Enemy


2014年7月20日(日)「複製された男」

ENEMY・2013・加/西・1時間30分

日本語字幕:丸ゴシック一部シャドー付き下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(レンズ、Hawkscope)/ドルビー・デジタル

(カナダ14A指定、米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://fukusei-movie.com
(全国の劇場リストもあり)

大学で歴史を教えるアダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)は、ある日、同僚から勧められたDVDを借りてきて見ると、端役で自分そっくりの男が出ている事に気付く。エンド・クレジットを頼りに調べるとアンソニー(ジェイク・ギレンホール)という俳優であることがわかり、事務所も判明する。そこで、事務所に行くとアンソニーと間違えられたことを良いことに、彼宛の郵便物を受け取り、彼の自宅の住所を知る。そして自宅の電話を調べると、会わないかと電話する。ホテルで会った2人は、顔、声はもちろん、胸に傷跡があるところまでそっくりだった。


62点

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 うーむ、酷い。まったく合わなかった。商業作品としての体裁をなしていない気がする。これでお金を取っていいのか。説明不足というか、自己満足、芸術気取り。眠い。分かりにくく作られていて、考えさせようという意図があるのかもしれないが、あまりに酷くて考える気にもなれない。頭の良い人は、裏読みして楽しめるのかもしれないが……。IMDbでは6.8点の高評価。

 学生の実験映画ということで、無料ならアリだろう。観客としてアバイスもできるかもしれない。しかし商業作品でお金を取って、このクォリティ、完成度でいいのか。プロデューサーは何を考えているのだろう。ビデオ・ストレートで良かったのでは。ブルーレイにするまでもないと思う。しかもなぜこんな作品でシネスコ?

 ヒッチコック・スタイルを真似、雰囲気だけ大げさな音楽でカバーしただけ。中身は何もない。空疎。思わせぶり。ヒッチコック的金髪美人女優(しかも脱いでいるし)とジェイク・ギレンホールが出ていなければまったく何もないところ。ボク的にはどうにか「金返せ!」と叫ばないですむレベル。ヒッチコック風のうまい邦題をつけたなあ。映画内では「複製された男」とは一言も言っていない。「間違えられた男」(The Wrong Man・1956・米)、「知りすぎていた男」(The Man Who Knew Too Much・1956・米)みたいだもんなあ。

 モチーフになっているのは蜘蛛。車の窓ガラスの割れ方も蜘蛛の巣状。蜘蛛は時として生殖の際に雄が雌に食べられてしまうこともあるそうだが、まあどうでもいいか。スワッピングみないなことになっているし。

 それにしても、なぜ全体に黄色がかった色調? 一瞬セピアを思わせないではないが、意味不明。なぜこんな色調にしたのか。

 ただ、きわめて映画らしい部分はあって、何か問題が起きたらパートナーや家族、友人などにちゃんと話せばいいものを、誰にも話さず、勝手に行動を起こす。だから問題が起きる。ほとんど映画はこの手のコミュニケーション不足からなっているが、まさにそのとおりの展開。

 雰囲気としては「裸のランチ」(Naked Lunch・1991・加/英/日)に似ている印象。不条理とかそういうのとは違う気がする。単なる説明不足。説明するとゲテモノ映画になるので避けたのか。

 アダムとアンソニーの2役はジェイク・ギレンホール。といってもそっくり男なので違いはない。「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・米/加)でアカデミー賞にノミネートされるなど活躍しているが、派手さはない。いわゆる大作は合わない感じ。つい最近、同じ監督の「プリズナーズ」(Prisoners・2013・米)に刑事役で出ていた。ちょっと暗い、エキセントリックな役が多いような。

 アダムの金髪の恋人メアリーInglourious Basterdsはメラニー・ロラン。タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)でヒロインを演じていた人。最近だと「グランド・イリュージョン」(Now You See Me・2013・仏/米)でインターポールの女性捜査官を演じていた。まさかこんな大胆ベッド・シーンを演じるとは。

 アンソニーの妊娠6カ月の金髪の妻、ヘレンはサラ・ガドン。「危険なメソッド」(A Dangerous Method・2011・米/独ほか)や「ドリームハウス」(Dream House・2011・米/加)などのミステリーに出ていたようだが、小劇場での公開で見ていない。特殊メイクだろうがリアルな妊婦姿での全裸。新作もたくさん控えているようで、今後の活躍が楽しみ。

 アダムの母親はイザベラ・ロッセリーニ。「ブルーベルベット」(Blue Velvet・1986・米)は強烈だった。全裸になってたなあ。さすがに歳を取ったらちょっとぽっちゃりしてきた感じ。おもにTVで活躍しているようで、映画も出ているがアート系のものが多いよう。

 原作は2010年に亡くなったノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説だそう。読んでいないが、そもそも映画に向いていたんだろうか。脚本はハビエル・グヨン。日本で劇場公開された作品は少ない。スペインのアクション「インベイダー・ミッション」(Invasor・2012・西/仏)が公開されているようだが、あまりあてにはならないもののIMDbでは5.5点の低評価。本作での抜擢はスペイン的なホラーに期待したのだろうか。

 監督はカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ。暗くて異常な話だったが、面白かった「プリズナーズ」を監督した人。どうなんだろう。本作を見ると今後に期待できなくなってしまう気がするが……。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケで確保しておいて25分前くらいに付いたらちょうど開場したくらい。観客層はほぼ中高年で、男性15〜16人に女性1人という感じ。まあケータイをいじってるヤツが多い。スマホは画面が大きく明るいから迷惑だって。最終的には224席に8割りほどの入り。これは予告編の勝利か、タイトルの妙か。

 気になった予告編は……アーノルド・シュワルツェネッガーの「サボタージュ」はDEA(麻薬取締局)の特殊部隊の活躍を描くらしいアクション。予告は凄そう。秋公開。

 アニメの大ヒット作を実写版上下マスク「美女と野獣」はフランス映画。はたしてどんな作品になるのか。シリアスで暗めのラブ・ストーリーという感じ。ヴァンサン・カッセルが野獣か。11/1公開。

 上下マスクの「LUCYルーシー」は新予告に。リュック・ベッソンでもスカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン、チェ・ミンスが出ているので見たい。8/29公開。

 上下マスクの韓国映画「マルティニークからの祈り」は「ミッドナイト・エクスプレス」(Midnight Express・1978・英/米)や「ブロークダウン・パレス」(Brokedown Palace・1999・米)系の、実話に基づく悲惨な話らしい。映画としては凄そうだが、苦手だなあ……。8/29公開。

 上下マスクの「バルフィ!人生に唄えば」はインド映画。画質も素晴らしく、フランス映画のような雰囲気。耳が聞こえず、口もきけない少女と、青年の物語らしいが、そこに美女が現れてという三角関係っぽい話らしい。8/22公開。

 ガス・ヴァン・サント監督とマット・デイモンが再び組む「プロミスト・ランド」はシェールガス開発を巡る企業と人々とのドラマらしい。面白そうだが、やっぱりアート系ということで劇場が……。8/22公開。

 スクリーンが左右に広がって、やっと暗くなって本編へ。


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