La belle et la bete


2014年11月2日(日)「美女と野獣」

LA BELLE ET LA BETE・2014・仏/独・1時間53分(IMDbでは112分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、丸山垂穂/シネスコ・サイズ(デジタル、SONY F65 )/音響表記無し

(独6指定)

公式サイト
http://beauty-beast.gaga.ne.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

むかしフランスに、妻を失ったが、3人の息子と3人の娘に恵まれた裕福な商人の一家があった。ところがある日、全財産を掛けた3隻の帆船が宝や商品を満載してフランスに戻る途中で嵐にあい沈没、すべてを失ってしまう。大きな借金を抱えた一家は家財を売り払い、お屋敷も手放して、田舎の小さな家で暮らすことになる。そして父(アンドレ・デュソリエ)は町で、借金で長男のマキシム(ニコラ・ゴブ)を探しているヤグザものに見つかり追われ、森の中に逃げ込み道に迷ってしまう。やがて風吹になり遭難しかけた時、荒れ果てた城を見つけ避難すると、中には人気がなかったものの明かりがともり、料理も用入れていた。空腹を満たし、置かれていた宝石など高価なものを袋に入れ城を出ようとした時、庭に咲いていた赤いバラを1輪、末娘のベル(レア・セドゥ)のために手折ってしまう。すると恐ろしい野獣が現れ、一番大切なものを盗んだ罰として、この城で一生暮らせという。そして1日だけやるから、家族に別れを告げてこいと言われる。もし戻らなければ家族全員を殺すと。話を聞いた家族は最初は信じなかったが、持ち帰った宝物が本物だったことから、バラを欲しがっていたベルは自分のせいだと考え、自分が身代わりに城へと行くことにする。


82点

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 IMDbではわずかに6.5点。アメリカ人受けは良くなかったようだが、ボクは面白かった。堪能した。もともとフランスの昔話で、アクション映画などできたない英語ばかり聞いていた耳には、フランス語が新鮮で心地よく聞こえた。しかも、デジタルの高画質で、クリアな音響。絵作りに凝っていて、短いカットも考えつくされていて、大変お金がかかっている印象。実に見るべき絵がたくさんちりばめられている。もちろん主人公たるベルは魅力的な美女。

 物語は、堂々たる「おとぎ話」。正統派の作り。「むかし、むかし……」とお母さんが子供に聞かせるお話として始まって、「そして幸せに暮らしました」と結ぶ。おとぎ話の姉妹といえば、たいてい3人姉妹で、上2人はわがままだったり、放蕩者だったりで、末っ子が賢く、良くできた子で、虐げられていたりする。そして、(もう1人の)主人公はやってはいけないということをやり、大切なものを失う。森に棲む鹿という存在は宮崎アニメの「もののけ姫」(1997・日)でも神のような存在だった。そういった存在が人間と暮らすというのも、「人魚姫」や「鶴の恩返し」、「雪おんな」などにある。そして「オルフェ」(Orpheus・1950・仏)のように「振り返ってはいけない」とか「見るな」という約束ごとを破って物語が動く。敵は強欲な者共。欲に駆られたために身を滅ぼす。つまり、この物語には「おとぎ話」の要素、定石がたくさん盛り込んで作られているのだ。

 まあ、これがイヤだと言う人もいるだろう。定石過ぎると。過去から何回語られてきたんだと。そしてディズニーの傑作アニメ「美女と野獣」(Beauty and the Beast・1991・米)など、何度も映画化されているのにと(当のフランスもジャン・コクトー監督、ジャン・マレー主演で1946年に映画化している)。だからアメリカでは評価が低かったのかも。しかし「おとぎ話」は定番であって、話してもらう子供たちも、充分良く知っている話を何回も親にせがんで聞くのだ。ボクは子供になったような気持ちで、定番の話を楽しむことができた。しかも実写でありながら、想像力を失うことなく。

 ベルはレア・セドゥ。1985年生れというからなんと29歳! とてもそんなに見えない。どこかで見たなあと思ったら、戦争映画の「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)に、大きな役ではないが出ていたらしい。またラッセル・クロウ主演、リドリー・スコット監督の「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)や、トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米/アラブ首長国連邦/チェコ)にも出ている。最近作は見ていないが「グランド・ブダペスト・ホテル」(The Grand Budapest Hotel・2014・米/独/英)。

 野獣はヴァンサン・カッセル。やはり注目したのは強烈なアクションの「ドーベルマン」(Dobermann・1997・仏)から。以来、たくさんの作品に出ている。最近作は催眠療法を使ったミステリー、ダニー・ボイル監督の「トランス」(Trance・2013・英/仏)。悪役が多いが、うまい。奥さんは美人女優のモニカ・ベルッチ。

 脚本は、監督のクリストフ・ガンズとサンドラ・ヴォ=アン。サンドラ・ヴォ=アンはどうも本作が初めての脚本らしい。女性らしさを取り入れたかったのだろうか。

 監督は脚本も兼ねたクリストフ・ガンズ。一ノ瀬隆重の製作総指揮によるオムニバス・ホラー「ネクロノミカン」(Necronomicon・1993・仏/米)の第1話で劇場長編映画の監督デビュー。続く「クライング・フリーマン」(Crying Freeman・1996・加/仏/日/米)はコミックを原作にした、ほとんど日本映画のような感じの壮絶アクション。「ジェヴォーダンの獣」(Le pacte des loups・2001・仏)は過激なクラシック・ホラー・ミステリー。そしてこれまた強烈なホラー「サイレントヒル」(Silent Hill・2006・加/仏/日/米)は日本のゲームが原作。と、かなり日本とのつながりが多い。ホラーをしっかり描ける監督は実力があるというのはボクの持論だが、やっぱりうまいと思う。

 本作は美術も衣装も素晴らしい。プロダクション・デザインはティエリー・フラマンで、ヴァンサン・カッセルが出たミステリー「クリムゾン・リバー」(Les rivieres pourpres・2000・仏)なども手掛けている。衣装は 画面のトーンも工夫されていて、初めてベルの父がお城を訪ねる時はモノトーンなのに、バラだけが鮮やかに色付けられており、次第に色が付いていってベルが出ると色鮮やかになるという演出。見事! 映画は絵だよなあ。

 意外に銃も出てきて、酒場のようなところのバーテンのような男がベルの父親を助ける時、フリント・ロックらしいラッパ銃のようなものを使う。また農家で兄弟が野獣から家を守るためにライフルか長いフリント・ロックを持ち出す。さらに、ラスト、城に侵入した悪党どもがパーカッション・ピストルっぽいものやフリント・ロックっぽいものをぶっ放す。連射していたような気もしたが、単発のはず。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は小学校高学年くらいを連れたファミリーから若い人、そして中高年までいたが、中年層が多かった印象。男女比は3対7くらいで女性が2倍以上。まあ納得か。最終的には232席に5.5割りほどの入り。これは少な過ぎ。もっと入っても良い映画。たぶん昨日が映画の日だった反動ではないだろうか。みんな昨日に集中したと。

 気になった予告編は…… 「娚の一生」は大ヒットコミックの映画化らしい。最近この手の作品が多い。おじさんと若い女の子のラブ・ストーリー? 豊川悦司と榮倉奈々の顔合わせ。2/14公開。

 「繕い裁つ人」は、なんだかもったいつけて偉そうな仕立屋の女の話らしい。セリフが上からで、何様だって感じが……。予告だからわからないのに、嫌な感じ。1/31公開。

 上下マスクの「ベイマックス」は新予告に。まるで実写のようにリアルなCGアニメ。i本とアメリカが合体したような世界観。敵はカブキ? 鯉のぼりなんかも出てくるみたい。なんだか予告だけで泣きそう。12/20公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになって本編へ。



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