Kuime


2014年8月24日(日)「喰女-クイメ-」

2014・幸助/セディックインターナショナル/電通/東映/木下グループ/CELLULOID DREAM/オー・エル・エム/上海鵬錦影視文化・1時間34分

シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル(表記無し)

(日PG12指定)(一部、日本語字幕付き上映もあり)
公式サイト
http://www.kuime.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

舞台「真四谷怪談」の稽古が始まる。お岩役の後藤美雪(柴崎コウ)は、伊右衛門役の恋人、長谷川浩介(市川海老蔵)はベッドを共にしていたが、別々に稽古場に向かう。芝居では伊右衛門が結婚を許してくれないお岩の父を斬り殺し、さらに孫と夫婦になってくれれば仕官の道を世話するという伊藤喜兵衛(古谷一行)の誘いに乗って、若い孫娘、梅(中西美帆)と関係を持つと、お岩と別れようとする。ちょうどその場面を稽古しているとき、梅役の朝比奈莉緒(中西美帆)が秋波を送ってきて、浩介はそれにのり、美雪に嘘を付くと莉緒の部屋へ行き関係を持ってしまう。


72点

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 うーむ、ちょっと中途半端か。つまりホラーなのかどろどろ愛憎劇なのか。舞台の四谷怪談(の稽古)がメインなのか、オフの現実のドラマがメインなのか、どこまでが客観的な出来事で、どこからが主観的な頭の中での出来事なのか。両方を狙うというのは欲張りだし、焦点がぼやけてしまう。やはり明確に視点を持った方が良かったのではないだろうか。どんでん返しの部分は別として。

 結果、あまり怖くない。怖いのは、なにより伊藤家の乳母、槙(まき)を演じた根岸季衣。眉を剃り、お歯黒にして意地悪そうに笑うと本当に怖い。メイクで痣のできたお岩さんよりよっぽど怖い。そして伊藤家の一人娘、梅のメイクが猫っぽくって、白塗りに黒いおちょぼ口の口紅って!

 絵作りは舞台を基本としていて、あえて障子を貼らないスケルトンの障子、回り舞台、絵画的な舞台美術は素晴らしい。美しいし、暗黙の約束事で成り立っている架空空間が、まさに舞台のそれ。まるで舞台を見ているような気になる。それにプラスして、俯瞰やアップがあったりするから、さらに物語は分かりやすい。本作を見るとおおもとの「四谷怪談」がどういう話だったか、はっきりとわかる。実に分かりやすい。名優達は芝居がうまい。逆に歌舞伎界の市川海老蔵は同じ舞台でもちょっと違うので、セリフ回しに最初は違和感があった。次第に気にならなくなったが……。

 たぶん効果音やフェードアウト(暗転)などの舞台でもある技法に、映画的な技法を加えて行くことで、現実と頭の中の出来事との境があいまいになって、徐々に常軌を逸して行くという演出なのだろうが、これもわかりにくかった。だいたい「喰女」とはどういう意味なのか。赤ちゃんをかじっているカットはあったが……。まさかあの一瞬?

 公式サイトには「舞台『真四谷怪談』でお岩を演じるスター女優・後藤美雪の強い推挙により、恋人である俳優・長谷川浩介が伊右衛門役に大抜擢される」とあったが、それは本編では明確に描かれていない。そうであろうとは薄々わかるが、説明不足ではないのか。

 企画も担当した長谷川浩介役の市川海老蔵は、「利休にたずねよ」(2013・日)に続いての映画。その前に仲代達矢の「切腹」(1962・)のリメイク時代劇「一命」(2011・日)があって、さらに前に戦争物で人間魚雷を描いた「出口のない海」(2006・日)がある。

 後藤美雪の柴崎コウは、TVでは「ガリレオ」(2007〜・日)や「安堂ロイド?A.I. knows LOVE??」(2013・日)があって順調なようだが、映画は「県庁の星」(2006・日)や「どろろ」(2007・日)あたりまでは良かったが、「少林少女」(2008・日)あたりから不調な感じに。本作の前のハリウッド作品「47 RONIN」(47 Ronin・2013・米)はとても残念な結果に。本作ではかなり過激な役をがんばっていたが……。

 古谷一行、勝野洋、根岸季衣らベテランは、さすがのうまさ。それぞれに存在感があるし、ドラマに重厚感を与えくれる。セリフ一言一言がうまい。

 後藤美雪の付き人らしい倉田加代子はマイコ。いつも片足を引きずっていて、美雪の代役を勤めたりして思わせぶりで、きっとストーリーに重要なかかわりを持っているのだろうと思いきや……。かわいそうというか、残念な役。

 原作・脚本は山岸きくみ。「一命」や香取慎吾の「座頭市 THE LAST」(2010・日)の時代劇を書いている。その前にはまったく傾向の違うファミリー向けのアクション「カンフーくん」(2007・日)の原案を担当している。

 監督は、もっとも多作な監督として知られる職人、三池崇史。ボク的にはSFアクションの「神様のパズル」(2008・日)、バイオレンス作品「殺し屋1」(2001・日)、ヒーロー・アクション「ゼブラーマン」(2003・日)の1作目の方、ホラーの「オーディション」(2000・日)などが良い。「一命」で山岸きくみ、市川海老蔵と仕事をしている。伊藤英明とは「悪の教典」(2012・日)で仕事をしている。ミュージカル「愛と誠」(2012・日)は散々だったよう。本作の前に「土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI」(2014・日)を撮っている。

 公開2日目の初回。新宿の劇場は全席指定で、金曜に劇場まで行って確保。ムビチケに対応して欲しいなあ。当日は10分前くらいに開場。ロビーが狭いので、各劇場が混んでいなくても、ロビーはいつも混雑。エレベーターなどのアクセスも良くない。設計に問題ありの気がする。

 観客層はほぼ中高年で、最初は若いカップルが1組ほど。最終的には405席に30人くらい。女性は5〜6人。初日に舞台挨拶があった反動か。それを狙ったんだけど、ちょっと少な過ぎて寂しい気も。

 気になった予告編は……「ふしぎな岬の物語」は低コントラストの浅い色で、解像度も低く、雰囲気はとても古くさい感じ。とても最新作とは思えないところに驚いた。昔は香港映画にそんな印象のものが多かったが、日本の映画の一部にまだそんなものが残っているとは。それこそが「不思議」だ。10/11公開。

 一転して高画質でコントラストも高く力強い絵の上下マスク「ケープタウン」は、オーランド・ブルームとフォレスト・ウィティカーの刑事アクション。8/30公開。すごそう。

 バイオレンス・ミュージカルらしい上下マスク「トウキョウ・トライブ」は、コミックス原作だそうだが、チンピラ感がハンパない。ワルばっかしという感じ。園子温監督ならではの感じだろうか。とても居心地が悪いような……。8/30公開。

 「猿の惑星 新世紀ライジング」は日本語ナレーションの新予告、もしくはちょっと長いバージョン。人類側にも猿側にも好戦的なヤツがいて、彼らが自体をさらに悪くして行くというパターン。どうなんだろう。9/19公開。ただし9/13、14、15に先行上映があるらしい。

 スクリーンが左右に広がって、一旦ピントがずれたあと戻ってきて、本編へ。オート・フォーカスなんだろうか。


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