Interstellar


2014年11月23日(日)「インターステラー」

INTERSTELLAR・2014・米/英・2時間49分

日本語字幕:手書き風書体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(レンズ、by Panavision、IMAX、一部VistVision)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG-13指定)(日本語吹替版、IMAX版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

元NASAの優秀なパイロットだったクーパー(マシュー・マコノヒー)は、今は農夫として、父のドナルド(ジョン・リスゴー)、15歳の息子トム(ティモシー・シャラメ)、10歳の娘マーフ(マッケンジー・フォイ)と4人で暮らしていた。しかし地球の環境は急速に悪化、植物が激減し、人類は滅亡の危機にあった。そんなある日、クーパーとマーフは部屋に入り込んだ砂の模様がバイナリー・コードの座標であることに気付き、地図を頼りにたどり着いたところはNASAの極秘施設だった。捕えられ、厳しく取り調べられるが、バイナリー・コードに導かれたことを知ると、NASAは2人に人類を救うための2つのプランが進行中であることを明かし、「彼らに選ばれた」クーパーにパイロットとして「ラザロ計画」に加わるよう要請する。それは、人類が居住可能な惑星を探す、片道切符の宇宙探索だった。


86点

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 圧倒された。リアルな宇宙の絶景映像。全体を包むような臨場感あふれる音響効果。つぎつぎと訪れる危機また危機の極限状態。いつ死んでしまってもおかしくない状況。その死と隣り合わせの冒険に一緒に付きあわされているような気分になる。そして、主人公と一緒に旅立つ決心をし、裏切られて絶望し、命を投げ出す覚悟をして、希望を見出す。見るというより、なんだか体験する映画というか……。これまでに、あまりない感じ。怖いし、美しいし、ミステリーに満ちていて、愛があふれていて、欺瞞も、絶望もある。タイプとしては「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey・1968・米/英)に近いのかもしれない。

 やっぱりSFは絵だなあと思い知らされる。だれも見たことがない別の銀河の惑星。水だらけでとてつもない大波が来る水の惑星に、すべて氷で被われた極寒の氷の惑星。ワーム・ホールにブラック・ホール。そこに突入して見せる。中はどうなっているのか。具体的に見せてくれる。そして、「ゼロ・グラビティ」(Gravity・2013・米/英)のように空気がない無音の宇宙空間の恐ろしさ。不完全なドッキングでエア・ロックを開けたらどうなるのか。そして直方体が合体した形の意表を付くロボット。分からないが重要な特殊相対性理論と、それに基づく時間の流れ方の差によるタイムトラベルのような、浦島太郎的体験……。もう脳の処理を上回る情報量で、消化不良気味。ただただ圧倒される。もしIMAXで見ていたら、どうなったんだろう。宇宙酔いしていたかも。として、もっと圧倒されていただろう。「ゼロ・グラビティ」同様、劇場で見るべき映画にちがいない。

 未来世界では、アポロの月着陸というか。アポロ計画そのものがフェイクだったと学校で教えていることに衝撃を受けた。火星着陸が嘘だったと言う「カブリコン・1」(Capricorn One・1978・米/英)という映画もあり、本作と重なる。月着陸は嘘だと言う話は昔からあったが、こんな風に描かれると、アメリカの話なのに自分のことのように腹立たしい。

 ラストには、パズルが解けたような嬉しさもあるものの、まるでタイム・トラベルしたような気分になって、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」(Back to the Future・1985・米)的な驚きと、安心と、喜びと、悲しさが湧いてくる。うまいなあ。ただ、父と娘は本当にわかりあえたんだろうか、という疑問も湧いたが。本当は確執の物語だったのでは?

 クーパーはマシュー・マコノヒー。小劇場での公開だったので見ていないが「ダラス・バイヤーズクラブ」(Dallas Buyers Club・2013・米)でアカデミー賞主演男優賞を受賞した実力派。僕的にはSF「コンタクト」(Contact・1997・米)やギャング映画「ニュートン・ボーイズ」(The Newton Boys・1998・米)、SFドラゴン映画「サラマンダー」(Reign of Fire・2002・米/アイルランド)、冒険活劇「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英/西ほか)などがいいなあ。最近は今ひとつの感じだったが、「ダラス……」で一気に返り咲いた。本作も良い。こうなってくると次作が難しいかも。

 ブランド教授の娘で一緒に宇宙の片道旅行に旅立つアメリア・ブランド博士はアン・ハサウェイ。コメディの「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米/仏)やミステリーの「パッセンジャーズ」(Passengers・2008・米/加)、傑作アクションの「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)、ミュージカルの映画化「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)も良かったが、本作がとても健気で、もっとも合っていてかわいい気がした。等身大と言うか。最初はお高くとまったインテリで嫌な感じなのだが、映画を通して一緒に旅をしていく内に、とても魅力的に見えてくる。ひょっとしたら今までで一番良かったかも。

 クーパーの父ドナルドはジョン・リスゴー。久しぶりに見た気がする。コミカルな雰囲気を持った人だが、怖い役も多い。本作はちょうどいい良きおじいさん。やはり「トワイライトゾーン/超次元の体験」(Twilight Zone: The Movie・1983・米)の乗客や、傑作SFの続編「2010年」(2010・1984・米)、ブッグ・フットのコメディ「ハリーとヘンダスン一家」(Harry and the Hendersons・1987・米)などが記憶に残るが、「リコシェ」(Ricochet・1991・米)や「レイジング・ケイン」(Raising Cain・1992・米)、「クリフハンガー」(Cliffhanger・1993・米/伊/仏)などの悪役も強烈だった。2000年代に入ってからはあまり活躍が目立たない感じだった。「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(Rise of the Planet of the Apes・2011・米)くらいか。本作でちょっと安心。

 ブランド教授は名優マイレル・ケイン。まあ説得力が違う。最近は博士とか教授の役が多い感じ。ヒーロー・アクションの「バッドマンビギンズ」(Batman Begins・2005・米/英)シリーズが良いし、「インセプション」(Inception・2010・米/英)も良かった。ボク的には老人ロマン「ウォルター少年と、夏の休日」(Secondhand Lions・2003・米)がお気に入りだが、1950年代から活躍している人なので、さかのぼれば良い作品がワンサカ出てくる。60年近くも第一線で活躍し続けるなんて。アカデミー助演賞は2度も受けているが、主演賞はない。1933年生れの81歳。映画界への貢献度を考えたら特別賞を考えても良いのではないだろうか。

 クーパーの娘マーフは、強い印象を残す10歳の時がマッケンジー・フォイ。本作の前にジェームズ・ワンのホラー「死霊館」(The Conjuring・2013・米)で一家の夢遊病の次女を演じていた。本作でもうまい。大人になってからはジェシカ・ジャスティン。なんと言っても「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)で注目され、禁酒法時代ドラマ「欲望のバージニア」(Lawless・2012・米)も強烈だった。本作でも悩む感じはさすがの演技。年老いてからはエレン・バースティン。最強ホラー「エクソシスト」(The Exorcist・1973・米)でママを演じた人。ボクが最後に見たのはニコラス・ケイジの残念なホラー「ウィッカーマン」(The Wicker Man・2006・米/独/加)あたり。

 クーパーの長男のトムが大人になった時を演じていたのはケイシー・アフレック。まあ強烈な役が多いが、本作は実におとなしめで意外だ。「ジェシー・ジェームズの暗殺」(The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford・2007・米/加/英)は凄かったし、「キラー・インサイド・ミー」(The Killer Inside Me・2010・米/スウェーデンほか)なんか凶悪そのもの。つい最近「ファーナス/訣別の朝」(Out of the Furnace・2013・米/英)でダメ弟を好演していたばかり。

 先に宇宙へ旅立ったマン博士はマット・デイモン。意外な役で驚かされる。小さな役でも作品に恵まれている感じだ。最近は「エリジウム」(Elysium・2013・米)やTVムービーの「恋するリベラーチェ」(Behind the Candelabra・2013・米)に出て、どれも話題になっている。

 脚本は、監督のクリストファー・ノーランと弟のジョナサン・ノーランの2人。ジョナサン・ノーランは兄弟で良く仕事をしており、「プレステージ」(The Prestige・2006・米/英)や「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)の脚本も描いている。そして人気TVドラマ「パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット」(Person of Interest・2011〜・米)の企画・脚本・総指揮も務めている。

 監督・脚本はクリストファー・ノーラン。イギリス生れで、ハリウッドで大活躍。この人の才能は天井知らず。特に監督した「ダークナイト」、「インセプション」、「ダークナイト・ライジング」などは衝撃だった。プロデューサーもやっていて、監督していないものはちょっとというものもあるけれど。脚本を書いていないのも、ちょっとかもしれない。もちろん注目されるきっかけとなった「メメント」(Memento・2000・米)も凄かったけれど。

 素晴らしいセット美術を作り出したのはプロダクション・デザインのネイサン・クロウリー。「バッドマンビギンズ」、「プレステージ」、「ダークナイト」、「ダークナイト・ライジング」などクリストファー・ノーラン作品を多く手掛けている。説得力のある宇宙船は見事だった。

 インターステラーは英語で「星の間」という意味らしい。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定でムビチムカードで確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広かった。わりと満遍なくいる感じ。男女比は5.5対4.5くらいで、やや男性が多かった。夫婦連れかカップルが多く、女性2人や3人という組み合わせはほとんど見かけなかった。最終的には607席に7割りくらいの入り。ハードな本各的SFにしては良いのではないだろうか。

 気になった予告編は……最初からシネスコ・サイズで開いていたので、左右マスクか、四角い枠付きでの予告。枠付きの「龍三と七人の子分たち」は北野武映画で、またヤクザの話らしい。「白雪姫……」みたいだがコメディらしい。4/25公開。

 シネスコでの予告「マッドマックス怒りのデス・ロード」は大迫力。絵もきれいで音響効果も抜群。圧倒される。2015公開。

 イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」もスゴイ迫力。やっぱりシネスコは良い。そして、この緊迫感。ネイビー・シールズのスナイバーだったクリス・カイルの原作の映画化で、彼自身は帰還後PTSDに悩む兵士の支援活動を行っており、2013年その元兵士に射撃場で射殺されたというニュースが流れた。2/21公開。

 「ホビット 決戦のゆくえ」も素晴らしい画質と音響で大迫力。しかも新予告。12/13公開。


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