Million Dollar Arm


2014年10月11日(土)「ミリオンダラー・アーム」

MILLION DOLLAR ARM・2014・米・2時間04分

日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、Arricam)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米PG指定)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/million-dollar-arm.html
(全国の劇場リストもあり)

大手のスポーツ・エージェントから独立して、友人のアッシュ(アーシフ・マンドヴィ)と女性社員のテレッサ(アリン・レイチェル)と3人でスポーツ・エージェントを始めたJ・B・バーンスタイン(ジョン・ハム)は、NFL選手のポポ(レイ・マウアルーガ)との契約を大手にとられ、事務所の家賃どころか、自宅のローンも払えないような状態だった。そこで、起死回生を賭けて、まだスポーツの分野では未開の地だったインドから、クリケットつながりで野球のピッチャーを発掘するための企画、賞金10万ドルの「ミリオン・ダラー・アーム」を開催することを思いつく。


73点

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 トム・クルーズの「ザ・エージェント」(Jerry Maguire・1996・米)と、異文化衝突ものとスポ根ものをミックスしたような感じ。だから「クール・ランニング」(Cool Runnings・1993・米)的な部分もある。笑えるし、感動的。驚くべきはこれが実話だということ。まあ、アメリカではありそうな話なのかもしれない。

 主人公のJ・Bは、高級車(ポルシェ?)を乗り回し、独身で豪邸に暮らしながら、それらはバブリーな時に買ったもので、仕事が無くローンも払えないような状態。離れを人に貸したり、車も売ってファミリー車に買い替えなければならない(それでも、まだまともな暮らしだと思うが)というのは、他人ごとではない感じ。だから仕事のことしか考えていない。ビジネス・オンリー。それが、選手との信頼関係とか、人を思いやることに目覚めるというのは感動的。ちょっとでき過ぎな気もするけど。

 そして強烈なのは、インドの現状。10億もの人口があって、だれも信号を守らず、クラクションを鳴らすのが好き(!)というカオス。空港に迎えに行く日を間違えても当たり前で、金を払わないと送った荷物が税関から出てこず、金を先に払わないと依頼したチラシも納品が数週間後になってしまうという混とん。映画では「迂回システム(バイパス・システム)」と呼んでいる。実際、この映画のスタッフもロケしてそれを感じたのかもしれない。我々はイライラするが、文化が違えば感じ方も違うのだろう。しかし数学でインドは進んでいて、コンピューター・ソフトの技術者などもインドがダントツで優れていて多いとかいう話もあって、つまりは身分制というか貧富の差が大きいということになるのだろう。そんなことも強く感じさせられる。「スラムドッグ$ミリオネア」(Slumdog Millionaire・2008・英/印)とつながる恐ろしさ。

 エンド・ロールでは実際の写真やビデオが出る。インド初の大リーガー2人はオバマ大統領ともあっているし、劇中、結構いい加減な通訳のアミトに撮らせていたビデオの本物らしい映像が流れるのもビックリ。この後、彼はインドに戻って自分の野球チームを作ったと。

 そして絵もきれいだが、音楽も良い。特にインド風の曲が実に良い感じ。舞台がアメリカからインドになると、「ブーン、シャカラカ、ブーン」といきなりインド風に。ラストの曲も良い。

 気になったのは、借金も払えないのに、なぜ長期(1カ月くらい?)にわたってインドに行けたのか。球団のオーナーらしいチャンという人がスポンサーになってお金を出してくれたということなんだろうけど。あまりリアルな貧乏を描いてしまうと、映画の雰囲気が変わってしまうからか。

 主役となるJ・B・バーンスタインを演じたのはジョン・ハム。劇中「J・Bサー」と呼ばれるのが「J・Bさん」と聞こえて日本語かと思った。ジョン・ハムはあまりスクリーンでは見かけないが、広告代理店を描いたTVの「MAD MENマッドメン」(Mad Men・2007〜・米)シリーズに主演している人。映画では残念なリメイクSF「地球が静止する日」(The Day the Earth Stood Still・2008・米/加)やベン・アフレックの「ザ・タウン」(The Town・2010・米)にFBI役で出ていたらしい。

 大学の心理学者でスポーツ・トレーナーをやっているらしいトム・ハウスはビル・パクストン。ケチな小悪党をやることが多い印象だが、「エイリアン2」(Aliens・1986・米/英)でブレイクした感じ。「ターミネーター」(The Terminator・1984・英/米)にも小さな役で出ていて、ジェームズ・キャメロン作品常連という感じ。ただ「アバター」(Avatar・2009・米/英)には出ていなかった。最近は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(Edge of Tomorrow・2014・米/豪)で軍の上官を演じていた。

 ずぼらなようだが見る目はしっかりしているスカウトのレイはアラン・アーキン。この役にピッタリで、笑わせてくれる。1934年生れだから、すでに80歳。寝ていると、死んでいるんじゃないかといわれる。それで水を掛けられると「オレは火事か」。こんな役が多く、「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)でアカデミー助演男優賞を受賞している。うまいなあ。最近は「ミッドナイト・ガイズ」(Stand Up Guys・2012・米)や「リベンジ・マッチ」(Grudge Match・2013・米)でも似たような味で好演していた。

 コーチを目指す調子の良いインド人の男アミトはピトバッシュ。12歳ですでに演技でインドで受賞したという。その後舞台からインド映画に移り、本作でハリウッド・デビューを果たしたらしい。この人は注目かも。

 ミリオン・ダラー・アームの1人、フラミンゴの構えのリンクはスラージ・シャルマ。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(Life of Pi・2012・米/台ほか)でパイを演じハリウッド・デビューしたひと。ちょっと印象は薄いが、コミカルな感じが良い。

 もう1人のミリオン・ダラー・アーム、ディネシュはマドゥル・ミッタル。「スラムドッグ$ミリオネア」(Slumdog Millionaire・2008・英/印)にギャングで出ていたらしい。顔つきが怖いのでそっちが合っているかも。

 脚本はトム・マッカーシー。監督も脚本も手掛けるが、一番多いのは俳優。ロリコン殺人事件を描いた「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)やリアルなCIAを描いた「フェア・ゲーム」(Fair Game・2010・米/アラブ首長国連邦)に出ている。脚本では、見ていないが「扉をたたく人」(The Visitor・2007・米)の監督・脚本や、ディズニー・アニメの「カールじいさんの空飛ぶ家」(Up・2009・米)の原案を担当している。

 監督はクレイグ・クレスピー。ダッチ・ワイフを彼女にする男の「ラースと、その彼女」(Lars and the Real Girl・2007・米/加)を撮った人で、最近はリメイク版のホラー「フライトナイト/恐怖の夜」(Fright Night・2011・米)を撮っている。ややコミカルなものに手腕を発揮するという感じだろうか。

 公開8日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、前夜にムビチケカードで確保。当日は20分前くらいに行ったら開場していた。ただ10分前になってもボク1人。それから徐々に人が来て、最終的には148席に20人くらいの入り。これはどうしたことだろう。もっと入っても良い映画だと思うが、野球というよりインドに興味がないということか。ほぼ中高年で、家族連れが1組。女性はチラホラ。

 ニュースでTOHOシネマズ六本木ヒルズが2015年にリニューアルされるという。2番のみスクリーンが見にくかったのが改善されると良いんだけれど。

 気になった予告編は……上下マスクの「西遊記」はしばらく御無沙汰のチャウ・シンチー監督作品。例によってCG使いまくりの漫画的アクション。ティーザーなので内容は良くわからないが面白そう。11/21公開。

 上下マスクの「イントゥー・ザ・ウッズ」はディズニーの実写版おとぎばなし。なんだかいろんな物語をくっつけた感じで、悪い魔女はメリル・ストリープ! 「シカゴ」(Chicago・2002・米/独/加)のロブ・マーシャルが監督で、ミュージカルになるらしい。アメリカでクリスマス公開。公式サイトはまだない模様。

 D機関、スパイといった単語が並ぶのは上下マスクの「ジョーカー・ゲーム」。ティーザーなので内容は良くわからない。究極の頭脳戦らしい。1/31公開。

 やっぱりTVでやっていた「ST」は映画化。1/10公開。

 上下マスクの「バンクーバーの朝日」はたぶん新予告に。人種差別の話で、スポ根で、感動的のようだ。実話の映画化。予告でちょっと泣きそう。フジテレビか。12/20公開。

 上下マスクの「寄生獣」も新予告に。なんだかCGがすごい。11/29公開。

 てっきり「だるまさんが殺した」というタイトルだと思っていた上下マスクの「神様の言うとおり」は雰囲気が何だか同じ三池崇史監督の「悪の教典」(2012・日)にそっくりの感じ。かなりの残酷シーンがありそう。11/15公開。

 上下マスクの3D-CGアニメ「ベイマックス」は新予告に。日本語吹替版で、キャラクターの名前も日本語。日本版だけかと思ったら、英語版でもハマダヒロとかハマダタダシという名前。本当に日本人の設定なんだ。でもこれでヒットするんだろうか? ちょっと不安……。原題は「Big Hero 6」。12/20公開。

 上下マスクの「フューリー」も新予告に。もう予告だけで泣きそう。本当に走行できる世界で唯一のタイガーI型戦車が使われているという。ただ字幕ではドイツ語のティーガーになっていて、セリフではタイガーと言っているのでちょっと違和感。当時も今も、アメリカ兵がティーガーと呼ぶのはおかしいのではないだろうか。これはアメリカ軍の話なんだから。配給はKADOKAWA。当然ブルーレイなんかも字幕はティーガーになってしまうんだろう。翻訳は誰だろう。11/28公開。

 上下マスクの「ドラキュラZERO」も新予告へ。大分雰囲気がわかってきた。国を守るため苦渋の選択で魂を売ったと。10/31公開。

 上下マスクの「誰よりも狙われた男」は今年2月に急逝したフィリップ・シーモア・ホフマンの遺作。テロリストとの戦いを描くらしい。見たいが、劇場がなあ……。公式サイトもクッキーをオンにしないと見られないし……。10/17公開。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。


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