Grace of Monaco


2014年10月19日(日)「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」

GRACE OF MONACO・2014・仏/米/ベルキー/伊/スイス・1時間43分

日本語字幕:丸ゴシック体下、古田由紀子/シネスコ・サイズ(レンズ、Arri、Panavision)/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://grace-of-monaco.gaga.ne.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1961年12月、結婚してモナコ公妃となったグレース・ケリー(ニコール・キッドマン)のもとに、映画監督のヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)が訪れ、新作映画「マーニー」の脚本を置いていく。宮殿のしきたりになじめないグーレースは映画界への復帰を考えていたが、ちょうどそのときフランスがモナコに対して、無税で企業を誘致しているため、税金をフランスに対して支払うように迫り、国境に警官隊を派遣する。夫のレーニエ3世(ティム・ロス)は各国を味方につけ、政治的解決を図ろうとするが、いずれの国もフランスにたてつくようなことはしない。夫が追い込まれる中、グレースは赤十字の舞踏会という名目で各国の要人を集め、そこで助けを求めようとするが。


70点

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 うーむ、残念な映画。見どころがない。まず画質が悪い。16mmで撮ったものをブローアップしたような粒状感。そのおかげでグレース・ケリーを演じるニコール・キッドマンのしわが目立たなくなっているのだろうが、全体の絵が汚くなってしまっている。ヒッチコック映画へのオマージュとか、せっかくいい絵になりそうなカットはいっぱいあるのに……。

 見どころは、あえて言えば、わりと有名俳優が出ているということと、ニコール・キッドマンが毎回違うドレスで登場するということくらいか。ファッション好きには良いかもしれないが、それ以外の人には103分が長い。退屈。ただ、フランスが凄い悪役なのに、フランスがメインで作っているのはすばらしいと思うけれど。ケリー・バッグは出てこなかったな。カルティエは出てきたけど。

 まず映画の最初に「実話をもとにしたフィクション」と出る。これが興ざめ。なんだ作り話かと。それにしても実名を使ってフィクションを作るかなあ。まさかリアル過ぎてこうでも言わないと影響が大き過ぎるとか……は、ないよなあ。まあ、スパイ探しの件は、まさに映画的なミステリー仕立てだし、実話とは思えない。

 ニコール・キッドマンはきれいだが、47歳という歳は隠せない感じ。本物のグレース・ケリーは1929年生れだからこの物語の1961年当時は32歳だったわけで、そこにも大きな違いが……。オーストラリア出身で、美人だけれど最初はあまり注目されなかった気がする。ボク敵には「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・米/豪)、「アザーズ」(The Others・2001・米/西/仏/伊)、「バースデイ・ガール」(Birthday Girl・2001・英/米)、「コールド・マウンテン」(Cold Mountain・2003・米/英/ルーマニア/伊)、「ザ・インタープリター」(The Interpreter・2005・英/米/仏/独)あたりの2000年から5年くらいが良かった気がする。その後だと「オーストラリア」(Australia・2008・豪/米/英)あたりだろうか……。最近はちょっと、なあ。

 夫のレーニエ3世はティム・ロス。TVが増えたからなのか、あまり最近見かけない気がする。強烈だったのはタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」(Reservoir Dogs・1992・米)で、最近で印象的だったのは、後味は全く良くないのだが不条理殺人事件の「ファニー・ゲームU.S.A.」(Funny Games・2007・米/仏/英ほか)か。

 相談役のタッカー神父はフランク・ランジェラ。セクシーな吸血鬼ぶりが話題となった「ドラキュラ」(Dracula・1979・米/英)は衝撃的だったが、いまやすっかりおじいちゃんといった感じ。最近で言うと、「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)はなかなか衝撃的だったし、雰囲気がソックリで驚かされた。

 モナコのPR担当のルパート・アランはマイロ・ヴィンティミリア。話題になったTV・SFドラマ「HEROES/ヒーローズ」(Heroes・2006〜2010・米)でピーター・ペトレリを演じた人。

 脚本はアラッシュ・アメル。プロデューサーでもあり、アラン・エッカートのスパイ・アクション「陰謀のスプレマシー」(Erased・2012・米/加ほか)の脚本を書いた人。スパイ探しのくだりは納得だ。

 監督はヒット・スリラーの続編「クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち」(Les rivieres pourpres 2 - Les anges de l'apocalypse・2004・仏/伊/英)のオリヴィエ・ダアン。その後「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」(La mome・2007・フチ/英/チェコ)の脚本と監督を担当し、主演のマリオン・コティヤールにアカデミー賞をもたらした。

 フランスの警官隊がもっているのはMAT49サブマシンガン、ライフルはMle1949/56のようだった。

 鏡が頻繁に出てきたが、グレース・ケリーには現実感がなかったということなのか、偽りの生活だったということなのか……。字幕で一部ジャギーが気になった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は10分前くらいに開場となって場内へ。下は小学生くらいの娘を連れたファミリーから、中高年まで幅広かったが、メインはもちろん中高年。ヒッチコック作品を見た人たちだろう。ただ男女比は4対6くらいで女性の方が多く、女性は年齢が若めだった。女性の生き方というような部分でアピールしたのだろうか。最終的には301席に6.5割りくらいの入り。

 若い女の子でも、予告の間にケータイを点けるような子は、靴も脱ぐと。オヤジかおまえは。

 気になった予告編は……上下マスクの「サン・オブ・ゴッド」は日本語ナレーションで、聖書の映画化だと。イエス・キリストの誕生から復活までを描くらしい。ただ映画とは言え、登場するのが中東の人々で、舞台も中東で、英語でいいのかという気はするし、手の甲に磔にされた穴が開いているというのも(骨が放射状になっているので、そこに杭というかクギは打たないだろうという)疑問を感じるが、凄そうな気はした。1/10公開。

 下町オーケストラ的な「マエストロ」は、日本映画らしく予告の画質が酷い。絵は売りじゃないのか。出演は西田敏行と松坂桃李。1/31公開。

 「繕い裁つ人」は、町の仕立屋さんの話らしく、何だかとても小さな話のような……。これも日本映画らしい気はする。1/31公開。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。


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