこそこに翌日0600時に出撃、大混戦の中、女性戦士リタと出会うものの、すぐに彼女も戦死する。ケイジは偶然にも1匹のギタイを殺すが、その体液を浴び戦死してしまう。ところが、気が付くとヒースロー基地の上陸部隊J分隊に配属されたところだった。


82点

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 面白い。ほとんどが戦闘シーンながら、ちゃんとドラマがある。ヘタにドラマ部分を語ったりしないので、押しつけがましくなく、好感が持てる。時間稼ぎするようなことはなく、ムダな部分もほとんどなく、どんどん物語は進んで行く。あまり考える余裕を与えてくれない。ジェットコースター・ムービー。正直、もうちょっと見ていたかった気も。もうひとヒネリくらいあって、2時間15分くらいでも良かったかも。それくらい良い感じ。113分間、すっかり別世界に行っていた。

 CGも自然でリアル。壮大なスケールの上陸作戦や、広大なヒースロー基地など、目を見張るばかり。同じ時間を繰り返すというストーリー展開もSFではありがちだが、たった1日の話で、ちょっとずつ進化し、それで物語が進んで行くところが面白い。4発の垂直離着陸機や、パワード・スーツのデザインも素晴らしい。

 ただ、あまりに展開が早過ぎ、しかも短時間にいろいろなことが起こるので、理解し切れないところも。ちょっと消化不良ぎみ。カメラも動かし過ぎ。そして、もうちょっとだけヒーローとヒロインの恋愛感情があっても良かった気はする。そしてギタイと字幕では出るエイリアンのデザインが、どうにも「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)のセンチネルみたいで、どうなんだろうなと。原作ではどう表現されているのか、気になった。

 ケイジ少佐はトム・クルーズ。最近はアクション・ミステリーの「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)、SFアクションの「オブリビオン」(Oblivion・2013・米)と年1作ずつ、面白い作品に出続けている感じ。多くのアクションを自らこなしのも有名で、銃の撃ち方は本当にうまい。本作でもパワード・スーツから銃を取り外して自分の手で構えると、もう決まってしまう。プロの所作。「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米ほか)の続編が撮影準備に入り、「アウトロー」の続編、「トップガン」(Top Gun・1986・米)の続編が進行しているらしい。

 女性戦士リタはエミリー・ブラント。たぶん最初のメジャーな作品が「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)で、存在感があった。最近だとSFロマンスの「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)がとても良かった気がする。そしてアート系の「砂漠でサーモン・フィッシング」(Salmon Fishing in the Yemen・2011・英)やSFミステリーの「LOOPER ルーパー」(Looper・2012・米/中)にも出ている。

 上官のファレウ軍曹はビル・パクストン。最近は悪役が多い印象で、アクション作品の「2ガンズ」(2 Guns・2013・米)はかなりヤバいヤツだった。

 軍の話ということで、登場した銃は……女性戦士リタが使うのはP226R。パワード・スーツに取り付けられていたのはFN SCAR-H。マガジンがまっすぐだったが、セリフでは5.56mm弾と言っていたので、設定としてはSCAR-Lだったようだ。空になるとスーツから「リロード」と指示がでるのが興味深かった。憲兵(MP)はM4カービン。銃声はなかなか迫力があった。ケイジ少佐が後半使うショットガンはベネリのM1かM3かと思ったら、imfdbではレミントンの870とあった。

 原作は桜坂洋のライト・ノベル「All You Need Is Kill」(集英社刊)。でもライト・ノベルって何? 小説じゃないの? これを脚本にしたのはクリストファー・マッカリー、ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワースの3人。

 クリストファー・マッカリーは、傑作「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)や、佳作アクション「誘拐犯」(The Way of the Gun・2000・米)では監督もし、トム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)、「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏/伊)、再びトム・クルーズのアクション「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)などを書いている名匠。「ジャックと天空の巨人」(Jack the Giant Slayer・2013・米)は残念だったが、手掛けた作品のほとんどは面白い。

 ジェズ・バターワースは、ニコール・キッドマンの実話のような怖いサスペンス「バースデイ・ガール」(Birthday Girl・2001・英/米)の脚本と監督、実話に基づくCIAの過酷な任務を描いたダグ・リーマン監督の「フェア・ゲーム」(Fair Game・2010・米/アラブ首長国連邦)を書いている。

 ジョン=ヘンリー・バターワースはジェズ・バターワースとの関係は不明だが、「フェア・ゲーム」でジェズ・バターワースとダグ・リーマン監督と仕事をしている。本作は2本目の仕事らしい。

 監督はダグ・リーマン。監督よりはプロデューサーとしての仕事の方が多い人。撮影監督も3本ほどやっている。監督としては、シリーズ中最も面白かった第1作「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)、ブラッド・ピットがアンジェリーナ・ジョリーと結婚するきっかけとなったアクション・コメディ「Mr.&Mrs. スミス」(Mr. & Mrs. Smith・2005・米)、残念なSF「ジャンパー」(Jumper・2008・米/加)、「フェア・ゲーム」などを監督している。たぶんこの人はシリアスなアクションが向いているのではないだろうか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケで確保。当日は20分前くらいに早めの開場。若い人から中高年まで、割りと幅広い客層。いつもより若い人が多い感じ。下は小学生くらいから。男女比は7対3ほどでやはり男性が多い。いくらトム・クルーズとは言え、ほぼ戦争映画だからなあ。最終的には607席に6割りくらいの入り。1週間前の週末に先行公開があったからこんなものだろう。面白いので、もっと入っても良いくらい。

 気になった予告編は……クリント・イーストウッド監督の新作は、上下マスクの「ジャージ・ボーイズ」。ミュージカルを映画化したらしい。懐かしい名曲の数々。いい感じ。9/27公開。

 スクリーンが左右に広がってから、クリストファー・ノーラン監督の新作「インターステラー」。住めなくなった地球の替わりになる惑星を探しに行く宇宙開拓の話らしい。マシュー・マコノヒー主演。どうも片道切符のようで、子供たちには「必ず戻ってくる」と約束するらしい。なんだか、すごそう。11/22公開。

 左右マスクで黒画面からサラウンドで風の音が響いてくるのは「イントゥ・ザ・ストーム」。いわゆるパニック映画、ディザスターもののようだが、確かに凄いビジュアル。はたして……。8/22公開。


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