The Hobbit: The Battle of the Five Armies


2014年12月14日(日)「ホビット 決戦のゆくえ」

THE HOBBIT: THE BATTLE OF THE FIVE ARMIES・ニュージーランド/米・2時間25分(allcinemaとIMDbでは144分)

日本語字幕:手書き風書体下、アンゼたかし/日本語字幕監修:伊藤盡/シネスコ・サイズ(デジタル、RED、SONY、in 3D)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビーSR、ドルビーATMOSも)

(日本語吹替版、3D上映、3D HFR上映、IMAX上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitbattleofthefivearmies/
(音に注意。情報少ない。全国の劇場リストもあり)

城を守っていた邪悪な竜のスマウグ(声:ベネディクト・カンバーバッチ)の襲撃を受けた湖の街エスゴラスを救うため、バルド(ルーク・エヴァンス)は弓を持って一番高い塔に昇り、息子が持ってきた伝説の黒い矢でスマウグを倒す。しかし街は焼き払われ、住む場所を失った人々は、どうにか岸にたどり着き、バルドをリーダーとして廃虚となったエレボールへと避難する。そこでバルドはドワーフの王トーリン(リチャード・アーミティッジ)に協力の見返りとして、街を再建するための金を要求するが、トーリンはこれを拒否。さらに、竜が倒されたことを知った森のスランドゥイル(リー・ペイス)がエルフの大軍とともに宮殿の中にある自分たちの秘宝を取り返そうとやって来るが、トーリンはこれもはねつけ、一触即発の緊張状態となってしまう。トーリンは「竜の病」に冒されつつあったのだ。さらに竜が倒されたことを知ったアゾク(マヌー・ベネット)も闇の大軍を率いてエレボールへ向かっていた。同じ頃、捕えられたガンダルフ(イアン・マッケラン)のもとへは、ガラドリエル(ケイト・ブランシェット)が向かっていた。


76点

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 まあスゴイ映画。壮大な物語がやっと終わる。ほとんどは戦闘シーンで、ドラマはあまりない。そして物語が「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)につながるようになっている。この辺の緻密さは、ボクには良くわからないが、マニアにはたまらないポイントだろう。愛も、勇気も、友情も、正義も、裏切りも、しっかりと描かれていて、感動的だ。ベネディクト・カンバーバッチのドラゴンはすぐいなくなるけど。

 ただ、見る前に前作をおさらいしておいた方がいいと思う。ボクはしていなかったので、付いて行くのに苦労した。そして途中で諦めた。思い出せない。わからなくても付いて行くしかない。映画はまさに前作の直後から、ダブりなしで始まる。いきなり湖の上の街を焼き払うシーンからだ。いっさいの説明無し。ボクのようなマニアじゃない不貞ものにも理解しややすいように、「これまでのあらすじ」とか「前回まで」なんて説明を付けて欲しかった。顔は覚えていても名前がわからなかったり、何をしていた人か忘れたり…… これは老人ボケか?

 いちいち説明していたら、ただでさえ長い映画が3時間を越えてしまうかもしれない。だから前作の直後から始めたと。もはや、いきなり戦場へ連れて行かれ「わからないヤツは黙って付いて来い。いくぞ!」と飛び出されてしまった感じ。そして、ほとんどが戦闘シーンなので、かなり疲れる。

 字幕で気になったのは、トーリンがセリフではソーリンと聞こえること。それと、ドラゴンが自分を「俺様」と呼ぶこと。いつの時代だよ! これらは原作の翻訳版との兼ね合いもあるのだろう。原作の小説が日本で出版されたのは1960年代らしいから。今の時代に合わないと言うこともあるし、小説では良くても、字幕ではちょっと、ということも良くある。字幕はむずかしい。冒頭のクレジットには翻訳者、監修者の他に2人くらいの名前があったと思うが、メモし切れなかった。公式サイトには表記無し。

 登場人物が非常に多く、群像劇と言う感じになってい捨て、あちことで戦闘が起きるため、誰がメインということはない感じ。一応バルドのルーク・エヴァンスが狂言回し的な立場にはなっているが。

 今回目立っていたのは、ドワーフの王トーリンを演じたリチャード・アーミティッジ。ちょっと前は話題になったリアルな特殊部隊ドラマ「S.A.S. 英国特殊部隊 II」(Ultimate Force・2003・英)に出ていた人で、その後「MI-5 英国機密諜報部」(Spooks・2010・英)シリーズにも出ている。映画では、つい最近、残念な「イントゥ・ザ・ストーム」(Into the Storm・2014・米)に主演している。

 ラブ・ストーリーのパートはドワーフのキーリとエルフのタウリエルが担当。キーリはエイダン・ターナーで、本シリーズ以外はTVが多いようで、映画ではつい最近リリー・コリンズの「シャドウハンター」(The Mortal Instruments: City of Bones・2013・米/独/加)に出ていた。

 タウリエルはエヴァンジェリン・リリー。人気TVシリーズの「LOST」(Lost・2004〜2010・米)のケイト役が有名。映画では話題作の「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)や「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)に出ていて、作品に恵まれている感じ。

 その2人の間に入ってくるのがエルフのレゴラスで、無精ヒゲのキーリとは対象的に貴族っぽい。まさにオーランド・ブルームにぴったり。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)シリーズでも貴族だったが、つい最近「ケープタウン」(Zulu・2013・仏/南ア)ではチンピラっぽい刑事を演じていた。

 エルフのリーダー、スランドゥイルもなかなかの存在感。演じたのはリー・ペイスで、衝撃のファンタジー「落下の王国」(The Fall・2006・米/印)の主役を演じた人。実際には結構ヒゲが濃くて、男っぽい感じだったのが、本シリーズだと中性っぽい高貴な感じ。驚きだ。最近だと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(Guardians of the Galaxy・2014・米/英)で宇宙1凶悪なテロリストを演じていた。

 シリーズ・タイトルの後、本作のタイトルが出るまでの長いアバンで活躍するのは人間のバルド。演じたのはルーク・エヴァンス。中世ものが多い感じで、つい最近「ドラキュラZERO」(Dracula Untold・2014・米)に出いていた。

 サービスのように登場するのは、ガンダルフ(イアン・マッケラン)を助けに行くガラドリエル(ケイト・ブランシェット)と、白の魔法使いサルマン(クリストファー・リー)、エルフのエルロンド(ヒュード・ウィーヴィング)。

 今回、最悪の憎まれ役を演じて記憶に残るのは、竜に襲われた人間の街の頭領に仕えていた、眉毛のつながりそうなアルフリッド役のライアン・ゲイジ。イギリスの人のようで、主にTVに出ていたよう。ドブネズミ的な図太さと生命力がよく出ていた。

 原作はもちろんJ・R・R・トールキンの「ホビットの冒険」。日本ではいくつかのバージョンかあるらしい。脚本は、フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、監督でもあるピーター・ジャクソン、スケジュールの問題で途中降板したという監督のギレルモ・デル・トロの4人。

 フラン・ウォルシュは前作から引き続き製作も兼ねるピーター・ジャクソン監督の奥さん。たぶんピーター・ジャクソン監督作品のほとんどを書いている。結婚したのは1987年というから、脚本は書いていないがピーター・ジャクソン監督の商業デビュー作「バッド・テイスト」(Bad Taste・1987・ニュージーランド)の年ということになる。

 フィリッパ・ボウエンも女性の脚本家で、「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)以降のピーター・ジャクソン作品を書いている。プロデューサーとしてはピーター・ジャクソンと一緒に「第9地区」(District 9・2009・米/ニュージーランドほか)も手掛けている。

 ギレルモ・デル・トロは傑作ミステリー「クロノス」(Cronos・1992・メキシコ)で劇場長編デビューしたメキシコの人。本作シリーズの脚本もすべて手掛けている。つい最近、監督したSFロボット・アクションの「パシフィック・リム」(Pacific Rim・2013・米)を公開、日本のアニメや怪獣映画にも詳しいことを証明した。

 監督はピーター・ジャクソン。すっかり「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」系の監督として定着してしまった感じだが、ボクとしては「さまよう魂たち」(The Frighteners・1996・ニュージーランド/米)系や「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)系の作品をを作って欲しいなあ。それと、ハード・ボイルド系や痛快アクション、ハードSFも見たい気がする。この人が凝ってリアルに作ったら凄いものになるのではないだろうか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場はHFRの字幕版3D上映。ムビチムカードで不足分400円をカードから支払って座席を確保。当日は10分前に開場。それにしても、席について、暗くなってから「3D眼鏡に異常のある方は係員までお知らせください」とか言われても、簡単に申し出られないって。係員もどこにいるかわからないし。最終的には607席に6.5割りくらいの入り。話題作にしては少ない感じもするが、朝も早いので良い方なのかも。ただこれくらいのほうが圧迫感が無くリラックスして見られる。

 気になった予告編は…… スクリーンはシネスコ・サイズで開いていてビスタは左右マスクでの予告。まあ別料金を取るHFR 3D上映がビスタにマスクだったらクレームものだけど。……で、フル・サイズのシネスコ上映のCGアニメ「リトルプリンス 星の王子さまと私」はキャラクターが「アナと雪の女王」(Frozen・2013・米)ぽい感じで、現代の話なんだけど少女と「星の王子さま」が絡むことになるらしい。2015年12月公開って、1年先かい。

 左右マスクの「白鯨のいた海」は、またまた古典が題材かと思ったら、1819年の実話とかなんとか。これが「白鯨」の参考になっているらしい。ロン・ハワード監督で、キリアン・マーフィー、クリス・ヘムズワースらが出ている。巨大な鯨がものすごい迫力。まだ公式サイトはないもよう。

 四角の枠で「龍三と七人の子分たち」は北野武映画なので、バイオレンス満載という感じ。「白雪姫と七人の小人」に引っかけたものなんだろうけれど、笑っていいのか迷う感じ。ジジイが主演で、俺たちに明日なんかない!!って、面白そうなんだけど…… 4/25公開。

 フル・サイズの「アメリカン・スナイパー」はやっぱりスゴイ迫力。撃つかどうかの判断を任せられるスナイパーのプレッシャーがひしひしと伝わってくる。イーストウッド監督はすごいなあ。自ら映画化交渉をしたという主演のブラッドリー・クーパーは、スナイパー・トレーニングを受けたらしい。2/21公開。

 3D眼鏡を掛けるように指示があって、「ミュータント・タートルズ」の3D予告へ。カメラに向かって飛び降りてくるシーンはさすがに立体感がある。しかし、あえて選んだんだろうあざとさが……。どこまで実写で、どこからCGなのか、わからなくなってきた。すべてがCGっぽく見えてしまう。リメイクだし、Pはマイケル・ベイだし……。2/7公開。

 マスクのようなものが左右に広がって、本編へ。

 やはりHFRはシズル感がある。生々しい。特に冒頭のドラゴンに襲われる街のシーンはTVの生中継みたいでリアルだった。明るさもよりあるようで、3D眼鏡を掛けてもそれほど暗く感じなかった。ただ、立体感という点ではどの映画も同じだが、それほど感じない。飛び出るというよりは奥行きという感じなので、それはしようがないのだろう。高画質なら3Dでなくても立体感を感じられ、特に3D上映である必要はないように思う。

 つまらないわけではないが、長くて、何回か気を失いそうになった。それと、必ず上映直前にトイレに行っておくことが大事。


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