Sabotage


2014年11月9日(日)「サボタージュ」

SABOTAGE・2014・米・1時間49分

日本語字幕:フチ付き丸ゴシック体下、岡田壮平/ビスタ・サイズ(1.66で上映。IMDbでは1.85、デジタル、Arri ALEXA )/ドルビー・デジタル、dts

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.sabotage-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

アメリカ麻薬取締局(DEA)の特殊部隊リーダー、“ブリーチャー”ジョン・ウォートン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、国内外で数々の功績を挙げてきた伝説の捜査官。ある日、メキシコの麻薬組織によって妻と息子をさらわれ、惨殺されてしまう。8ヶ月後、現場に復帰した“ブリーチャー”はチームとともにカルテルのアジトを急襲、莫大な現金を押収すると、1,000万ドルだけ抜き取って下水に隠し残りを爆破する。ところがあとで現金を回収に行くとそれがなくなっている。しかもこの事件でFBIも捜査していたことから、1,000万ドルが無くなっていることがバレ、チームが疑われることになる。そんな中、チームのメンバーが1ずつ惨殺されてく。はたして犯人は誰なのか、DEAの他に、アトランタ警察も動き出す。


73点

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 特殊部隊の話で、トレーニングから、実際の任務までをベースに、猟奇的な殺人事件が描かれていくので、ほとんどがアクション・シーン。ルーム・クリアなどもじっくり、リアルに描かれている。セリフも「クリア」「ムービング」「○○ダウン」など、この手の映画にしてはかなりリアル。たぶん俳優たちは実際のタクティカル・トレーニングを受けているのだろう。そして監督もそれを理解しているから、リアルな撮り方ができている。銃撃シーンはかなり怖い。

 しかも暴力表現がかなりリアルで残酷。血も大量に流れ、鮮血から徐々に黒くなっていくところまで描かれている。顔に銃弾による穴が開き、血があふれ出してくる。気の弱い人は見ない方がいいかもしれない。

 特殊部隊の任務のきつさは良く描かれている。いつ任務で命を落とすかも分からない。トレーニングに明け暮れ、次第に暴力的になって、精神的にも支障を来してくる。一歩間違えば取り締まられる側になってしまいそうな危うさ。それでいて、一緒に戦う仲間とは命を託すことから家族以上の深い絆ができている。これもハリウッド的なステレオタイプの理解の仕方なのかもしれないが。

 描き方はリアルで衝撃的なのに、物語としてはオチがいかにも弱く衝撃がない。当たり前というか、普通。驚きもない代わり、なぜ真犯人が彼らなのかもよくよわからない。描写は説得力があるのに、展開に説得力がない。これが惜しい。IMDbでは5.8点と低評価。

 当然、主要キャストはタクティカルのトレーニングを受けているのだろう。なかなかサマになっていた。ウェポン・アーマラーはスティーヴ・カーンズ。主にTVで活躍している人で、特殊部隊の活躍を描いた「ザ・ユニット 米軍極秘部隊」(The Unit・2006-2009・米)などを担当し、劇場映画は「バイオハザード IV アフターライフ」(Resident Evil: Afterlife・2010・独/仏ほか)や、SF戦争映画「世界侵略:ロサンゼルス決戦」(Battle Los Angeles・2011・米)などを手掛けている。本編中、キル・ハウスでのルーム・クリア・トレーニングを見せてくれる。

 DEAの隊員が使っていたのは、M4、SCAR、ベネリM4、MP5、ハンドガンはグロック(ライトを使ったクロス・テクニックも見せてくれる)。女刑事もグロック。麻薬組織はAK。ラストのメキシコのバーでの撃ち合いではギャングがSWのM629カスタム、ブリーチャーがキンバーの1911カスタムを使う。マガジン・チェンジも見せてくれる。他にS&WのM19のような2.5インチ・リボルバーも出てくる。スナイパー・ライフルもあったが、種類はわからなかった。他と違うのは、特に室内など銃声がキンという甲高い音を含むこと。実にリアル。

 装備品は統一されていて、エンド・レジットで5.11タクティカルと出た。

 隊長のジョン“ブリーチャー”ウォートンはアーノルド・シュワルツェネッガー。映画界に復帰した途端に出まくり。州知事時代は銃器規制を進めた割に、ほとんど銃が出てくる映画ばっかり。「大脱出」(Escape Plan・2013・米)と「エクスペンデブルズ3ワールド・ミッション」(The Expendables 3・2014・米/仏)はどちらもシルヴェスター・スタローン作品だ。快調復帰は彼のおかげか。

 片腕っぽいジェームズ“モンスター”マーレイはサム・ワーシントン。「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)シリーズはかなり残念だったが、この後も大ヒット作の「アバター」(Avatar・2009・米/英)の続編が3本ほど作られるらしく、新作にもたくさん出ていて心配なさそう。

 モンスターの妻のリジー・マーフィはミレイユ・イーノス。いやあ、きついメイクのせいもあるのだろうが、まさに男社会をひとりで同等に生き抜いて行く強い女というイメージそのもの。強烈だ。素晴らしい。1994年からTVに出始めたらしいが、2010年くらいまで、「CSI:マイアミ6」(CSI: Miami・2008・米)や「ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間」(Lie to Me・2009・米)、「LAW & ORDER クリミナル・インテント」(Law & Order: Criminal Intent・2009・米)など人気ドラマに良く出ている。劇場映画は「L.A. ギャング ストーリー」(Gangster Squad・2013・米)や「ワールド・ウォー Z」(World War Z・2013・米/マルタ)などに出ている。

 隊員ジュリアス“シュガー”エドモンズはテレンス・ハワード。あまりアクションのイメージが無く、むしろ弁護士的な感じだが、本作を見ると、アクションも行けるようだ。TVの「LAW & ORDER: LA」(Law & Order: Los Angeles・2010-2011・米)では保安官を演じていた。最近の映画では「大統領の執事の涙」(The Butler・2013・米)や「プリズナーズ」(Prisoners・2013・米)に出ている。

 隊員トム“パイロ”ロバーツはマックス・マーティーニ。「ザ・ユニット 米軍極秘部隊」に出ていた人で、イメージはピッタリ。映画ではSFロボット・アクションの「パシフィック・リム」(Pacific Rim・2013・米)や実話の映画化「キャプテン・フィリップス」(Captain Phillips・2013・米)では再び特殊部隊シールズの隊長を演じている。

 隊員のエディ“ネック”ジョーダンはジョシュ・ホロウェイ。話題のTVドラマ「LOST」(Lost・2004-2010・米)の悪役ソーヤーのイメージが強過ぎて、良い人に見えない。映画ではトム・クルーズの「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米/アラブ首長国連邦/チェコ)、つい最近「パワー・ゲーム」(Paranoia・2013・米/仏)では怪しげな男、実はFBI捜査官を演じていた。

 大男でバイク乗りの隊員ジョー“グラインダー”フィリップスはジョー・マンガニエロ。二枚目だが、髪形とヒゲで暴走族にしか見えない。やっぱりTVがメインの人で、NY、マアイミ、本家とあちこちの「CSI」に出ている。映画ではサム・ライミ版の「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)と「スパイダーマン3」(Spider-Man 3・2007・米)に同じ役で出ていて、最近だと見ていないが男性ストリッパーを描いたチャニング・テイタムの「マジック・マイク」(Magic Mike・2012・米)に出ているらしい。

 隊員のブライス“トライポッド”マクニーリーはミリタリー・コンサルタントも兼ねるケヴィン・ヴァンス。本作の後ブラッド・ピットの新作「フューリー」(Fury・2014・英/中/米)に出ているらしい。本作の監督の前作「エンド・オブ・ウォッチ」(End of Watch・2012・米)でICEのエージェントを演じていたらしい。

 同じく隊員の“スモーク”ジェニングスはマーク・シュレーゲル。「エンド・オブ・ウォッチ」でテクニカル・アドバイザーとして参加しているらしい。リアルな警官の雰囲気はこの人のおかげだったか。本作ではスペシャル・サンクスにリストされている。

 たぶん、こういった2人の本物が混じることによって、チーム全体のレベルが引っ張られるとともに、それらしく見えるということなのだろう。監督はおそらくそこを狙ったのだろう。

 アトランタ警察の女性刑事キャロラインはオリヴィア・ウィリアムズ。イギリスの女優さんで、古くはケヴィン・コスナーの「ポストマン」(The Postman・1997・米)、M・ナイト・シャマラン唯一の傑作「シックス・センス」(The Sixth Sense・1999・米)などに出ていて、最近は少女殺し屋の「ハンナ」(Hanna・2011・米/英/独)以降、なんだか芸術路線に行ってしまったような雰囲気が、本作で戻ってきたか。

 同僚の黒人刑事ジャクソンはハロルド・ペリノー。「LOST」の裏切り者的マイケルを演じていた人。やっぱりそのイメージが強いので、刑事はどうかなあという感じ。ニコライ・ケイジの「ハングリー・ラビット」(Seeking Justice・2011・米)や、オスカー・ノミネートの「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)にも出ている。

 脚本はスキップ・ウッズと監督のデヴィッド・エアーの2人。スキップ・ウッズは本作の製作総指揮も務め、「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米/豪)からずっとアクションを書き続けている人。「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(X-Men Origins: Wolverine・2009・米/英)、ちょっと残念な「特攻野郎AチームTHE MOVIE」(The A-Team・2010・米)があって、大ヒットシリーズの「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(A Good Day to Die Hard・2012・米)を書いている。エンターテインメント路線のアクションか。納得。

 監督はデヴィッド・エアー。脚本家としての方が作品数が多い人。脚本家としてのデビューは自身の海軍での潜水艦勤務経験を活かした「U-571」(U-571・2000・仏/米)。その後「トレーニングデイ」(Training Day・2001・米/豪)や「ワイルド・スピード」(The Fast and the Furious・2001・米/独)、「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)などを書いている。監督としては「バッドタイム」(Harsh Times・2005・米)が最初のようだが、日本では劇場公開されていない。次の「フェイク シティ ある男のルール」(Street Kings・2008・米)は小劇場での公開だったが、おもしろいアクションだった。そのあとリアルなポリス・アクション「エンド・オブ・ウォッチ」(End of Watch・2012・米)を撮って高く評価され、本作につながる。最新作はブラッド・ピットの「フューリー」(Fury・2014・英/中/米)だ。

 公開3日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに行ったら開場済み。ほぼ中高年で、10人いて女性は3人。あまり広告していなかったからか、最終的に180席に3割りくらいの入り。これは少ないなあ。もっと入っても良い映画だと思う。

 気になった予告編は……東宝シンデレラの山崎紘奈のシネマチャンネルで、上下マスクの「西遊記」はチャウ・シンチーなのでナンセンスもののような気はするが、面白そうではある。例によってCG使いまくり。スー・チーも出ている。11/21公開。

 実写版の「シンデレラ」は監督がケネス・ブラナー。予告はケネス・ブラナーのビデオ・メッセージ付き。ティーザーで、ガラスのヒールが映って……。いつ公開? 公式サイトはまだない模様。

 「ザ・セオリー・オブ・エブリシング」はホーキング博士を描くものらしい。なんか泣けそう。博士を演じるのは「レ・ミゼラブル」のエディ・レッドメイン。公開日の表記無し。

 上下マスクの「寄生獣」は新予告。たくさんのクリーチャーが出てくるよう。ただ顔が裂けるのはほかにもいっぱいあって、「バイオハザード」でも見たし、どうなんだろう。11/29公開。前後編の公開になるらしい。後編は4/25? 忘れちゃうかも。

 「タルマさんが殺した」か「神様の言うとおり」どっちがタイトルかわかりにくいチラシ、予告。正解は「神様の言うとおり」。これも新予告に。とても残酷表現が凄いのに、妖怪のようなCGキャラはどこかコミカルで冗談っぽい。ここが狙いなのだろうが、どうなんだろう。11/15公開。

 上下マスクの「96時間レクイエム」はシリーズ3作目。2作目が酷かったのに……。1/9公開。


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