Paranoia


2014年11月16日(日)「パワー・ゲーム」

PARANOIA・2013・米・1時間46分

日本語字幕:丸ゴシック体下、杉山 緑/シネスコ・サイズ(with Panavision、デジタル、Arri ALEXA )/ドルビー・デジタル

(米PG-13指定)

公式サイト
http://power-game.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

引退した病気の父フランク(リチャード・ドレイファス)とニューヨークのブルックリン地区に住むアダム(リアム・ヘムズワース)は、IT企業のワイアット社に勤めて6年で、まだ平社員のまま。父の治療は保険対象外で4万ドルかかると言われる。そんなとき社長に直接プレゼンできるチャンスが訪れる。友人のケヴィン(ルーカス・ティル)やアリソン(アンジェラ・サラフィアン)たちと新しいケータイの使い方をプレゼンするものの、社長の無視するような態度に思わず口答えしてしまい、チーム全員がクビになってしまう。そこで、ヤケになったアダムたちは、プロジェクトのため預かっていた会社のカードを使い、マンハッタンの高級クラブで豪遊する。翌日、社長のセキュリティ担当者ミーチャム(ジュリアン・マクマホン)が現れ、ニコラス社長(ゲイリー・オールドマン)の元に連れて行かれる。そして、16,000ドルの不正支出が見つかったが、ライバルのアイコン社に潜入してスパイをやれば、リッチにしてやるし、仲間たちも復職させてやると持ちかけられる。


72点

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 話としては面白い。そして怖い。携帯の会社の話だが、創業者同士が仲が悪くなって分裂なんて実際に良くありそうな話。しかも両社とも社長が残忍でずる賢いというのが、物語をより過激にしている。さらに、川をはさんでブルックリン地区とマンハッタン地区で上流社会とそうでない社会は厳然と分けられているらしく、その格差が描かれているのも興味深い。

 ある意味、ちょっとアップルのスティーブ・ジョブズが追い出されたのにも似ているかもしれない。またアカデミー賞帆受賞した「ソーシャル・ネットワーク」(The Social Networ・2010・米)で描かれていたように、フェイス・ブックでもいろいろあったわけで、これも本作に通じている。さらには産業スパイまで絡んでくるわけで、アメリカでは良く話題になっているし、日本でも取り締まる法律がないため実際には盛んに行われているんだとか。そういう視点からはありふれているとも言えるし、興味深いとも言えるだろう。

 ただIMDbでは5.6点と低評価。なにしろ展開が納得できない。クビになったヤツが簡単にライバル社に入社できたり、その会社で新製品を開発して活躍できるというのもできすぎだし、それだったらスパイなんてやる必要ないしバラしちゃえばいいのに。ほかにもカメラで監視されていて、それを知りながら見られているところでカメラを壊したらバレるだろとか、どうにもおかしい。逃げるところもないくせに、すぐに殺し屋が送り込まれてくるだろと、まあおかしなところだらけ。脚本上は無理の無い設定になっているのかもしれないが、スクリーンから感じられたのはおかしなところばかり。

 主役のアダムはリアム・ヘムズワース。クリス「マイティ・ソー」ヘムズワースの弟。アメリカでは人気がある残念なSF「ハンガー・ゲーム」(The Hunger Games・2012・米)シリーズにジェニファー・ローレンスの恋人役で出ている人。「エクスペンダブルズ2」(The Expendables 2・2012・米)にも出ていたようだが、印象に残っていない。「ハンガー・ゲーム」に「パワー・ゲーム」じゃシャレのようだが、原題は違うので日本側のオヤジ・ギャグか。良い作品に恵まれればブレイクするかも。

 病気の父フランクはリチャード・ドレイファス。なんだか久しぶりに見たなあ。90年代末からTVが多くなって、この前見たのは引退した高齢者プロたちのアクション「RED/レッド」(RED・2010・米)か。その前はリメイク・パニック映画「ポセイドン」(Poseidon・2006・米)と間があく。本作も4年後だ。

 最初から悪いニコラス社長はゲイリー・オールドマン。私生活でも色々問題があるようだが、悪役をやらせると抜群。つい最近「猿の惑星:新世紀(ライジング)」(Dawn of the Planet of the Apes・2014・米)に出ていた。

 一方のライバル、一見良さそうな感じのアイコン社のゴダード社長はハリソン・フォード。本作の前が残念なSF「エンダーのゲーム」(Ender's Game・2013・米)というのも、日本語タイトルながら、因縁があるような。つい最近「エクスペンダブルズ3ワールドミッション」(The Expendables 3・2014・米/仏)に出ていた。アクションはちょっともう無理かな。

 医者の娘でマンハッタンに住んでいるエマ・ジェニングスは金髪美人、モデル出身のアンバー・ハード。本作の前に出ていたのが「マチェーテ・キルズ」(Machete Kills・2013・露/米)と「ラストミッション」(3 Days to Kill・2014・米/仏ほか)で、とにかく美人だが、どちらもお飾り的な役、お人形なのに対して、本作はもっと人間っぽい役。ただ作品に恵まれない気はする。傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)は良かったが。

 もう1人の美女で、ニコラス社長のブレーンらしい悪役のジュディス・ボルトンはエンベス・デイヴィッツ。「アンドリューNDR114」(Bicentennial Man・1999・米/独)のヒロイン役は素敵だった。最近は「アメイジング・スパイダーマン」(The Amazing Spider-Man・2012・米)シリーズの主役の母メアリー・パーカー役か。

 セキュリティ担当者ミーチャムはジュリアン・マクマホン。残念なSFアクション「ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・米/独)で悪役をやっていた人。「RED/レッド」にも出ていた。

 FBIの捜査官ギャンブルはジョシュ・ホロウェイ。人気TVシリーズ「LOST」(Lost・2004-2010・米)のソーヤーを演じていた人。つい最近シュワルツェネッガーのアクション「サボタージュ」(Sabotage・2014・米)に出ていた。イメージで、てっきり悪役だと思った。そこが狙いだったのかもしれない。

 原作はジョゼフ・フィンダーの「侵入社員」(新潮社)って、オヤジギャグか。イェール大学出の秀才だ。「バーニング・ツリー」という小説もアシュレイ・ジャッドの主演で「ハイ・クライムズ」(High Crimes・2002・米)として映画化されているという。

 脚本はジェイソン・ホールとバリー・L・レヴィの2人。ジェイソン・ホールは主にTVで活躍している俳優で、「バフィー〜恋する十字架〜」(Buffy the Vampire Slayer・1997〜2003・米)に出ていた。脚本はアシュトン・カッチャーの「愛とセックスとセレブリティ」(Spread・2009・米)という聞いたこともないような劇場作品を書いていて、本作は2本目。驚いたことに、イーストウッド監督の最新作「American Sniper」も書いているらしい。まったくつながらないが、製作総指揮も兼ねているので……。

 バリー・L・レヴィは「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)を書いた人。サスペンス的な部分やアクションはこの人のおかげかも。他に(Wolves of Wall Street・2002・米)というビジネスよりの脚本も書いているが、IMDbで2.4点などという信じられない低評価で、日本では劇場公開も、ビデオの発売もされていない模様。

 脚本に難があったのかもしれない。

 監督はロバート・ルケティック。オーストラリア出身で、オーストラリアで撮った短編が評価されてハリウッドで痛快ラブ・コメディの「キューティ・ブロンド」(Legally Blonde・2001・米)を撮って一気に名をあげた。その後、何本か日本劇場未公開作品を撮って、ギャンブル・サスペンス「ラスベガスをぶっつぶせ」(21・2008・米)を撮る。これがまたいい感じの作品。そのあと、見ていないがアート系で公開されたラブ・コメディ「男と女の不都合な真実」(The Ugly Truth・2009・米)や、残念なラブ・コメ・アクション「キス&キル」(Killers・2010・米)を撮っている。やっぱりこの人はラブ・コメなんだろうか。「ラスベガス……」は結構良かったけどなあ。

 予告ではSWATのような特殊部隊がコンピューター・ルームのようなところへ入っていく映像があったが、本編ではカットされていてなかったように思う。冒頭ではワイアット社のジュディスからいろいろと仕込まれる場面でスナイパーが高そうなライフルを撃っていた。ミーチャムが使っていたのはサウンド・サプレッサー付きのP226だったか、グロックだったか。パソコンはiMacなどアップル製が使われていた。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定でムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに開場。ほとんど中高年の男性で、女性は20人いて3人くらい。最終的には157席に4割りくらいの入り。まあ、こんなものか。地味だし、話題性もないし。

 気になった予告編は……スクリーンはシネスコで開いていて、左右マスクかシネスコ・サイズは四角の枠で小さくして上映。左右マスクの「シン・シティ復讐の女神」は1/10公開。四角の枠付きで「ホビット決戦のゆくえ」は12/13公開。ハッキリと前後編とは言っていない四角の枠付き「寄生獣」の前編は11/29公開。完結編は4/25公開。四角の枠付きで「インターステラー」は11/22公開。新しいものはなかった。

 遅れて入って来て、ケータイのチェックを席に座ってからやるヤツが多い。液晶画面が明るくてじゃまだって!


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