Non-Stop


2014年9月6日(土)「フライト・ゲーム」

NON-STOP・2014・英/仏/米/加・1時間47分(IMDbでは106分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(英12A指定、仏U指定、米PG-13指定、加PG指定)

公式サイト
http://flight-game.gaga.ne.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

連邦航空保安官のビル・マークス(リーアム・ニーソン)は、ニューヨーク発ロンドン行きのアクアランティック機に搭乗する前、車の中でアルコールを混ぜたコーヒーを飲み、空港ビルの外でタバコを吸う。機内では、ビジネス・クラスで窓側に座りたいから席を代わってくれという女、ジェン・サマーズ(ジュリアン・ムーア)が、隣にやって来る。無事、離陸すると、夜中11時近くになってビルはトイレに入り、テープで煙り感知器を塞ぐと、タバコを吸うが、出てくると送信者不明のメールが携帯に届く。指定の口座に1億5千万ドルを振り込まなければ、20分こどに機内の誰かを殺すという。すぐにビルは機長(ライナス・ローチェ)に報告するが、TSA(運輸保安庁)に乗客名簿と口座のチェックをしてもらうものの、いたずらだろうということで、緊急着陸は行わず、そのまま飛行を続けることになる。しかし気になるビルは客室乗務員のナンシー(ミシェル・ドッカリー)と隣の女性ジェンの協力を得て、監視モニターを使い、自分が返信した時ケータイを操作している乗客のリストを作ることにする。


76点

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 楽しめた。ずっと緊張感が続いて、疲れるほど。実に良く出来ている。飛行機という密室なのに、ちゃんと犯人を隠し、次から次へとトラブルを起こす。乗客は怪しいヤツばかり。しかも主人公のエアー・マーシャル(航空保安官)にも、アル中などの問題がある。タバコも吸うし。疑わしいのだ。

 そして、予告した時間通りに、特に犯人が手を下したとは思えないのに人が死んでいく。むしろ、その予告殺人に主人公が手を貸している感じ。乗客や乗務員からも疑われ、孤立無援の中、どうやってこの最悪の事態を乗り切るのか。興味を募らせておいて、ちゃんと納得できる犯人と、結末を用意して見せる。アメリカっぽいハッピィ・エンドで「ダイ・ハード2」(Die Hard 2・1990・米)のように終わる。ジョディ・フォスターの「フライトプラン」(Flightplan・2005・米)と似ている部分はあるものの、こちらの方が断然面白い。

 実際のところ、連邦航空保安官の詳細はわからないが、唯一銃器を携帯して航空機に乗ることが許されていて、9.11以降、アメリカの上空を飛ぶ航空機には航空保安官が搭乗していないと飛行が許可されないのだとか。だから日本の航空会社でもアメリカ上空を飛んでいるものには必ず航空保安官が乗っているはず。

 本作の劇中のラジオでは「楽な職種が航空保安官で、ファーストクラスで旅行しているだけ」というようなことを言っているが、本作では、1人はビジネス・クラス、1人はエコノミー・クラスにいる。基本は2人ペアだそうで、とぎどき3人もあると言う。銃の射撃技術にも厳しい規定があって、たとえば銃を低く構えた状態から7ヤードの標的に2発を1.35秒(2回の平均で)以内に命中させなければならないとか。それも年4回のチェックに合格しなければならないらしい。普通の乗客に偽装していて、どこに居るかも明かされない。令状なして逮捕する権利が与えられているのだとか。以前はスカイ・マーシャルと言ったらしい。

 ちなみに連邦航空保安官の銃はSIGのP229R(本作でも使っている)で口径は.357 SIG。しかも機内で発砲しても期待を貫通しない特殊な弾丸を使っていると言われる。ただ、他の多くの映画やTVと同じ様に、麻薬が発見されると舐めて確認しているが、本物の捜査官は絶対にそんなことはしないという。もし毒だった場合、死んでしまうことになりかねないからだ。この辺はあまいかな。

 ビル・マークスはリーアム・ニーソン。アクションの「96時間」(Taken・2008・仏/米/英)が良かったが、続編は同じ人とは思えないほど残念なものに。本作は「96時間」に匹敵するくらいの出来。ちょっと暗いイメージだが、孤軍奮闘するのが良いのかもしれない。

 隣に座る不気味な女性ジェン・サマーズはジュリアン・ムーア。実に怪しい雰囲気。つい最近「キャリー」(Carrie・2013・米)で、主人公のキャリーを超える恐ろしい母を演じていた。本作では、なぜか「マム」と呼ばれることを異常に嫌っていたが、マムはマダムの省略形ではないのだろうか。だとすると奥様かお嬢様で、特に問題はないように思えるのだが、アメリカだと奥様限定で、未婚だということなのか。よくわからなかった。

 機長はライナス・ローチェ。悪役が多い人で、「フォーガットン」(・2004・)でジュリアン・ムーアと共演している。人気長寿TVシリーズの「LAW & ORDER ロー&オーダー」(Law & Order・1990〜2010・米)では途中から検事役を演ている。

 副操縦士はジェイソン・バトラー・ハーナー。TVがメインのようで、怪しい役が多く、クリント・イーストウッド監督の「チェンジリング」(Changeling・2008・米)や「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 1 2 3・2009・米/英)などに出ている。

 キャビン・アテンダントのナンシーはイギリス生れのミシェル・ドッカリー。主にTVで活躍していて、劇場映画はシアーシャ・ローナンの「ハンナ」(Hanna・2011・米/英/独)やキーラ・ナイトレイの「アンナ・カレーニナ」(Anna Karenina・2012・英)に出ているらしい。雰囲気が良かったので、今後注目かも。

 怪しい乗客の1人、スキンヘッドのオースティンはコリー・ストール。「LAW & ORDER:LA」(Law & Order: Los Angeles・2010〜2011・米)で刑事をやっていた人。劇場映画では「ミッドナイト・イン・パリ」(Midnight in Paris・2011・西/米)や「ボーン・レガシー」(The Bourne Legacy・2012・米)に出ている。

 ほかの怪しい乗客、トム・ボーウェンはスクート・マクネイリー。ベン・アフレックのアカデミー賞を受賞した「アルゴ」(Argo・2012・米)、強烈な奴隷映画「それでも夜は明ける」(12 Years a Slave・2013・米/英)などに出ている。

 脚本は3人クレジットされている。ジョン・W・リチャードソン、クリス・ローチ、ライアン・イングル。ジョン・W・リチャードソンはTVの編集をメインでやっている人で、脚本は初めて。クリス・ローチはクリストファー・ローチでもクレジットされることがあり、メインはTVのプロデューサー。脚本もTVが多く、それもプロレス系のものが多い。劇場作品は初めて。ライアン・イングルは、劇場未公開作品や短編を書いているが、長編劇場作品は初めて。まあ、よく脚本初心者でまとまったものだと思う。

 監督はジャウマ・コレット=セラ。スペイン生まれで、アメリカで映画を学んだらしい。CMの世界から、プロデューサーのジョエル・シルヴァーに見出され再リメイク・ホラー「蝋人形の館」(House of Wax・2005・豪/米)で劇場映画監督デビュー。後味の悪い映画選に入った「エスター」(Orphan・2009・米/加/独/仏)、ジョエル・シルヴァーの製作によるリーアム・ニーソンのアクション「アンノウン」(Unknown・2011・米/独ほか)などを手掛けている。プロデューサーとしても活躍しており、近々「記憶探偵と鍵のかかった少女」が公開される。

 銃はビル・マークスがシルバーのP226Rエリート・ステンレス。もう1人の連邦保安官がリアルな設定のP229R。

 パタパタとめくれていく掲示板のパターンのエンディングは、たぶんプロローグ・フィルム。空港の掲示板のような雰囲気を取り入れながら、ガチガチでないところがいい。

 公開初日の2回目、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケ・カードで確保。10分ほど前に開場になって場内へ。20代くらいからいたものの、やはりメインは中高年。男女比は6対4くらいで男性の方が多い。アンケートがあるとかで関係者が3〜4人。このアンケート、チラシをもらって、それからWEBで答えるという新しい形式。簡単で良いが、そのサイトに会員登録しなければならないなんて、マーケティングか新手の顧客(名簿?)獲得目的のような気がして、怖くてアクセスできない。最終的には157席がほぼすべて埋まった。

 気になった予告編は……上下マスクの「美女と野獣」はフランス映画の実写版。もともとこの物語はフランスのお話なんだそう。イメージはディズニー・アニメを尊重している感じで、いい。11/1公開。

 上下マスクの「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」は新予告に。まあ、ニコール・キッドマンがきれい。cして、フランスに取り込まれてしまわないように、凄いドラマがあったらしい。10/18公開。

 スクリーンの上が下がってきて、シネスコ・サイズになって本編へ。


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