Lupin the Third


2014年8月31日(日)「ルパン三世」

2014・TBS/KADOKAWA/トライストーン・エンタテイメント/エイベックス・ピクチャーズ/トムス・エンタテインメント/ジェイアール東日本企画/東宝/KDDI/MBS/CBCテレビ/GyaO!/RKB/HBC/トーハン・2時間13分

日本語吹替/シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル(表記無し)

(一部、日本語字幕付き上映もあり)(ワールドプレミアムバージョンのみ外国語セリフに日本語字幕付き)

公式サイト
http://www.lupin-the-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

大強盗団「ザ・ワークス」のボス、トーマス・ドーソン(ニック・テイト)の指示により、シンガポールの美術館から古代オリンピックの金メダルを盗み出したルパン三世(小栗旬)は、最後に同僚の腕利き泥棒マイケル・リー(ジェイリー・イェン)にまんまとメダルを取られてしまう。「ザ・ワークス」の次期リーダー指名パーティで、指定のメダルを提出したのは、なんと峰不二子(黒木メイサ)。ところが、そこに車が突入してきて銃を乱射。隠し金庫にあったクレオパトラのネックレスが奪われてしまう。さらにドーソンは撃たれて死亡。ルパンは次元(玉山鉄二)、不二子、ピエール(キム・ジュン)と手を組み、復讐を誓う。


67点

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 五ェ門風に言うと「またつまらぬものを見てしまった」という感じ。映画のスタイルも古いし、音楽は浮いている感じだし、ほぼタイが舞台で、英語がメインで使われているようなのに、全員が日本語をしゃべるという違和感。日本人俳優さえもが本人吹替で、口の動きが全く違うから違和感だらけ。ああ、せめて「ワールドプレミアムバージョン」を見れば良かった。

 冒頭の美術館を襲うシーン、警備システムがレーザー光線って、これチョウ・ユンファの「狼たちの絆」(縦横四海・1991・香)やショーン・コネリーの「エントラップメント」(Entrapment・1999・米/英/独)のころ流行った手法。その後「バイオハザード」(Resident Evil・2002・英/独/仏/米)ではあんなに進化していたのに、またここで見せられるとは。一体いつの設定なんだろう。

 さらに、泥棒たちのボス、トーマスが「美術品は一部の富豪個人のためのものじゃない」とかご大層なことを言いながら、自分たちが盗んだ美術品は隠し部屋の金庫の中にひっそりとしまってあるんじゃあ、同じことじゃないか。自己矛盾。しかも、スプリンクラーで水浸しになったところを追って来る警備員たちに不二子がスタンガンを投げて一斉に感電させるが、オイオイ、自分も同じ床に立ってるじゃないか。いくら泥棒ファンタジーだからって、なんでもありか。タイの軍まで出てくるが、銃がバラバラって。AKやM4も混じってて、これじゃ軍じゃなく山賊だろう。撃ち方もヘンだったし。タイで盗みをやって、「ルパン参上」って書いた日本語の紙切れ置いて来るって……誰宛?

 アクション・シーンはスピード感を出すためか、カメラが動くし、カットは早過ぎるし、何が起きているかよくわからない。銭形を「とっつぁん」て呼ぶのは当然としても、ボスを「おじき」っていうのは、まるでチンピラみたいで、ギャグも滑ってるし…… 見どころって、どこ? 小栗ファンとか、黒木ファン、玉山ファンとかなら楽しめるのかも。ストーリーもわかりにくく、納得しにくい。まあ、どうでもいいのか。一部きれいな絵もあったが、全体に古さを出そうとしたのか、全体にアンバー調のトーンで現代作品とは思えない感じ。デジタルで取っていると思うのだが。フィルム調にしようとして画質をあえて落とすこともあるようだが、これは? まあ、とにかくボクは楽しめなかった。残念!

 主要キャストは、ワルサーP38の変なヒップ・シューティングをやっていたルパン三世に小栗旬、M4のグレネード・ランチャーを使っていた峰不二子に黒木メイサ、.357マグナムM19(アップは本当のスチール・ブルーのように美しかった)4インチのシリンダーを振って入れていた次元大介に玉山鉄二、またつまらぬものを斬った石川五ェ門に綾野剛、ちゃんとガバメントを使っていた銭形警部に浅野忠信。

 海外キャストが多かったが、タイ陸軍の司令官に凄絶バイオレンス映画「オンリー・ゴッド」(Only God Forgives・2013・デンマークほか)のウィッタヤー・パンシリガーム(ヴィタヤ・パンスリンガム)。さすがに不気味な存在感があるが、あれだけ怖く見えた人が、こんなに普通になってしまうとは……。やっぱり役者は良い作品に恵まれると光るということか。

 飛行機の乗客で原作者のモンキー・パンチがいたような。そしてキャビン・アテンダントで小栗の奥さん山田優が出ていた。

 脚本は水島力也。これはプロデューサーでもある山本又一郎のペンネームらしい。北村龍平監督の「あずみ」(2003・日)を企画しており、2作目では脚本も書いている。また「クローズZERO」(2007・日)や「TAJOMARU」(2009・日)、小栗が監督した「シュアリー・サムデイ」(2010・日)でプロデューサーとして小栗旬と仕事をしている。プロデューサーとしては面白かった「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)も手掛けている。

 監督は北村龍平。刀を使ったバイオレンス・アクション「VERSUSヴァーサス」(2000・日)が話題となり、人気漫画原作のアクション時代劇「あずみ」や釈由美子の「スカイハイ」(2003・日)、そして国民的怪獣映画「ゴジラFINAL WARS」(2004・日)などを手掛けるが、その後はあまりパッとしない感じ。とにかく刀を使ったアクションに冴えを見せる印象。

 アクション監督はシム・ジェウォンとヤン・ギルヨン。公式サイトによると日本原作の強烈なバイオレンス作品「オールドボーイ」(Oldboy・2003・韓)と、見ていないがバイオレンス・アクションの「アジョシ」(Ajeossi・2010・韓)を手掛けているという。ただ、それらの作品を手掛けた人が、こんなアクションになるとは……。

 メイン・テーマは布袋寅泰。「キル・ビル」(Kill Bill: Vol. 1・2003・米)の印象的な曲も手掛けた人。本作はあまり印象に残らない。できれば大野雄二のテーマは入れて欲しかったなあ。ボクらオジサン世代にはやっぱりルパンといえば大野雄二のイメージが大きい。大野雄二が日テレ系のバップ専属で、本作はTBSが制作ということで使えなかったんだろうか。シロートはいろいろと想像してしまう。

 銃はメイン・キャストは原作に則っているようだが、タイなどの撮影では実銃ベースのプロップ・ガンが使われているようで、しかもちゃんとしたアーマラーがいなかったのか、実にいい加減。軍なのに装備がバラバラで、しかもAKとM16というあり得ない組み合わせ。ガン・アクション・アドバイザーは住本祐寿。この人は元海上保安官で、坂本新一のペン・ネームで本を出しているが、その本で過去にトラブルも。本作を見る限り、どこをアドバイスしているのかわからない。あり得ない撃ち方、リボルバーのシリンダーを振って入れるという実銃では絶対やらない、しかも古い演出スタイル(狙い?)とか、実に自由奔放。かろうじて、トリガー・フィンガーを延ばしてトリガーに指を掛けていないくらい。しかしこれは日本でのガン・エフェクトを手掛けたビッグショット(納富貴久男、近藤力)のアドバイスではないのか。ほかにフルオートのグロックG18らしいもの、USP、ベレッタM92、シュタイアTMPかウージーのようなサブマシンガン、RPGなども登場。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケで確保。当日は12〜13分前に開場。ほとんど若い人たちで、珍しく中高年はわずか。中高年ってアニメを見ていた世代だと思うんだけど、パスされたということか。ボクはチョイスして失敗したけど。下は小学1年生くらいの子供連れファミリー。意外に子供が多かった。女性は1/3くらい。最終的には287席に9割りくらいの入り。さすが話題作。でも、これから増えることなんてあるんだろうか。それにしても開映ギリギリに入ってくるヤツが多かった。

 気になった予告編は……上下マスクの「ファーナス訣別の朝」はティーザーなのか、よく内容はわからない。できの悪い弟としっかり者の兄の兄弟? 警察の特殊部隊? 弟のために兄が犯罪に手を出すということだろうか。9/27公開。

 上下マスクの「記憶探偵と鍵のかかった少女」はすでにタイトルで勝利している感じ。広告などで煽り過ぎてハードルをあげ過ぎないで欲しいところ。9/27公開。

 スクリーンが左右に広がりシネスコ・サイズになって、本編へ。


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