Lucy


2014年8月30日(日)「LUCY ルーシー」

LUCY・2014・仏・1時間29分

日本語字幕:手書き風書体黒フチ付き下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri、Red、ソニー)/ドルビー・デジタル、ドルビーATMOS(IMNDbではDATASAT、Auro 11.1も)

(米R指定)
公式サイト
http://lucymovie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

台湾を旅行中のルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は、1週間前に知りあった男に、無理矢理ホテルのチャンという男にアタッシュ・ケースを届けてくれと頼み込まれる。手錠でアタッシュ・ケースとつながれ、仕方なくフロントに行くと、怪しい男たちが現れて部屋に連れて行かれる。そこには死体が転がっていて、血まみれの韓国人マフィアのチャン氏(チェ・ミンシク)がいる。そしてケースの中にあったCPH4という青い粉の袋4つを、3人の男とともルーシーの腹に縫い込ませると、母国へ持ち込めと命じる。頭に袋を被せられてルーシーが連れて行かれたのは、牢獄のような部屋。そこで男に乱暴されそうになり抵抗したルーシーは殴る蹴るの暴行を受け、腹の中の袋が破け粉が漏れてしまう。すると、たちまち反応が現れ、ルーシーの脳は20%アクセスできるようになる。明晰で高度な思考と超人的運動神経を得たルーシーは、武器を奪って男たちを殺し難なくそこを脱出すると、病院へ行き袋を取り出してもらう。さらに友人の家でPCを借り、脳科学の権威ノーマン教授(モーガン・フリーマン)を探し出すと、助けを求める。


72点

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 うーむ、前半は良かった。なかなか過激なアクション。まさかあの世界的な美女、スカーレット・ヨハンソンが、「アベンジャーズ」(The Avengers・2012・米)なんかをやっているとは言え、ここまでやるとは。しかも、アジア人に胸に手まで入れられて、ここまでやるか。この作品ではちょっともったいないかも。いやいや、それがないと、この映画の価値が……。ほぼ全編英語のフランス映画。

 後半、激しいアクションから一転、完全にSFの世界へ行ってしまい、人類未踏の世界へ到達するものだから、ますます現実離れした話になり、観念的になって、終いには「her世界でひとつの彼女」(Her・2013・米)とか「トランセンデンス」(Transcendence・2014・英/中/米)と同じ様な結末とは。つまりこれって「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995・日)の草薙素子でしょう。エブリウエア、とはね。

 それより何より、1番気になったのは「脳は10%しか機能していない(使っていない)」というコンセプト。これって、ずんぶん昔に言われていたことなのでは? 昔はよくわからなかったから、こんなことが言われていて、今ではほぼすべて使われているというのが常識と、たしか脳科学者の茂木先生が言ってなかったかなあ。だって、もしたった10%しか使っていなかったとすると、アルツハイマーなんかで脳細胞が少し小さくなっただけであんなに障害が出るはずがない。むしろ、脳細胞は使わないと死んでしまうらしい。だから「脳トレ」とかが注目されているわけだ。

 一説には「脳は10%しか機能していない(使っていない)」というのはアメリカの広告やTVのCMで使われたとも。科学的根拠は薄い。とすると、すべてのこの映画の前提は成り立たないことになってしまう。さすがリュック・ベッソン。ただ、カッコいい撮りかたはうまい。これじゃ、まるでマイケル・ベイみたいだが。IMDbでは6.6点の高評価。見どころは前半とスカーレット・ヨハンソン。それとチェ・ミンシクの悪党ぶり。確かにそれは見る価値あり。

 人類最古の化石とされるのがルーシーで(映画では人類最初の女といっている)、発見したのがジョハンソン(ヨハンソンとスペルは同じ)というのも、ちょっと運命的なものを感じてしまう。しかし、実はほかにもルーシーより100万年古いアルディが人類の祖先だとか、いろいろあるようだ。どうもリュック・ベッソンの脚本は情報が古いのではなだろうか。

 そのルーシーはスカーレット・ヨハンソン。本作の前に「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(Captain America: The Winter Soldier・2014・米)に出ていたが、「her世界でひとつの彼女」の方が声だけながらずっと良かった。また「ヒッチコック」(・2012・)で演じたジャネット・リーも素晴らしかった。近々公開されるSFスリラー「アンダー・ザ・スキン種の捕食」(Under the Skin・2013・英/米/スイス)にも出ているようだが、美女で実力派なのにジャンルを選ばないなあ。選び放題だろうに。

 脳科学者のノーマン教授はモーガン・フリーマン。演技に説得力があるだけに、「脳は10%しか機能していない」説を力説する姿が悲しかった。たぶん学会では理解されないという異端な雰囲気は、逆の意味であっているのだろう。そういえば「トランセンデンス」にも出ていた。でも最近で言うと、あまり話題にならなかったが「ラストベガス」(Last Vegas・2013・米)が良かったかな。この人は出ているだけで作品に厚みが増す。

 韓国マフィアのボス、チャン氏はチェ・ミンシク。素晴らしい恐ろしさ。もっと怖くできたはずだが、途中からSFファンタジーになってしまうので存在感も薄れてしまう。残念。「オールドボーイ」(Oldboy・2003・韓)も凄かったし、「親切なクムジャさん」(Chinjeolhan geumjassi・2005・韓)も怖かったが、なにより「悪魔を見た」(Akmareul boatda・2010・韓)が強烈だった。世界でもっと活躍して欲しい。

 フランスの刑事ピエールはアムール・ワケド。エジプト生れの俳優さんで、「砂漠でサーモン・フィッシング」(Salmon Fishing in the Yemen・2011・英)でイエメンの王族を演じていた人。

 脚本・監督はリュック・ベッソン。脚本およびプロデューサーとして、似たようなお手軽作品を作りまくっている。たまに面白い作品も出る。つい最近ケヴィン・コスナーの「ラストミッション」(3 Days to Kill・2014・米/仏ほか)を手掛けている。またポール・ウォーカーの遺作となるらしい「フルスロットル」(Brick Mansions・2014・仏/加)が近日公開。この先、「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)の続編や「96時間」(Taken・2008・仏/米/英)の続編が次々と作られるらしい。うーむ……。薄いとわかっていて、見ちゃうんだよなあ。

 それにしても、ルーシーも、脳の10%も、ボクが知ってるくらいだからちょっと調べればすぐわかることで、それをしないで脚本をお手軽に作ってしまうところが、多産・多作のリュック・ベッソン。作る数を絞り込んで、時間を掛けて作ればいいのに。今の映画はそういうビジネスではなくなったということか。あるいは、ビッグになり過ぎて、もう誰も指摘できないとか。

 登場した銃は、韓国マフィアがグロックやベレッタPx4ストームを使用。とらえられたルーシーが奪うのが1911カスタムとPx4。ピエール刑事はベレッタ90Two。チャン氏はマイクロ・ウージーを2挺拳銃スタイルでぶっ放す。そしてラストに撃ったのはPx4。アーマラーは撮影国ごとに違うようだが、IMDbによるとマーク・リローヤーという人。多くのリュック・ベッソン作品に関わっているようで、「マラヴィータ」(The Family・2013・米/仏)、「ラストミッション」、「96時間」、「トランスポーター」なども手掛けているらしい。

 ルーシーと猿人のような2人が指先を合わせるって、「E.T.」(E.T. the Extra-Terrestrial・1982・米)か。ちょっと「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey・1968・米/英)も入っていたかなあ。後半のSFファンタジー・パートはほとんど「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)シリーズぽかったし。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、ムビチケで確保。15分前くらいに着いたらもう開場していた。ただ、全スクリーンの中で唯一、スクリーンが低いため前席の頭がジャマで字幕が読めないという「2番スクリーン」での上映だった(そうかもと思ってはいたが、かすかな望みを掛けていたのにも最悪が確定)。このスクリーンの場合は混んでいる前の方を取って、センターを外すしかない。でも前だとスクリーンが近過ぎるんだよなあ……。

 観客層はやはり中高年で、若い人も少し。女性は1/3ほどと意外に多い。スカーレット・ヨハンソンだからだろうか。最初3割りほどだったのに、場内が半暗になってからも続々と人が入って来て、最終的には369席に7割りほどの入りに。ほかのB級アクションと変わらないのに、さすがリュック・ベッソン。

 気になった予告編は……「ゴールデン・アジア」と名付けてアジア映画の特集をするらしく、チャウ・シンチーの「西遊記」とインド映画も2本紹介されていた。これは東宝東和と日活がコラボする新レーベルらしい。

 なぜ今さらリメイク?と思ったのはミュージカルの「アニー」。ウィル・スミスとジェイミー・フォックス?

 驚いたのは「マッドマックス」の続編が作られるそうで、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」って。なぜ今さらリメイク? トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン? メル・ギブソンは出るんだろうか?

 もう1つの驚きはメリル・ストリープが魔女? エミリー・ブラントにジョニー・デップがオオカミ? 映画は上下マスクの「イン・トゥ・ザ・ウッズ」。

 1900年代のカナダにあった日本の野球チームを描く上下マスクの「バンクーバーの朝日」。むこうの作品かと思ったら日本映画。そりゃそうか。12/20公開。

 上下マスクの「寄生獣」は人気コミックの映画化。まだティーザーで内容はよくわからない。11/29公開。

 「劇場版零ゼロ」は大ヒット・ゲームの映画化らしい。オヤジ的には知らない女の子ばかり。9/26公開。


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