Zakuro-zaka no Adauchi


2014年9月20日(土)「柘榴坂の仇討」

2014・木下グループ/デスティニー/バンダイビジュアル/松竹/Boreti Holdings Limited/塚田農場/ツネイシグループ/HRコンサルティング/アイセイ薬局/たねやグループ/HOME'S/えみの和/吉田正樹事務所/JTBコミュニケーションズ/エネット/一広/山甚グループ/茂田オフィス・2時間15分

シネスコ・サイズ(たぶんデジタル、Red Epic)/ドルビー・デジタル(たぶん、表記無し)


公式サイト
http://www.zakurozaka.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

明治5年秋、元彦根藩の藩士、志村金吾(しむらきんご、中井貴一)は、13年前、大老、井伊掃部頭直弼(いいかもんのかみなおすけ、中村吉右衛門)の警護だったにも関わらず「桜田門外の変」で水戸の浪士16名に主君を暗殺されてしまう。その責任を問われ、切腹も許されず、必ず実行犯の誰か1名だけでも良いから、首を持ってこいと下命され、ずっと追い続けていた。すでに逃亡した実行犯5名の内、4名までが捕まったり、死亡したりして、佐橋十兵衛(さばしじゅうべえ、阿部寛)1名しか生き残っていなかった。しかも下命した藩は廃藩置県により無くなっていた。翌、明治6年、太政官令が発布され、いっさいの仇討ちが禁止された。そんなとき、志村が実行犯を追っていることを知った司法省の警部、秋本和衛(あきもとかずえ、藤竜也)から呼び出しがあり、重要な情報が伝えられる。


72点

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 うーむ、どこも悪いところがなく、良くできていて、絵もコントラストが高く力があり、色も濃くて素晴らしく、音にも迫力があるのに、伝わってこなかった。泣くべきところで、感動できない。感情の揺さぶりが少ない。悪くないのに、泣けない。感動的な話なのに! そしてタイトルが読めない。「柘榴坂(ざくろざか)」かあ。

 たぶん、チョイ役に吉田栄作とか、堂珍嘉邦とか有名人を使い過ぎが、バランスをくずしているのだろう。それが大きな原因ではないとしても、それくらいしか伝わってこない原因がわからない。

 気になったのは、画質が良い分、かつらが目だつようになってしまっていること。そして、明治5年くらいでレンガの西洋建築があるのが、何か違和感。時代考証の人が付いているので、間違いではないんだろうけど……。また、明治になって既婚女性はお歯黒をやめたとしても、お歯黒は戻せるのだろうか。志村の妻セツがお歯黒ではない。それとも広末をお歯黒にできなかったのか。

 映画の構造としては尻すぼみ。桜田門外ノ変のスペクタクル・シーンから始まって、ラストは小さな坂道での1対1の対決。それも「椿三十郎」(1962・日)の対決とはかなり違う。かなり地味。構成としては「桜田門外ノ変」(2010・日)と同じ。ただ視点が追われるものから、追う側に替わっただけ。結局、事件はどちらの側にとっても地獄だったと。強烈なインパクトでは「桜田……」の方が上だ。

 しかも冒頭はちゃんとした武家の家での生活が描かれ、アバン以降はあばら家住まいとなると、小説では何回登場してもあまり気にならないが、映画だと映像としてバックに必ず写るわけだから、どうしても絵が出るだけでかわいそうになってくる。ここもさわやかな感動映画になりにくい原因。もちろんバッド・エンディングではないのだが。

 オープニングの、暗闇にぽつぽつと光が現れ、それが提灯になって、侍の行列が現れるというのは素晴らしい。しかも襲ってくる刺客はキツネのお面を付けている。この辺であれおかしいなと思わせる。映画らしいオープニング。カッコいい。

 追う男、志村金吾に「天地明察」(2012・日)の中井貴一。追われる男に「テルマエ・ロマエ」(2012・日)の阿部寛。志村の妻セツに広末涼子。井伊直弼に歌舞伎役者の中村吉右衛門、司法省の警部、秋本和衛に藤竜也。ほかにも高島政宏、吉田栄作、堂珍嘉邦らが出ている。

 原作は浅田次郎の同名小説。脚本は、高松宏伸、飯田健三郎、長谷川康夫の3人がクレジットされている。高松宏伸という人は「地下鉄(メトロ)に乗って」(2006・日)や「日輪の遺産」(2010・日)の浅田次郎原作の映画化の企画に関わった人で、脚本は本作が初めてらしい。飯田健三郎と長谷川康夫は、若松節朗監督の「ホワイトアウト」(2000・日)や福井晴敏原作「亡国のイージス」(2005・日)、「ミッドナイトイーグル」(2007・日)、「真夏のオリオン」(2009・日)、「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011・日)など話題のアクション大作を一緒に書いてきた人。つまりアクション大作系に浅田次郎テイストを融合させたということか。

 監督はTVのドラマから映画も手掛けるようになった人で、たぶん劇場作品は「ホワイトアウト」が最初ではないかと。その他に渡辺謙の「沈まぬ太陽」(2009・日)などを撮っている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は10分前くらいに開場。ほとんど中高年というか、高齢者メイン。若い人は2〜3人。女性は1/3ほど。ばあさんが目立っていた。普通の時代劇だからなあ。同じ時代劇でも「るろう……」のようなものなら、幅広い年齢層で、多くの人が押し寄せるのだが。だから、時代劇不振ということではないと思う。過去にも北野武の「座頭市」(2003・日)なんかは人が入ったはずだ。座頭市は、綾瀬はるか版「ICHI」(2008・日)や、SMAPの香取慎吾版「座頭市THE LAST」(2010・日)まで作られている。松本人志監督の「さや侍」(2011・日)とか、最近では「切腹」(1962・日)のリメイク「一命」(2011・日)など3Dで撮られているし、「のぼうの城」(2011・日)、「清須会議」(2013・日)は若い人も入っていたし……。観客としては特に時代劇が少ないとは思わないし、人が入っていないとも思わない。「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米ほか)や「47 RONIN」(47 Ronin・2013・米)などハリウッドまで作っているだはないか……誰が中井貴一に「時代劇不振」と言わせたんだろう。最終的には301席に1/3くらいに入り。朝早いので、こんなものだろう。

 気になった予告編は……上下マスクの「ソロモンの偽証」は原作宮部みゆきのミステリー。「その法廷は14歳の死で始まり、偽証で完結した。」というキャッチ・コピー。2015公開。

 「マエストロ」は楽団員の松坂桃李と西田敏行の指揮者という顔合わせで、漫画の原作らしい。映画敵には地味なようだが……。1/31公開。

 上下マスクの「100歳の華麗なる冒険」はスウェーデンのベスト・セラー小説の映画化だそうで、老人ホームを逃げ出したじいさんのコメディらしい。ただタイトルは早く出せ。ラスト一瞬では覚えられない。予告はかなり面白そう。劇場次第かな。11/8公開。

 「MOTHERマザー」は楳図かずおが監督した自伝的な物語らしい。かなり怖そうで、主演は片岡愛之助。見たいけれど、公開日が重なる見たい作品が多くて……9/27公開。


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