Rurouni Kenshin: Kyouto Taika-Hen


2014年8月3日(日)「るろうに剣心 京都大火編」

2014・ワーナー・ブラザース/アミューズ/集英社/KDDI/GyaO!・2時間19分

シネスコ・サイズ(IMDbではデジタル、Red Epic)/音響クレジット無し(たぶんドルビー・デジタル)


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/
(全国の劇場リストもあり)

1878年(明治11年)、兵庫・摂津で斉藤一(さいとうはじめ、江口洋介)を指揮官とする警察隊が、かつて「人斬り抜刀斎」の後継の暗殺者として暗躍し、最終的に証拠隠滅のため明治新政府に裏切られ殺されそうになった志々雄真実(ししおまこと、藤原竜也)を首領とする悪党集団討伐のため、隠れ家を強襲する。しかし志々雄一味はそれを知って待ちかまえており、斉藤以外全滅してしまう。事態を重く見た内務卿の大久保利通(宮沢和史)は、神谷薫(武井咲)の神谷活心流道場に身を寄せていた「人斬り抜刀斎」こと緋村剣心(佐藤建)を呼ぶと、新政府の転覆を図る危険人物として志々雄の抹殺を依頼する。剣心は断るつもりだったが、5月14日、志々雄の側近のひとり、瀬田宗次郎(神木隆之介)により大久保が暗殺されてしまう。さらに斉藤と会い、摂津で殺された警察官たちの死体が警察に送りつけられたことを知り、京都へ行く決心をする。


87点

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 なんたる映画! 素晴らしい。すっかり乗せられ、時代劇の「剣心」の世界にどっぷりとはまりこんだ。この痛快さ、気持ち良さは、群を抜いている。ほとんどアクションが主体でありながら、感情が実に良く伝わってくる。ヘタに感情の部分をセリフで語っていないだけに、素直に入ってくる。やっぱりこの監督は天才なのではないだろうか。

 同じ内容で、脚本で、ほかの監督が撮ったとして、ここまでの映画になるだろうか。たぶんならない。やや黄色がかった色調、照明、アングル、サイズ、ショット時間、タイミング、フォーカス、被写界深度、スピード感、音楽、効果音、特殊効果……。すべてがこの作品にピッタリという感じ。個々のキャラクターは造形が深く、立体的で存在感があり、それぞれにカッコいい。見せ場もある。しかも、現れて欲しいタイミングで、最もカッコよく現れる。この気持ち良さ。

 絵は実に映画的で美しい。デジタルのおかげか、解像度も高く、実に鮮明。暗いシーンもつぶれていないし、細部まで良く見える。特に川のシーンで、背景のぼけた淡い緑がちゃんと見えているのはすばらしい。また軍艦の出港シーンはたぶんCGなのではないかと思うが、ハリウッドなみの迫力とリアルさ。アクション・シーンで飛び散る血のりもCGだと思うが、とてもリアルな印象で、「300〈スリーハンドレッド〉〜帝国の逆襲〜」(300: Rise of an Empire・2014・米)なんて目じゃない。

 アクションも素晴らしい。古い殺陣とはひと味違う。順番に敵が掛かってくるのではなく、同時にかかってくることもある。足を狙い払う、組み合えば格闘技のように肘打ちを繰り出し、ポーズなど決めずにどんどん切り込んで行く。リアルな戦いだ。それだけではなく、ワイヤー・ワークを使った超人的な技も見せてくれる。やはり映画はファンタジーの部分もあるわけだから、すべてがリアルというよりはちょっとした飛躍がエンタテインメントには必要だろう。このバランス感覚がまた素晴らしい。それでいて調子に乗り過ぎたりしてやり過ぎていない。

 原作が素晴らしいということもあるのだろう。あちこちにドラマがあり、それぞれに感動的。たくさんの魅力的な登場人物が出てくるのに、話は散漫にならず、実に良く1つの物語にまとまっている。これは希有なことだろう。2時間19分がちっとも長くない。むしろもっと見ていたい感じ。十人衆とか出てきて、ラストには福山「龍馬」雅治演じる謎の男まで現れて、終わりかい!! 早く続きが見たい!

 終わって出てくるとき、江口洋介カッコよかったなあとか、佐藤建すごいよねえとか、武井咲かわいいねとか、そんな声があちこちから聞こえてきた。役者冥利に尽きる言葉だろうし、ズバリ監督の演出がハマったということだ。

 佐藤建、武井咲、青木崇高、江口洋介、蒼井優ら主要キャストは前作からの続投。孤児の少年剣士、明神弥彦も出ているのだが田中偉登から同い年の大八木凱斗に交代。あまり似ていないのでかなり違和感があった。何があったんだろう。

 新しいキャラクターは…… 強烈な敵キャラ、志々雄は藤原竜也。よく映画に出ていて、つい最近「MONSTERZモンスターズ」(2014・日)に出ていた。さすがにうまい。ただ声を聞かないと誰かわからなかった。逆に声だけでわかるのも凄いが。

 その部下の1人、瀬田宗次郎は神木隆之介。身なりもしっかりし、しゃべりかたもていねいで物静か。だからこそ、一番怖い。剣心との戦いで逆刃刀が折れるシーンは秀逸。この人も良く映画に出ていて、ボクが最近見たのは「劇場版SPEC」(2010・日)の一十一。イメージ的にはちょっとにているかもしれない。難しい年ごろだと思うが、まっすぐに成長して欲しい。

 志々雄の愛人らしい謎の女、駒形由美は高橋メアリージュン。残酷な場面も笑って見ているところが不気味で、ミステリアスな感じが良く出ていた。モデルからCMに出るようになり、TVそして映画へ。最近「キカイダーREBOOT」(2014・日)に出ていたらしい。

 良いとこのお嬢さんなのに金のために盗みをやるという良くわからないくのいちキャラ巻町操(まきまち みさお)は土屋太鳳。NHKの「龍馬伝」(2010)に坂本乙女の少女時代を演じていた人。

 その操のかつての恋人、四乃森蒼紫(しのもり あおし)は伊勢谷友介。長い剣を持っていて、めちゃくちゃ強くて、人の言うことを聞かないという危険人物。イメージ的にピッタリ。「利休にたずねよ」(2013・日)は見ていないが「清須会議」(2013・日)に出ていて、いい感じだった。

 かつてお庭番の忍びだった柏崎念至は田中泯。ダンサー出身で、「龍馬伝」はもちろんのこと出ていて、スクリーン・デビュー作は「たそがれ清兵衛」(2002・日)、つい最近「永遠の0」(2013・日)にヤクザの親分役で出ていた。優しそうでいて、怖い感じが絶妙。そんな役が多い。

 原作は和月伸宏の大ヒット・コミック「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」。意外と古く、1994〜1999年にかけて週刊少年ジャンプら連載され、1996〜1998年までフジテレビでアニメ化されたらしい。

 脚本は前作から引き続き藤井清美と監督の大友啓史。藤井清美は劇団の劇作家・演出家から、日本テレビシナリオ登龍門賞優秀賞を受賞して映像方面へも進出、「L change the WorLd」(2008・日)などを手掛ける。「るろうに……」の前は「八月のラヴソング」(2011・日)を書いている。

 監督・脚本はハリウッドで脚本や演出を学んだという大友啓史。NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」(1から3、2001〜2004・日)や、NHKでドラマ化され、その後映画化もされた「ハゲタカ」(2009・日)、超ヒット作「龍馬伝」を手掛け、2011年にNHKを退社したらしい。SFミステリーの「プラチナデータ」(2012・日)は面白かったものの、わりと普通の感じがしたが、本作はいい。時代だったり、チャンバラ・アクションが向いているのかも。

 アクション監督は谷垣健治。ドニー・イェンのもとで修業した人で、釈由美子が抜群に輝いていた「修羅雪姫」(2001・日)のスタント・コーディネーターを担当。香港作品もドニー・イェンが関わっている「SPL/狼よ静かに死ね」(Saat po long・2005・香/マカオ)、「孫文の義士団」(Shi yue wei cheng・2009・中/香)、「レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳」(Jing wu feng yun: Chen Zhen・2010・香/中)などを手掛けている。日本映画では残念だった「カムイ外伝」(2009・日)も担当している。もっとメジャーな作品で活躍していい人なのに…… 今後に期待したい。

 銃は、志々雄一味がコルトのネービー系パーカッション・リボルバー、ガトリング・ガン、そして正体はわからなかったが、警察隊がスマートな印象のパーカッション・ライフルを使っていた。スプリングフィールドあたりだろうか。構えはロー・レディでしっかりしていてカッコ良かったが、当時からこういう風に教えていたのだろうか。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケで確保。12〜13分前に開場となって場内へ。観客層は小学生くらいから中高年まで幅広かった。男女比は4.5対5.5くらいで女性の方が多かった。最終的に607席に8割りくらいの入りはさすが。

 気になった予告編は……明るいまま始まった「猿の惑星:新世紀ライジング」は新予告。ハリウッド映画の定石、群衆を悪い方に扇動するとんでもないヤツ。ゲーリー・オールドマンだけど。どうなんだろう。9/19公開。

 半暗になってから、下品なJTのマナー広告と、おいしそうに見えない絵の汚いQPのCMがあり……スクリーンが左右に広がって、クリント・イーストウッドの「ジャージー・ボーイズ」も新予告に。画質が良いし絵がきれい。曲も良い。もはや横綱相撲のような感じ。9/27公開。

 左右マスクの「イントゥ・ザ・ストーム」デニス版のおふざけバージョンは酷いが、こちらはちゃんとした新予告。ちょっとやりすぎの感じはするが、果たしてどうか。8/22公開。

 左右マスクのアニメ「宇宙兄弟♯0」は実写版と同じ様な内容に思えたが、こちらのほうが感動的な気がしたのはなぜだろう。8/9公開。

 くらくなったら隣のヤツが、靴どころか靴下まで脱ぎ出した。オイオイ……。まだ結構若そうなのに、オヤジか。ケータイもいじってたし……。マナーの悪いヤツが多いなあ。


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