Hercules


2014年10月25日(土)「ヘラクレス」

HERCULES・2014・米・1時間39分(IMDbでは98分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、樋口武志/シネスコ・サイズ(マスク上映、デジタル、ALEXA)/ドルビーATMOS、DATASAT(IMDbではドルビー・デジタル、SDDSも)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.hercules-movie.jp
(全国の劇場リストもあり。クッキーをオンにしないと見られない)

紀元前358年。ギリシャの東部に位置するトラキアのコテュス王(ジョン・ハート)は、妖術を使う無敵の戦士レーソス(トビアス・ザンテルマン)率いる反乱軍から国を守るため、娘のユージニア(レベッカ・ファーガソン)を使って、半分人間、半分神と言われる伝説の英雄ヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)率いる傭兵軍団を雇う。そして国が襲われる前に先手を打つため、農民たちへの戦闘トレーニングもそこそこに、隣国のベッシ族の土地へと進軍する。


73点

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 いかにもハリウッド・スタイルの歴史アクション大作といった感じ。ギリシャの話なのに全員が英語をしゃべっているし。しかしアクションとしてよくまとまっていて、ハリウッド・パターンの展開なのに、ハラハラドキドキさせると、ちゃんと感動もさせて、大どんでん返しもある。意外と先は読めないが、落ち着くべきところへ、やや強引に着地する。勧善懲悪、痛快、爽快。頭を空っぽにして楽しめる。

 何より面白かったのは、伝説をベースにしていながら、それを見間違いや大げさにしたことによって、実際に起きたことが伝説化したのだという立場で、それとなく説明しながらありそうな話として展開していくこと。主人公たちは傭兵で、お金によって誰のためにも働くが、そのために伝説を利用したというわけだ。だからヘラクレスが半分人間で半分神というのも、あえて否定はしないが、肯定はしていない。ケンタウロスも、実は馬に乗った戦士が霧のおかげでそう見えたのであり、ケルベロスも頭が3つある番犬ではなく、3頭の犬が1つにつながれていたので暗闇と恐怖でそう見えてしまったと。

 お話の構成としては、これは「荒野の七人」(The Magnificent Seven・1960・米)つまり「七人の侍」(1954・日)ではないだろうか。だから面白い。メキシコの貧しい村がギリシャのトラキアで、攻めてくる野伏がレーソスの一味。ヘラクレスが率いる傭兵グループは6人だが、それぞれ技を持ったスペシャリスト。ひとりが途中で離脱してしまうが、決戦の最中に戻ってきて一緒に戦う。だからヘラクレスはユル・ブリンナーが演じたクリス、つまり勘兵衛で、戦略家アウトリュコスは投げナイフを使っていたから、ジェームズ・コバーンが演じたブリット、つまり久蔵。弓の名人の女戦士アタランテは勘兵衛が入っているだろう。槍を使う預言者のアムビアラオスは加東大介が演じた七次郎、子供に同情心を見せる野獣のような男テュデウスは、チャールズ・ブロンソンが演じたオライリーで、語り部(ストーリー・テラー)のイオラオスは、オリジナル版の勝四郎と菊千代をあわせたようなチコ。もちろん人数違うのでいろいなキャラクターが混じっていたりもするのだが、農民たちを戦士にするためトレーニングするシーンまであるのだ。この時の傭兵たちのスピーチが「正義のために戦って死ねば、あの世で幸せに暮らせる」とかというようなもので、なんだか現代の自爆テロを煽る言葉のようで恐ろしいが。

 グループのリーダー、力自慢のヘラクレス英語ではハーキュリースは、ドウェイン・ジョンソン。プロレスラー出身だが、すっかりハリウッド・スターという感じ。「ワイルド・スピード EURO MISSION」(Furious 6・2013・米)シリーズの特殊部隊の男や、自身が製作も務めた「オーバードライブ」(Snitch・2013・米)の戦う男などがピッタリのイメージ。本作は「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」(The Mummy Returns・2001・米)系のイメージだろう。ボクとしては「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)的な、特殊部隊や戦う男の方向で活躍して欲しい。

 戦略家で短剣の名手アウトリュコスはルーファス・シーウェル。悪役の多い人で、タイトルのせいであやうく見ないところだった「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)や「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・米/チェコ)はすばらしかった。その後パッとしない感じだったが、本作はなかなか重要な役。敵でも良かった気はするものの、それだと出番が少なかったかも。もっと活躍して欲しい気がする。

 弓名人の女戦士アタランテはノルウェー出身の美女、イングリッド・ボルゾ・ベルダル。フィンランドのTVや映画で活躍し、その後ハリウッドへ進出したものの、いずれも日本では劇場未公開。アクションも行けるようなので、今後に期待したい。なんでもリメイク版のSFアクション「Westworld」に出ているらしい。

 槍名人の預言者アムピアラオスはイアン・マクシェーン。1970年代からイギリスのTVや映画に出演している人で、やっぱり悪役が多く、モーゼル・ミリタリーがすばらしかった「電撃脱走・地獄のターゲット」(Sitting Target・1972・英/米)や、割りと最近だとSFファンタジー「光の六つのしるし」(The Seeker: The Dark Is Rising・2007・米)なんかでいい味を出している。つい最近出は「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」(Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides・2011・米)の黒ひげ、残念な「スノーホワイト」(Snow White and the Huntsman・2012・米)や残念な「ジャックと天空の巨人」(Jack the Giant Slayer・2013・米)に出ている。

 言葉を話さず野獣のように戦うが子供には人気があるテュデウスは、ノルウェー出身のアクセル・ヘニー。日本で劇場公開された「ヘッドハンター」(Hodejegerne・2011・ノルウェーほか)や「パイオニア」(Pioneer・2013・ノルウェーほか)に出ているそうだが、小劇場限定公開で見ていない。

 若きストーリー・テラーでヘラクレスの甥のイオラオスはリース・リッチー。TVから映画に進み、今は両方出ている感じ。日本で劇場公開されたものでは、どちらもちょっと残念な「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)や「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」(Prince of Persia: The Sands of Time・2010・米)がある。

 トラキアの王コテュスは名優ジョン・ハート。古くは「エイリアン」(Alien・1979・米/英)のケインが印象的だった。話題作「エレファント・マン」(The Elephant Man・1980・米/英)や世紀の問題作「天国の門」(Heaven's Gate・1981・米)にも出ていて、最近だと「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」(Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 1・2010・英/米)シリーズのオリバンダー老人が有名だろうか。史劇的なものだと「インモータルズ -神々の戦い-」(Immortals・2011・米)にゼウスで出ていて、つい最近はSFアクションの「スノーピアサー」(Snowpiercer・2013・韓/チェコ/米/仏)に出ていた。1940年生れだから74歳か。がんばるなあ。

 ほんのチョイ役なのにアテネの王エウリュステウスはジョセフ・ファインズ。注目されたのは「恋におちたシェイクスピア」(Shakespeare in Love・1998・米)。戦争映画「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2000・米/独ほか)も良かった。最近はTVが多いようで、「フラッシュフォワード」(FlashForward・2009〜2010・米)はビックリだった。

 原作はスティーヴ・ムーアのラディカル・コミック「ハーキュリーズ」。脚本はライアン・J・コンダルとエヴァン・スピリオトポウロスの2人。ライアン・J・コンダルは短編の脚本とTVのクリエーターを務めた後、本作で劇場長編映画の脚本家デビュー。エヴァン・スピリオトポウロスは日本劇場未公開のアニメ作品の脚本を担当。そこから本作につながるか?!

 監督はプロデューサーでもあるヒット・メーカー、ブレット・ラトナー。有名なのはジャッキー・チェンを一気にハリウッド・スターにのし上げた「ラッシュアワー」(Rush Hour・1998・米)。その後ヒット・シリーズの「X-MEN:ファイナル ディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・加/米/英)も手掛け、最近ではベン・スティラーの詐欺コメディ「ペントハウス」(Tower Heist・2011・米)を監督している。そして監督の2倍近くもプロデュースをしている。つい最近クリント・イーストウッド監督の「ジャージー・ボーイズ」(Jersey Boys・2014・米)の製作総指揮を担当している。本作の撮影監督のダンテ・スピノッティとは監督作品でよく仕事をしている。

 あちこちに3Dを意識したらしいカットもあったが、この映画に3Dなんて必要だったのだろうか。安易な金設け主義の3Dが多いなあ、という印象。

 ラストは3Dっぽいアニメになってエンド・クレジット。これはなかなかシャレていた。そのあとようやくタイトルが出る。ところで、結構前半で取り上げていたそもそものきっかけとなるトラキアのコテュス王の娘、ユージニア(レベッカ・ファーガソン)とその息子のアリウス(アイザック・アンドリュース)はどうしたんだろう。大団円の後はほったらかしかい。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。100円くらい高くても、劇場までの往復電車賃を考えたら安上がり。夜中でも好きな時に予約ができる。ただ、どの席が見やすいかは想像するしかない。で当日は10分前くらいに開場。意外と若い人から中高年まで幅広かった。もちろんメインは中高年。女性は20人いて4〜5人というところ。最終的には157席に3割りくらいの入り。こういう史劇的ファンタジーは日本では難しいかも。レニー・ハーリンの「ザ・ヘラクレス」(The Legend of Hercules・2014・米)はどうだったんだろう。IMDbでは4.2点という非常に厳しい評価だが。

 気になった予告編派は……上下マスクの「エクソダス」は、リドリー・スコット監督で、モーゼとラムセスという対立する2人の男ということは、やっぱりラストはまた1対1の対決になるのではないだろうか。1/30公開。

 上下マスクの「パワー・ゲーム」はハリソン・フォード(坊主頭!)、ゲイリー・オールドマンという顔合わせの企業乗っ取りドラマらしいが、FBIも出てきて銃も登場するようだ。11/15公開。

 上下マスクの「ミュータント・タートルズ」は、また、あのマイケル・ベイ得意のリメイク版。いままでの多くの彼のリメイク版通りまた酷いのか。リメイクなのに、ニュー・ヒーローって言ってたけど、それで良いのか? 先生! 2/7公開。

 枠付きの「映画泥棒」のあと、ビスタ・サイズのまま上下マスクでシネスコ・サイズ上映。これって正しいのか? 本来なら左右に広げて、アナモフィック・レンズで上映しなければならないのでは? ひょっとして、デジタルがメインになって、フィルムのプリントがアナモフィックになっていないとか……。うむむ。


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