Homefront


2014年8月9日(土)「バトルフロント」

HOMEFRONT・2014・米・1時間40分

日本語字幕:フチ付き丸ゴシック体下、種市譲二/シネスコ・サイズ(デジタル、with Panavision、Arri、Canon)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://battlefront.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

麻薬捜査のためDEAと協力して大物麻薬ディーラー、ダニーT(チャック・ジットー)の組織へ潜入してぶっ潰したインタポール捜査官のフィル・ブローカー(ジェイソン・ステイサム)は、ダニーTが逮捕されたあと辞職する。2年後、妻を病気で亡くしたブローカーは、10歳の娘マディ(イザベラ・ヴィドヴィッチ)を連れて、ルイジアナ州の小さな田舎町レイヴィルに越してくる。そしてマディが学校でいじめっ子のテディ(オースティン・クレイグ)にやり返したことから、異常にヒステリックな母親キャシー(ケイト・ボスワース)が激怒し、麻薬を密造しているギャングのボスの弟、ゲイター(ジェームズ・フランコ)に脅してやってくれと依頼する。ゲイターは手下を3人差し向けるが、簡単にブローカーに返り討ちにされてしまう。興味を持ったゲイターはブローカーの家に侵入し身元を調べると……。


73点

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 ありふれたB級映画の内容でも、腕のある人が作り、見せるべき人が見せると、ちゃんと立派な映画に仕上がるという見本のような作品。感情が動かされ、ついつい主人公を応援してしまう。うまい。ただ100分と短いので、普通ならある女先生とのロマンスの部分はばっさりとカット。アクションに集中させたようだ。それがどうだったのか。あったらあったで、よりありふれていたとは思うが、ちょっと甘い部分が物足りない気も。

 ただ、暴力満載。銃を撃つとか、ナイフで切りつけるより、とにかく殴る。格闘技的部分もあるが、ほとんどは暴力の殴り合い、ケンカ。バットでも、その辺に置いてある缶でも、なんでも殴る。殴りまくり。これが強烈。銃声も大きく、凶悪で、怖い。しかも銃ごとに音が変えられていて、大砲のようにショットガンだったり、リアル。これらが日本で PG12指定となった理由かも。

 悪党が悪党でも徹底的に憎たらしく、主人公は強いのにひけらかさず、ちゃんと警告し、もう一度やったら許さないと、自分なりのルールを守っているところに共感できる。娘もそう教えられているという設定。特に新しいことは何もない。流れ者のように田舎町へやって来て、悪党を倒す。電球に灯油を入れて爆弾にするのも良く見る手。

 主人公のフィル・ブローカー役のジェイソン・ステイサムはいつものキャラクター。鮮やかでキレの良い格闘技を披露してくれる。本当にこんなパパがいたら家族は安心だろう。本作の前に「ハミングバード」(Hummingbird・2013・英/米)に出ているが、前売り無しの限定公開で見られなかった。自作はもちろん、すでに予告が始まった「エクスペンダブルズ3」。このシリーズでスタローンとすっかり意気投合したらしい。

 敵役の田舎の小悪党ゲイターはジェームズ・フランコ。やはり悪役の方が向いているらしい。かなり怖かった。「オズ はじまりの戦い」(Oz the Great and Powerful・2013・米)では改心する小悪党だった。ボク的には第一次世界大戦の空戦を描いた「フライボーイズ」(Flyboys・2006・英/米)が良かったなあ。もの凄い数の新作に出ていて、あちこちで引っ張りだこ。映画のキャラとは違って、良い人でスタッフ受けも良いのかも。

 うまいのは、ジェイソン・ステイサムやジェームズ・フランコはもちろん、ジャンキーで母親のケイト・ボスワース。サブ・キャラだが強く印象に残る。こんなガミガミのいかれ女、アメリカならもちろん、日本にもいそうだ。最初はモンスター・ペアレントかと思ったが、ギャングの妹でジャンキーだった。さもありなん。でも注目されたのは「スーパーマンリターンズ」(Superman Returns・2006・米)のヒロイン役。作品が残念だったが、このギャップ。そのあと「ラスベガスをぶっつぶせ」(21・2008・米)などに出ている。

 ギャング相手の娼婦シェリルはウィノナ・ライダー。すっかり大人の女の雰囲気。娼婦役だが、やっぱりきれい。問題さえ起こさなければもっと活躍できただろうに。見ていないが、本作の前にジェームズ・フランコと共演した「THE ICEMAN 氷の処刑人」(The Iceman・2012・米)に出て高い評価を得ている。

 意外と怖い悪党サイラスをさらーっと演じて見せたのはフランク・グリロ。刑事っぽいイメージが強いが、実にイヤらしい悪党をいかにもそれらしく演じていた。「エンド・オブ・ウォッチ」(End of Watch・2012・米)では警察の上司だったし、つい最近の「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(Captain America: The Winter Soldier・2014・米)では悪い方の特殊部隊だった。

 田舎町レイヴィルの友人、ティードはオマー・ベンソン・ミラー。「セントアンナの奇跡」(Miracle at St. Anna・2008・米/伊)に良い味で出ていた人で、最近はTVドラマ「CSI:マイアミ」(CSI: Miami・2002〜2012・米)の8シーズンからにレギュラーで出ていた。いい雰囲気の人なので、もっと活躍して欲しい。

 銃は……冒頭のDEAの突入シーンで、DEAの特殊部隊はM4やグロックを使用。ギャングたちはAKで応戦する。この時ブローカーはシルバーの4インチ・リボルバーを使っていた。モデルは不明。クライマックスの戦いで、ブローカーはベッドの下に隠していた高級ケース、ペリカンのガン・ケースからベネリのM4ショットガン、USPっぽい銃を取り出して使う。後半はM92のようだったが……。ギャングはハンドガードをつけたウィンチェスターM12ショットガンやMP5K、グロックなど。リーダーのサイラスはシュタイアTMPとS&Wのシルバーのオートマチックで、たぶんサイト・ガード付きのM5906ステンレス。警察が狙撃に使うのはレミントンのM700。

 原作はチャック・ローガンの小説。それをシルベスター・スタローンが脚本に。スタローンが脚本を書いたのは「エクスペンダブルズ2」(The Expendables 2・2012・米/ブルガリア)以来らしい。ついこの前、自虐的なコメディ「リベンジマッチ」(Grudge Match・2013・米)に出ていた。本作ではプロデューサーも兼務。

 監督はゲイリー・フレダー。アンディ・ガルシアのシリアスな「デンバーに死す時」(Things to Do in Denver When You're Dead・1995・米)で劇場長編映画の監督デビュー。ほかにモーガン・フリーマンのサイコ・サスペンス「コレクター」(Kiss the Girls・1997・米)、惜しくも若くして急逝したブリタニー・マーフィのクライム・サスペンス「サウンド・オブ・サイレンス」(Don't Say a Word・2001・米/豪ほか)、傑作法廷サスペンス「ニューオーリンズ・トライアル」(Runaway Jury・2003・米)を手掛けている。その後TVが多くなり、本作で久々の劇場映画ということらしい。やっぱりうまい人なので、もっと活躍して欲しい。いまのところ新作はTVのみで、そっちのほうが面白かったか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、しかもムビチケが使えないので前売り券を持って電車賃をかけ劇場窓口で予約。ここはKINEZOなので携帯も使えるが、当日料金でしかオンライン予約できない。当日は10分前くらいに開場になり場内へ。個々の劇場は混んでいなくても、共通のロビーが狭く、10分前にならないと入れないので、いつも混んでいる印象。

 観客層はほとんど中高年の男性。女性は1/5ほど。数少ない若いヤツがずっとケータイをいじっていて、まぶしいって。本編が始まってもいじっていて、大迷惑。終わったらすぐ点けてたし。そんなに忙しいなら映画を見に来るな。最終的には251席に4割りくらいの入り。関係者が6〜7人ほどずらりと来ていた。必要ないだろう。

 気になった予告編は……場内が明るいまま始まった「イン・ザ・ヒーロー」はスーツ・アクターのバック・スクリーン・ストーリーということらしい。主演が唐沢寿明で、実際にかつてはスーツ・アクターだったらしいが、それよりCMのキャラとダブル気がする。あまり広告していない気もするが、面白そう。ただ公式サイトを見てもいつからか良くわからない。調べたら9/6だった。気になるのは予告だと「蒲田行進曲」(1982・日)の階段落ちっぽい雰囲気が……。

 暗くなってからの「KANO」は1931年、日本の甲子園野球大会で準優勝した台湾代表の実話の物語らしい。日本人キャストも多数出演。すでに台湾で大ヒットし、来年日本公開されるという。面白そう。1/24公開。フェイスブックはあるものの、公式サイトはまだない模様。

 イーサン・ホークのカー・アクション「ゲッタウェイ スーパースネーク」はすべてが本物と言っていたが、どういう意味なんだろう。普通の商業映画に見えたが。9/20公開。

 ホラーの「ある優しき殺人者の記録」は、日本人監督・脚本・撮影ながらキャストや撮影は韓国のよう。日韓合作ということらしい。予告はかなり怖く、グロい。9/6公開。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。ケータイは消せ!


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