The Equalizer


2014年10月26日(日)「イコライザー」

THE EQUALIZER・2014・米・2時間12分

日本語字幕:黒フチ丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri、ALEXA)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.equalizer.jp
(全国の劇場リストもあり)

アメリカ、ボストンのホームセンターで働くロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、決まった時間に起きて出勤し、決まった時間に帰宅する規則正しい生活を送り、すべてのものをキチンと並べて置く潔癖症。アパートに家具はほとんど無く、1人で暮らしていた。しかし不眠症で、深夜に近所の「ブリッジ・ダイナー」で本を読むのが日課になっていた。そんなある日、ダイナーで娼婦のテリー(本名はアリース、クロエ・グレース・モレッツ)と出会い、ロシアン・マフィアによって働かされていることを知る。そして、彼女がダイナーに来なかった日、激しい暴力を受けて入院したことを知ると、ボスのスラヴィ(デヴィッド・ムニエ)のところへ、現金9,800ドルを持って彼女を自由にしろと談判に行く。


76点

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 さすが132分あるので、じっくりと描いている。平和で何も事件が起きないありふれた日常の繰り返し。それが、かわいそうな少女に関わったことから、とんでもない巨大犯罪組織との全面戦争状態へ雪崩を打って行く。しかもこちらはたった1人。ただし超人的なワンマン・アーミーで、それとなく正体も明らかになっていく。凄い映画。バイオレンス描写も半端ではなく、かなりリアルで残酷だ。

 単なる残酷ショーにならないように、その前をじっくりと描いているわけだ。だから悪役が重要。とんでなく悪いヤツ。悪魔のように徹底的に悪い。そしてかなり怖い。さすがにアントワン・フークワ監督作品だけあって、あまいアクションものではない。むしろダーク。荒唐無稽なのは主人公の設定だけで、あとはすべて現実的。いかにもありそうな話。

 冒頭にマーク・トウェインの言葉が出る。「人生で大切な時は、自分が生まれた時と、自分が生まれた理由がかわかった時」(正確ではないが、そんな内容)。主人公は「皆がなりたいものになれる」と言う。皆に手助けしてやる。過去は酷いことをやっていたらしい。そして悪党たちはみな彼に「お前は誰だ」と聞く。彼は答えない。「償え」というだけ。

 原作があって、「ザ・シークレット・ハンター」(The Equalizer・1985〜1989・米)というTVドラマらしい。本作でちょっと興味がわいた。見てみたい。

 ただ、気になったのは、職場のホームセンターでアレだけの大騒ぎをして、事件後も同じ町に住んで、同じ職場にいるらしいこと。エピローグで助けてもらったテリーが彼を訪ねてくる。ここだけファンタジーか。

 主人公のロバート・マッコールが使う腕時計はスントのコア・オール・ブラック。銃は、テリーを連れ戻しに来るロシアン・マフィアがP226。スラヴィが事務所の引き出しにしまう時ちらっと写るのがガバメントのグリップに彫刻が入ったカスタム。部下はグロック。アイリッシュのマフィア、リトル・ジョンが使うのはシルバーのローマンっぽい2インチ・リボルバー。ホーム・マートのレジを襲うコートの男は.380のコンパクト・オートのような銃。工場で見張りの男たちが使っていたのはVz61スコーピオンやAK、水平二連ショットガン、スプリングフィールドXD。ほかにマグプルのパーツをつけたM4、G36C、UMP、HK416もあったような。MP5はサウンド・サプレッサー付きやイオテック付きのものもあった。

 キー・アーマラーはデヴィッド・フェンクル。キャスリン・ビゲロー監督の「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)や「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)でリアルで最先端の兵器類をそろえた人。「L.A. ギャング ストーリー」(Gangster Squad・2013・米)ではクラシックな銃器もそろえている。そういえば、本作でもカスタム・ガバメントがちらりと出てくるが「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)でも栗林中将に贈られたガバメントのプレゼンテーション・モデルが出ていたっけ。傑作アクション「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)でデンゼル・ワシントンと仕事をしている。

 ロバート・マッコールはデンゼル・ワシントン。最初はそうでもなかったが、最近はアクションものが多い気がする。本作の監督アントワン・フークワとは「トレーニングデイ」(Training Day・2001・米/豪)で仕事をしているが、悪役を演じたものは概して良くない気がする(IMDbでの評価は高く、アカデミー主演男優賞を受賞しているが)。「マイ・ボディガード」や「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)、「デジャヴ」(Deja Vu・2006・米/英)はとても良かった。最近は1本おきに良いもの(アクション)と残念なものが公開されている感じ。本作は製作も兼務。

 あまり出番が多くなく、最初と最後に出てくるだけの娼婦テリーはクロエ・グレース・モレッツ。「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)以降、あまり良い作品に恵まれていない気がするが、本作は良かったのでは。

 怖いロシアン・マフィアの始末人テディは、ちょっとケヴィン・スペイシー似のマートン・ソーカス。ニュージーランド出身で、残念なSFアクション「イーオン・フラックス」(AEon Flux・2005・米)などの悪役は印象に残ったが、ちょっと作品に恵まれていなかった感じ。最近は「ノア 約束の舟」(Noah・2014・米)に出ていたらしいが、ひげ面の男ばかりでわからなかった。「アメイジング・スパイダーマン2」(The Amazing Spider-Man 2・2014・米)にもドクター・カフカ役で出ていたと。本作の怖さから行くと、もっと活躍しても良いのでは。今後が楽しみだが、すでに50歳近い。どんどん出て欲しい。

 脚本はリチャード・ウェンク。面白かった「16ブロック」(16 Blocks・2006・独/米)や、リメイク版の「メカニック」(The Mechanic・2011・米)、「エクスペンダブルズ2」(The Expendables 2・2012・米)などを書いている人。アクションがうまい人のようだ。

 監督はアントワーン・フークワ。チョウ・ユンファの「リプレイスメント・キラー」(The Replacement Killers・1998・米)を監督した人で、特殊部隊の人質救出作戦を描いた「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)や「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)は抜群に良かった。悪徳警官を描いた「トレーニングデイ」でデンゼル・ワシントンにアカデミー主演男優賞をもたらしいてるが、作品としてはどうなんだろう。最近は「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)や「エンド・オブ・ホワイトハウス」(Olympus Has Fallen・2013・米)で今ひとつの感じも。

 ソニーの映画だけに使っていたのはVAIOノート。もちろんモニターもソニー製。主人公は銃弾による傷口には高純度のハチミツを暖めて塗っていたが良いのだろうか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は10分前くらいに開場。ほとんど中高年で、若い人は少し。女性は20人いて2人くらい。最終的には287席に6.5割りくらいの入り。まあまあというところか。

 気になった予告編は……基本モノクロで部分カラーの「シン・シティ 復讐の女神」はヒット作の続編。ついに作られるか。面白そう。お久しぶりのジェシカ・アルバにレディガガも出ていた。ほとんどオール・スター・キャスト状態。すごいなあ。1月公開。

 上下マスクの「バンクーバーの朝日」はフジテレビだったか。面白そうだが、国外ロケということでか、どこか浮いている感じが……。TV風で作り物っぽいなあと。12/20公開。

 上下マスクの「ANNIEアニー」は新予告に。どうして白人の物語を黒人主役でリメイクするんだろう。もともと黒人の話なんだろうか。黒人主役のオリジナル・ミュージカルを作ればいいのに。1/24公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになって本編へ。


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