Bankuuba no Asahi


2014年12月20日(土)「バンクーバーの朝日」

フジテレビジョン/東宝/FNS27社・2時間12分(allcinemaでは133分)

シネスコ・サイズ(デジタル?)/ドルビー・デジタル(?表記無し)

(一部日本語字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.vancouver-asahi.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

19世紀末から一獲千金を夢見てカナダのバンクーバーに渡った日本人移民たち。彼らは3年働けば一生楽に暮らせると信じて、どんな環境でも懸命に働いたため、カナダ人からは仕事を奪う敵として見られていた。しかし実際には1日10時間働き、それでもカナダ人の半分の給料しかもらえないのが実情だった。そんな中、野球チーム「バンクーバー朝日」が作られ、幸運にもカナダのリーグに参加することができたが、ずっとリーグ最下位だった。二世の時代となっても、それは変わらなかった。中国での支那事変がさらに日本人排斥に拍車をかけ、不景気で仕事を失い、チームを離れていく選手が増える中、新しいキャプテンとなったレジー笠原(妻夫木聡)は、体格や体力でかなわない白人に勝つため、バント攻撃を仕掛けてみることにする。最初はうまくいかなかったが、バント、スクイズ、盗塁、ダブル・スチールなどを繰り出し得点し、得意の守備で敵の得点を押さえると、ついに勝てるようになってくる。


72点

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 出場停止となって選手たちを前に、主人公の妹がスピーチをして、英語の歌を唄うシーンは感動的で、涙が出そうになった。興味深い話で、感動作だが、タイトルから期待されるスポーツものというより、日本人移民の苦難の歴史に寄ったドラマとなっているのが残念。たぶん比率でいうと4対6くらいで移民の方に寄っていて、これが逆に6対4くらいで野球によっていればもっと面白かったのでは。

 どうしても苦難の歴史にシフトしてしまうと、感動はしても、かわいそうとかウエットな方にいってしまい、それは野球と関係なくなってしまう。被害者意識というか、お説教臭いというか、お涙頂戴的な良くあるお話に。他のスポーツでもなんでも、別な描き方でも成立することに。苦難の歴史ならNHKのドキュメンタリーの方がいいくらい。一方、野球寄りであれば、本当に秘話的になって、スポーツのさわやかな感動をメインにして、つらい歴史も入って来やすくなったのではないだろうか。

 それと気になったのは、予算が少なかったのだろう、冒頭のタイタニックのような雰囲気の客船や街のパノラマが、画質が良いせいかCGっぽいのと、日本人街と野球場がどうにもセットっぽかったこと。だからなのか、TVムービーといった印象も。

 なぜか妹の感動的なスピーチのところで、カナダのトロント・ブルージェイズの川崎宗則選手を思い浮かべてしまった。

 新たにキャプテンになるレジー笠原は妻夫木聡。注目を集めるようになったのは「ウォーターボーイズ」(2001・日)あたりかららしい。多くの話題作に出演し、賞もたくさん取っている。ボク的には「どろろ」(2007・日)や「スマグラー おまえの未来を運べ」(2011・日)なんかが印象に残っている。最近はCGアニメ「STANBD BY MEドラえもん」(2014・日)ののび太の声をやっているが、それよりCMの実写版「ドラえもん」ののび太の方がいい。映画はむずかしいかもしれないが、このレベルならTVドラマで見たい。

 ピッチャーのロイ永西は「KAT-TUN」の亀梨和也。アイドルということでか、若干ためらいというか戸惑いのようなものが感じられた。演技は主にTVドラマで「妖怪人間ベム」(2012・日)は覚えている。近日「ジョーカー・ゲーム」(2014・日)が公開される。どうだろう。

 レジーと同じ製材所で働くケイ北本は勝地涼。本作ではトガった役だが、コミカルな雰囲気を持っている感じ。「亡国のイージス」(2005・日)で日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞したらしいが、すでに2000年くらいから活躍している。映画の出演は少ないようで、本作の前は「クローズEXPLODE」(2013・日)あたりか。うまいがコミカルな役の方がハマるのでは。

 ホテルで働いているフランク野島は池松壮亮。スクリーン・デビューは富む。クルーズの「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米/ニュージーランド/日)。印象に残る子役だった。TVのバラエティ番組などで見ると無口で暗いイメージだが、演技はさすがに抜群。TVドラマの「MOZU」(2014・日)の殺し屋は強烈だった。

 キャッチャーのトム三宅は上地雄輔。松坂大輔のキャッチャーを務めた高校球児で、1999年に俳優デビュー。しかしクイズ番組などでおバカタレントとしてブレイクしたため、そのイメージが強い。おかげであまりまじめな役はしっくり来ない感じ。歌もうまい。本作では普通の印象。最近見たのは「超高速!参勤交代」(2014・日)。

 レジー笠原の妹、エミー笠原は高畑充希。舞台のミュージカルからTV・映画の世界へ入った人。どうりで歌うシーンがあったわけだ。あまり見かけたことはないが、現在公開中の「アオハライド」(2014・日)にも出ているらしい。昔の女性の雰囲気が良く出ていて、いい感じだった。

 脚本は奥寺佐渡子。劇映画の脚本デビューは見ていないが「お引っ越し」(1993・日)だそうで、すでに20年以上のベテラン。面白かった「学校の怪談」(1995・日)シリーズや、ファンタジー時代劇「魔界転生」(2003・日)、正統派の「怪談」(2007・日)、話題となった「八日目の蝉」(2011・日)、これから公開される「マエストロ!」(2015・日)などを書いている。またアニメの脚本も多く、「時をかける少女」(2006・日)や「サマーウォーズ」(2009・日)、「おおかみこどもの雨と雪」(2012・日)などの細田守監督作品を書いている。

 監督は石井裕也。妻は女優の満島ひかり。自主製作出身で、「舟を編む」(2013・日)が日本アカデミー賞など多くの賞を受賞した。ボクは「舟を編む」も見ていくらいで、他の作品もほとんど知らない。本作だけ見てもうまいのかどうか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広く、下は中学生くらいから。男女比は4対6くらいで、やっぱり女性が多かった。しかも若い女性。最終的には232席に6.5割りくらいの入り。まあ普通か。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いていて、気になった予告編は……左右マスクの「エイプリフールズ」は1日の出来事だそうで、登場人物全員嘘つきとか。千葉ちゃんで出てるの? 4/1公開。

 左右マスクの「ST赤と白の捜査ファィル」は新予告か長いバージョンか。TVドラマの劇場版。ベレッタPx4ストームを使うのか。1/10公開。

 中島みゆきの「縁会2012〜3」は幻のコンサートの劇場版だそうで、全20曲入っているらしい。なんと前売りで2,300円。1/24公開。

 マスクが左右に広がって、本当のシネスコ・サイズになって「ジョーカー・ゲーム」は、ハゲハゲのM1917リボルバー?、FN M1900? は実銃ベースのプロップ・ガンらしい。すごいことになっているかも。1/31公開。


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