Journey to the West: Conquering the Demons


2014年11月22日(土)「西遊記はじまりのはじまり」

西游 降魔篇・2013・中・1時間50分

日本語字幕:岸田恵子、中国語監修:鮑智行、字幕監修:いとうせいこう/シネスコ・サイズ(デジタル、Alexa、IMAX3D)/ドルビーATMOS

(香IIB指定、米PG-13指定、日PG12指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://saiyu-movie.com/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

妖怪ハンターの玄奘(げんじょう、ウェン・ジャン)は、たまたま通りかかった川辺の村で、巨大な魚の妖怪〈のちの沙悟浄〉に遭遇し、村人と協力してどうにか陸にあげて人間の姿にもどったところで「わらべ唄三百首」の中から唄を聞かせて、帰そうとするがうまくいかない。そこへ、同じく妖怪ハンターの段(だん、スー・チー)が現れ、素晴らしい技を発揮すると袋に閉じこめ小さくし退治してしまう。自分の力の無さを痛感した玄奘は師匠に相談すると「ほんの少し何かが足りないのだ。修行を続けろ」と言われる。そしてたどり着いたのは山奥の岩壁に作られたレストラン。そこにいたのは豚の妖怪〈のちの猪八戒〉で、幻影では無く真実の姿が見える玄奘はすぐに正体を見破る。そこへまた段が現れ、無限変幻リングの技を使い動けなくしたところで、玄奘と力を合わせて止めを刺そうとしたところでイノシシに変身して逃げられてしまう。師匠は「五指山に閉じこめられている孫悟空(ホアン・ボー)なら倒すことが出来るから、探し出して教えを請え」と言う。


74点

1つ前へ一覧へ次へ
 さすがのチャウ・シンチー(周星馳)映画。世界観が完全にでき上がっていて、よく知られた物語が別な物語のように構築され、楽しめる。ベースをコメディとしながらも、基本リアルな路線で描きながら、あるところでとんでもなく逸脱する。この振り幅がチャウ・シンチーらしさだろう。とんでもないだけだったら、きっとつまらない。トンデモ映画になって、かえりみられなくなる。ドタバタだけじゃなく、ちゃんとした芯があって、最後にはちゃんと感動させる。

 雰囲気としては、かつて作られたSFチックなファンタジー作品、ツイ・ハーク監督の「蜀山奇傅 天空の剣」(蜀山: 新蜀山剣侠・1984・香)なんかに似ている気がする。ワイヤー・ワークと光学合成、フィルムに直接、絵を書いたような特殊効果がデジタルに変わって洗練された感じ。中身は一緒で、当時から観客を楽しませようといろいろ工夫を凝らしてきたのは変わらないと。そのへんをどう評価するか。

 もちろんチャウ・シンチーらしさがあちこちに。実は美人なヒロインは汚い格好で登場し、乱暴な言葉を使う。男勝りの大活躍をした後、ちゃんとロマンチックな展開となり女らしさを爆発させる。悪党は残酷なまでに悪く、絵に描いたよう。そして戦いではとんでもない技を繰り出してくる。ちょうど「少林サッカー」(少林足球・2001・香/中)や「カンフーハッスル」(Kung fu・2004・香/中)のままだ。基本構造は一緒。

 今回はチャウ・シンチー本人は出演していない。そして主人公自身はあまり笑わせてくれない。まわりが面白い。特に主人公につきまとう美人妖怪ハンター“段”はおもしろい。そして、はげ上がったオヤジキャラの孫悟空も、人間の姿をしている時はかなり笑わせてくれる。猪八戒も人間の時は若い男で顔がテラテラと脂ぎって光っている。それだけで笑える。そしてどちらも変身するととてつもなく悪くて残酷。さすがにデジタル技術はすごいなあ。人海戦術だろうか。フォトショ職人がたくさんいるとも言われるし。

 段は台湾出身のスー・チー。やっぱり魅力的だなあ。「クローサー」(夕陽天使・2002・香)と「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)以降、あまり見ていない気がしたが、ジャッキー・チェンの「ライジング・ドラゴン」(十二生肖・2012・香/中)に出てはいたようだが。もっと活躍して欲しいなあ。あんまり年取ってからだとイメージ変わっちゃうし。

 孫悟空はホアン・ボー。ドニー・イェンの「レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳」(Legend of the Fist: The Return of Chen Zhen・2010・香/中)に出ていて、スー・チーと共演しているらしい。「101回目のプロポーズ〜SAY YES〜」(101次求婚・2012・中/日)にも出ているそうだが見ていない。でもどこかで見た気はするのだが。はげ上がったさえない中年というイメージが抜群でとても面白かった。

 あとはあまり見たことがない人ばかり。でも、オバサンを4人雇って偉そうに見せている虚弱王子と間違われる虚空王子とか、テラテラに顔がてかっている猪八戒とか、出てくるだけで笑えるキャラもいて、面白かった。

 脚本は、監督・製作も兼ねるチャウ・シンチーをはじめ、共同監督のデレク・クォック、「カンフーハッスル」のローラ・フオ、ワン・ユン、「ミラクル7号」(Cheung Gong 7 hou・2008・香)のフォン・チーチャン、ルー・ジェンユー、出演もしているリー・ションチン、リー・ションチンの8人。多いなあ。

 監督はチャウ・シンチーと共同監督のデレク・クォック(チーキン・クォック)。チャウ・シンチーは俳優から監督になった人で、本作では出演はしていない。「少林サッカー」、「カンフーハッスル」、「ミラクル7号」などで高く評価されている人。ベースはコミカルなアクションという感じ。漫画的な表現を多用する。5年ぶりの監督作品でもさすがの手腕。

 デレク・クォックは、小劇場公開で見ていない「燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘」(打擂台・2010・香)と「ファイアー・レスキュー」(救火英雄・2013・中/香)の監督と脚本を手掛けた人。

 アクション指導はクー・フエンチウ(クー・ヒンチウ)。「グリーン・デスティニー」(Crouching Tiger, Hidden Dragon・2000・台/香/米/中)や「キル・ビルVol.1、Vol.2」(Kill Bill・2003/2004・米)でユエン・ユーピンの武術コーディネーターとしてサポートしたらしい。「ミラクル7号」ではアクション・コレオグラファーを担当しているらしい。本作も基本コメディなので、アクション・シーンがどのくらい凄いのかは良くわからない。

 ラスト、三蔵法師となった玄奘、孫悟空、猪八戒、沙悟浄が横一列にならんで天竺に向かって歩き出すと「Gメン75」のテーマが流れるのには驚いた。まさか、と思っていたら、エンド・クレジットでちゃんと「Gメン75」と出ていた。さすがチャウ・シンチー。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は30分前くらいについたら、ちょうど開いたところ。観客層は中高年というより高寄りか。最初は7人いて女性が2人。その後、夫婦が多く女性も増えて、最終的には半々くらいに。入りは395席に4割りくらい。小さいキャパなら満席になっているところ。

 気になった予告編は……上下マスクの「ミルカ」はインドのオリンピック陸上選手の実話を描いたものらしい。なんだか銃も出てきていたが、どんな話なんだろう。1月公開。見たいけれど、劇場次第かなあ。

 ティム・バートンの新作は「ビッグ・アイズ」。人物の目を大きく描くどくとくのポップ・アートの作者が、実は夫ではなく妻だったというお話らしい。エイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツの共演。1/23公開。

 上下マスクの「ゴーン・ガール」は新予告に。ベン・アフレックとロザムンド・パイクの顔合わせで、妻の失踪と、疑われた夫を描くミステリーらしい。気になる。12/12公開。

 上下マスク「チェイス」はもう1本のインド映画。アメリカのシカゴを舞台にインド人が大暴れするアクションらしい。デジタルを多用しているのだろうが、とんでもないアクションが目白押し。もちろんお約束の美女と群衆ダンスもあり。画質も素晴らしい。12/5公開。


1つ前へ一覧へ次へ