Kiseijuu


2014年11月29日(土)「寄生獣」

2014・東宝/日本テレビ放送網/講談社/電通/ROBOT/日本出版販売/GyaO!/Yahoo! JAPAN/KDDI・1時間49分

シネスコ・サイズ(デジタル、RED EPIC)/ドルビー・デジタル

(日PG12指定)(一部字幕付き上映もあり)

公式サイト
http://kiseiju.com
(全国の劇場リストもあり)

人類による環境汚染が進む中、ある時、海からクラゲのような謎の生命体が港に押し寄せると、中からムカデのような生物が現れ、コンテナに取りついて日本全国に散らばっていく。多くの人が眠っている間に耳から侵入、脳を奪われて、外見はそのまま人間を捕食するモンスターとなる。高校生の泉新一(いずみしんいち、染谷将太)はインナー・イヤホンをしたまま寝ていたため侵入されず、さらに鼻から侵入されそうになるが気付いて引き抜く。生命体は、しかたなく手から侵入を試みるも、新一がとっさに腕をコードで縛ったため、それ以上侵入できず腕に定着してしまう。そのため脳を取ることができなくなったため、右手で新一の体から栄養をもらい共生することになる。生命体は驚異的な学習能力でPCを操りネットから情報を仕入れると、たちまた言葉を話せるようになり、ミギー(阿部サダヲ)と呼べと言う。そんなある日、外出先で同種がいるとミギーが言い出し、対決するハメに。そしてミギーはここで新一が死ぬと自分も朽ちると、一緒に戦うことを決心する。その男を倒した後、学校に新任の科学教師、田宮良子(たみやりょうこ、深津絵里)が赴任してくるが、ミギーは同種だと断定。田宮はわれわれのネットワークに入らないかと誘ってくる。


74点

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 原作は読んでいないが、なかなか良くできた物語で、若干、気になるところもあったが、最後まで異世界を堪能できた。ベースはホラーなのだが、山崎貴監督らしいユーモアがあちこちにあり、血みどろの話に笑っていいのか、怖がればいいのか。その辺のバランスは微妙。

 音響は立体的で良く回っており、クリアだったものの、画質はデジタルとは思えないところも多々あり、あまり良くなかった。本来はもっと解像度が高く、シズル感のある生々しい絵になるはずでは? しかも、ホラーに合う青系の色調は違和感がないが、セピア寄りの暖色系の「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005・日)的な色調は、ほんわかしてノスタルジック調で、どうにも違和感があった。

 CGによるクリーチャーも、原作通りのようだが、ちょっとコミカルで怖さが薄い感じ。特にメインのミギーは声が阿部サダヲなので、TVの「マルモのおきて」(2011〜・日)的な人の良さのようなものが出て、主人公の相棒的な雰囲気はたっぷりだったが、モンスター的な怖さは無くなってしまった。どっちが良いかは難しいところだろう。

 合成やCGは見事としか言い様がない。ほとんど実際に撮影したかのよう。画面から浮いていない。自然に溶け込んでいる。素晴らしい。演技もちゃんとかみ合っているし、どうやって合わせたのだろう。見事だ。ラストにはミギーがかわいく見えてきた。ただ、脳に寄生した場合、口の中に目玉も仕舞っているのは、どうにも理解を超える。普段、目玉はどうなっているんだろう? ものを食べるのにじゃまになるし、口を閉めたら何も見えなくなるではないか。

 寄生獣という生物なのだが、どこか変形したりするところは「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgment Day・1991・米/仏)のT-1000にも似ていた。顔も変わるし、剣にもなるし。学校に入り込むところは「パラサイト」(The Faculty・1998・米)、宿主を操るのは「ヒドゥン」(The Hidden・1987・米)にも似ている。頭が裂けるのはクリオネというか、犬の顔が裂けて裏返しになる「遊星からの物体X」(The Thing・1982・米)的で、そこからイメージしただろう「バイオハザード」(Resident Evil・2002・英/独ほか)的でもある。

 気になるのは、2話構成のため、どうしても次へ物語をつなぐため、終わった感が少ない。だから単体なら相当な特殊効果で、見せ場もちゃんとあったにも関わらず、見たりない感が強くしてしまう。

 銃は警官がS&Wのチーフのような3インチ・リボルバーを使用。ガン・エフェクトはビッグショット。

 小説家の星新一みたいな名の主人公、泉新一は染谷将太。12〜13歳から活躍している人で、「ヒミズ」(2011日)でヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞して注目されるように。その後「悪の教典」(2012・日)や「脳男」(2013・日)、「清須会議」(2013・日)、「永遠の0」(2013・日)、「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)など話題作に出まくっている。さすがに賞を受賞しただけあって、うまい。特に最近公開された「神さまの言うとおり」(2014・日)では、出番が少ないながら確かな存在感を出し、うまさを証明して見せた。

 ミギーの声は阿部サダヲ。人の良さみたいなものが伝わってきて、本来は怖いものなのに憎めないキャラクターとして感情移入しやすかった。1990年代から活躍しているが、コメディの「舞妓 Haaaan!!!」(2007・日)あたりから主演もするようになった感じ。TVドラマの「マルモのおきて」(2011・日)も話題となり、「舞妓……」と同じ水田伸生監督の「謝罪の王様」(2013・日)でも主演を演じている。大泉洋と通じる、いるだけでどこかおかしいコミカルな味を感じる。

 新任の科学教師、田宮良子は深津絵里。ダークなミステリー「悪人」(2010・日)でモントリオール世界映画祭の最優秀女優賞を受賞したが、どちらかというとコミカルな役の方が向いている気がする。本作は笑わないシリアスな怖い役だが。TVと映画の「踊る大捜査線」(1997・日)シリーズはハマり役の代表作だろうが、「素敵な金縛り」(2010・日)もなかなか良かった。

 同級生の村野里美は橋本愛。たぶん注目されるようになったのはNHKの「あまちゃん」(2013・日)からではないだろうか。「リトル・フォレスト夏・秋」(2014・日)では主演している。独特の存在感を持っていて、そっけない感じがいい。今後注目かもしれない。

 帰省された転校生、島田秀雄は東出昌大。なかなか怖い感じが見事だった。さすが新作「アオハライド」(2014・日)でメイン・キャラをやっているだけのことはある。過去には橋本愛も出ていた「桐島、部活やめるってよ」(2012・日)に出ていて、「クローズEXPLODE」(2013・日)では主演している。やはりね。

 脚本は、監督の山崎貴と古沢良太。古沢良太は映画では山崎貴監督の「Always三丁目の夕日」(2005・)シリーズを書いている。他に「探偵はBARにいる」(2011・日)シリーズも書いている。TVでは「相棒」(2005〜・日)シリーズのシーズン4以降が有名。

 監督、脚本、VFXの山崎貴。古くは「ジュブナイル」(2000・日)や「Returnerリターナー」(2002・日)のSFアクションが良かった。もちろん大ヒットは「Always三丁目の夕日」シリーズだろう。「永遠の0」も良かったけれど、「BALLAD名もなき恋のうた」(2009・日)や「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010・日)、CGアニメの「STAND BY ME ドラえもん」(2014・日)はどうなんだろう。それにしても、この監督はだいたい英語と日本語半々のタイトルが好きなのだろうか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は12〜13分前に開場し、場内へ。下は母に連れられた小学生くらい(年齢制限は大丈夫なんだろうか)の男の子から、中高年まで幅広かった。女性は1/4ほど。割りと若い人が多い。女性1人はいたが、女性の連れはいなかった。男は連れとか多いのに。最終的には287席に6割りくらいの入りは多いのか少ないのか。初日なのに。

 気になった予告編は……スクリーンは最初からシネスコ・サイズで開いていて、左右マスクでCMスタート。枠付きの「ストレイヤーズ・クロニクル」はまたまた漫画が原作で、超能力者同士の戦いを描くものらしい。岡田将生と染谷将太という顔合わせ。6月公開。

 枠付きの「ソロモンの偽証」は学校で生徒が転落死し、自殺か殺人か、裁判が行われるという話らしい。原作は宮部みゆき。キャッチ・コピーが「嘘つきは、大人のはじまり。」面白そう。ただ前後編になるらしい。これも最近のはやりか。3/7前編、4/11後編、公開。

 左右マスクの「ST赤と白の捜査ファイル」は、良くあるパターンのTVドラマの劇場版。これも岡田将生で、相手役は藤原竜也。結構、銃も出てくるらしい。1/10公開。

 左右マスクの「海月姫」は、漫画原作のコメディで、クラゲのオタクを描くものらしい。そのクラゲオタクが能年玲奈。12/27公開。

 左右のマスクが広がって本当のシネスコ・サイズになってからの「ジョーカー・ゲーム」は新予告。D機関、スパイ、ブラック・ノート、M1917のようなリボルバー、M1900のようなブローニング、それも実銃っぽいヤツ。ちょっとおもしろそう。1/31公開。


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