Out of the Furnace


2014年9月28日(日)「ファーナス 訣別の朝」

OUT OF THE FURNACE・2013・米/英・1時間56分

日本語字幕:フチつき丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(レンズ、by Panavision)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://furnace-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

アメリカ、ペンシルバニア州の田舎町ブラドックの製鉄所で働くラッセル・ベイズ(クリスチャン・ベール)は、恋人のリナ(ゾーイ・サルダナ)と暮らし、寝たきりの父の面倒をみ、イラクから帰還した弟ロドニー(ケイシー・アフレック)のギャンブルの付けの支払いまで陰でサポートしていた。ところがある日、断り切れずに酒を飲んで帰る途中、重大な交通事故を起こし、州刑務所に収監されてしまう。刑期を終えるまでの間に、リナは家を出て警察署長のウェズリー・バーンズ(フォレスト・ウィテカー)と生活を始め、父は亡くなり、ロドニーは兵役延長で再びイラクに行く。やがてロドニーが帰還し出所する兄を迎えるが、地道に働く気はなく、ストリート・ファイトに出ることで大金を儲けようとする。


73点

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 う〜む、徹底的ではないが、暗くて重い話。世界中の不幸な出来事が主人公のひとりの両肩にのしかかったような悲劇。しかも恵まれた家庭ではなく、生活するのがやっとの、ウンザリするような日々の繰り返しを耐えて生きているのに。街もゴミが散らかっているようなところ。シャッター通りのように、人が住まなくなった家もチラホラある。これは…… かなり元気な時に見ないとマイナス度が大きくて、凹むことになる。救いもない。希望もない。ラストの選択はアレで良かったのか。いくつかの終わり方があったはず。もちろん、もっと悲惨なパターンもあったわけだが、なぜあのパターンに?

 映画の出来、不出来の問題ではなく、映画として、物語として、どうなのかなと。テクニック的にはそれだけ感情が動かされたのだから、レベルが高いということなのだろう。ただあんまり好きではないなと。決して安くないお金と時間を使って、こんな気持ちになるなんて。元気な時に見ないと、ダメージが大きい。

 シネイコ・サイズだが、この閉塞感を出すにはビスタの方が良かったのではないだろうか。とはいえ、かえって閉塞感が加わって、重〜い気持ちになったかも。多少解放感があったほうが良かったということか。変な話だが。

 アメリカではこんな話が多い気もする。小さな田舎町に住んでいて、貧しく辛い暮らしを送っていて、そんな況を脱出するためにも町を出て、どこかに活路を見出したい。しかし、出て行くためのお金も無く、あても無く、仮に都会に出たとしても実は何も解決しない、というパターン。多くの映画で描かれている。そして、才能のある人が出て行くと、アメリカン・ドリームの成功譚になる。本作は出て行かず、もがくところで終わってしまうが、一発逆転を狙いヘタに法律から外れるようなことに関わると、とんでもないことになってしまう。

 ラッセル・ベイズはクリスチャン・ベール。つい最近「アメリカン・ハッスル」(American Hustle・2013・米)にハゲの中年太りで出ていた。本作出はすっかりやせ形に。すでに次作リドリー・スコット監督の「エクソダス」が控えている。

 弟のロドニーはケイシー・アフレック。「ジェシー・ジェームズの暗殺」(The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford・2007・米/加/英)ですっかりダメなヤツの役が定着してしまった感じ。「キラー・インサイド・ミー」(The Killer Inside Me・2010・米/スウェーデンほか)の保安官助手役も凄かった。

 町のストリート・ファイトを仕切っているペティはウィレム・デフォー。すっかり怪優という感じ。本作でも独特の味を出している。「処刑人」(The Boondock Saints・1999・加/米)の女装の名刑事は強烈だった。

 警察も近寄れない山にこもっている無法者の一団のボス、デグロートはウディ・ハレルソン。まあ、強烈な悪役で、本当に恐ろしい。薬でいってしまっていて、何をやらかすかわからない感じがものすごい。たぶん「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(Natural Born Killers・1994・米)以降、エキセントリックな役が多くなったのではないだろうか。傑作ゾンビ・アクション「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)ではコミカルな感じだったが、「グランド・イリュージョン」(Now You See Me・2013・仏/米)では割りとまともな役だった。

 ほかに、ラッセル・ベイズの恋人に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(Guardians of the Galaxy・2014・米/英)のゾーイ・サルダナ。その新しいパートナーとなる警察署長ウェズリー・バーンズに「ケープタウン」(Zulu・2013・仏/南ア)のフォレスト・ウィテカー。ラッセルの叔父ジェラルドに「ジェシー・ジェームズの暗殺」でケイシー・アフレックと共演しているサム・シェパード。

 銃は……鹿猟にラッセルが持って行くボルト・アクション・ライフルは正体不明。トリガー・ガードに特徴があるのだが。ペティが持っているのはS&Wのセンチニアル。デグロートがケイシーの惨殺に使うのはガバメントのシルバー。SWATは当然M4カービンで、イオテック付き。刑事はグロック。

 脚本は監督でもあるスコット・クーパーと、ブラッド・インゲルスビーの2人。ブラッド・インゲルスビー。本作の前に短編を2本書いているが、劇場長編映画は初めてらしい。

 監督のスコット・クーパーは俳優としてのキャリアの方が長く、見ていないが監督としてはジェフ・ブリッジスの「クレイジー・ハート」(Crazy Heart・2009・米)に続いて2本目。すでに3本めがポスト・プロダクションに入っているらしいが、この出来でどうなんだろう。たしかに悪党の怖い感じは良く出ていたと思うが……。

 プロデューサーの1人に、「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)の監督としても有名なリドリー・スコット。近作は「エクソダス」。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は遅めのスタートで、全席指定。これもムビチケ・カードで確保。当日は10分前くらいに開場。ほぼ中高年の男性で、女性は15〜16人中2〜3人。この内容だと当然か。客が入っただけでも凄い気がするが。たぶん、まったく同じ話でクリスチャン・ベールとかが出ていなかったら見ない。最終的には157席に4割りくらいの入り。

 気になった予告編は……ジョニー・デップの新作、上下マスクの「チャーリー・モルデカイ」はコメディらしいが、ちょっと007的な匂いがしたものの、まだティーサーなので内容は良くわからない。2月公開。

 上下マスクの「エクソダス 神と王」はリドリー・スコット監督で、モーゼとラムセスの戦いを描くらしい。大軍の戦いが描かれていたが、きっとリドリー・スコットのことだから、最後は1対1の決闘になるのではないだろうか。違うか? 1/30公開。


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