Dracula Untold


2014年11月1日(土)「ドラキュラZERO」

DRACULA UNTOLD・2014・米・1時間32分

日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク上映、レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビー・デジタルEX)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://dracula-zero.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1442年、大きな勢力を持っていたオスマン帝国は、小国のトランシルヴァニアに対して征服する替わり1,000人の少年を差し出すように命じた。その時、王の息子であるヴラドも人質として差し出され、殺人マシーンとして訓練されると戦士として能力を発揮し、残虐さから「串刺し公(ヴラド・ツェペシュ)」とあだ名されるほど活躍した。そしてトランシルヴァニアに帰国すると、王となりドラキュラ城の城主となった。年月が流れ、妻のミレナ(サラ・ガドン)と息子のインゲラス(アート・パーキンソン)と幸せに暮らしていたが、ある日、オスマン帝国の斥候のヘルメットが川で発見される。ヴラド王(ルーク・エヴァンス)は、斥候の後には必ず大軍が送り込まれてくると、川の上流にある「牙の山」へ偵察に向かう。ところが、そこに人影は無く、山頂近くの洞窟の中に、多数の人骨の破片が発見された。そしてそこには噂どおり魔物が棲んでいた。


72点

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 ブラム・ストーカーの小説の「ドラキュラ」ではなく、史実としての串刺し公の話をベースとして、「ドラキュラ伝説」的な物語を作り上げている。その点は興味深いが、話は王が国のため、そして家族のために犠牲となってドラキュラに魂を売る話で、それによって敵国のみならず国民や臣下からも恐れられ、まったくかわいそうな話になっている。怖いとか、ファンタジーというより、大いなる悲劇。吸血鬼ものを期待するとちょっと違う。

 敵も徹底的に憎たらしく良い感じなのだが、それより何より、美しい妻が夫に掛けるプレッシャーが半端ない。息子1人ではなく1,000人もの少年を指し出せと言われていて、戦争を避けるためにはそれに従うしかないのに、息子だけを助けようとして「結婚した時、私と子供を守ると誓った」と責めたてる。もうヒステリーにも近い。そこで主人公は魔物と契約を結び、3日間限定で魔物の力を得て、オスマン帝国の先鋒を撃退するが、その3日間、人間の血を飲みたくなるがそれに耐えれば人間に戻ることができると言われているのに、オスマン帝国が進軍してきたため期限ギリギリにも関わらず自分の血を飲めと夫をそそのかすのだ。これでは主人公は吸血鬼になるしかないではないか。他の誰も相談にのってくれないし、誰も助けてくれない。あまりにかわいそう。これだけが印象に残る。

 基本、トランシルヴァニアは英語だが、オスマン帝国は何かわからない言葉を使っていたのは良かった。物語は現代のニューヨークで終わるが、続編は難しい気がする。あの酷い妻そっくりの女も登場するものの……。

 ヴラド王はルーク・エヴァンス。イギリス出身で、残念な「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」(The Three Musketeers・2011・独/仏/英/仏)でアラミスを演じていた人。ジェイソン・ステイサムの「ブリッツ」(Blitz・2011・英/仏/米)なんかにも出ているが、雰囲気的には中世的な世界観が似合っている感じ。「推理作家ポー 最期の5日間」(The Raven・2012・米/西ほか)では事件解決に挑む刑事を演じていた。人気シリーズ「ワイルド・スピードEURO MISSION」(Furious 6・20123・米)では元SASのギャングのボスだった。たぶんもっとも有名なのが「ホビット 竜に奪われた王国」(The Hobbit: The Desolation of Smaug・2013・米/ニュージーランド)だろうか。本作では見事なデザインのドラゴンをモチーフとした甲冑を身に付いていた。

 美人だけれど自分と子供のことしか考えない妻のミレナはサラ・ガドン。カナダ出身で、TVから、見ていないがデヴィッド・クローネンバーグ監督の「危険なメソッド」(A Dangerous Method・2011・英/独ほか)あたりから映画に出るようになったらしい。ミステリー・ホラーの「モスダイアリー」(The Moth Diaries・2011・加/アイルランド)で大きな役を演じたようだが、これまた見ていない。「複製された男」(Enemy・2013・)では妊婦姿でヌードも披露していたが、作品のできが……。たぶん本作がメジャーな作品ということになるのではないだろうか。あまり良い役ではないが。

 オスマン帝国の皇帝メフメト2世はイギリス出身のドミニク・クーパー。楽しいミュージカル・コメディの「マンマ・ミーア!」(Mamma Mia!・2008・米/英/独)で主人公のフィアンセを演じていた人。小劇場公開で見ていないが「デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-」(The Devil's Double・2011・ベルギー/オランダ)でフセインを演じ高く評価されたらしい。最近作は残念な「ニード・フォー・スピード」(Need for Speed・2014・米/フィリピンほか)の悪役。

 脚本はマット・サザマとバーク・シャープレスの2人。マット・サザマは本作が初めての脚本らしい。バーク・シャープレスは同様。新作“Gods of Egypt”でも共同で脚本を書くらしい。どうなんだろう。

 監督はアイルランド出身のゲイリー・ショア。CMの監督から、架空映画の予告編を作る企画で監督した作品が高く評価され、本作につながったらしい。ただ本作では実力のほどは良くわからない。契約ではあと2本撮れるらしい。はたして……。

 本作もビスタ・サイズの上下マスクで上映。画面が小さい。アナモフィック・レンズを使っていない。ということは、デジタルではなくフィルム上映で、プリントがそうなっていたということだろうか。うむむ……。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに開場。1日は映画の日ということで、入場料金が1,000円均一とか。当然大混乱。安けりゃこんな人が来るんだ。いつも映画を見ているほうからすると迷惑だけど。観客層は20代くらいから中高年まで幅広い。もちろんメインは中高年。女性は17〜18人いて3人くらいの割合。最終的には232席に8割りくらいの入り。映画の日なので混んでいるが……。

 気になった予告編は…… なんだかSM映画のようなのにラブ・ストーリーとか言っている「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」はどうなんだろう。オシャレっぽくすれば何でもOK? バレンタイン・デーに合わせて2/13公開。


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