2015年1月18日(日)「スパイ・レジェンド」

THE NOVEMBER MAN・2014・米・1時間48分

日本語字幕:黒フチ丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、レンズ、Arri Alexa、Hawk Scope)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://spylegend.jp
(クッキーをONにしないと見られない。音に注意。全国の劇場リストもあり)

2008年、ベテランCIAエージェントのピーター・デヴェロー(ピアース・プロスナン)は、新人エージェントのデヴィッド・メイソン(ルーク・ブレイシー)と組んで、アメリカ大使の警護を行っていたが、暗殺者が現れ銃撃を始めたため、スナイパー役のデヴィッドはピーターの制止を聞かず発砲し、おさない少女が巻き込まれて死亡してしまう。5年後、引退したピーターは、かつての仕事仲間のハンリー(ビル・スミトロヴィッチ)に呼び出され、重要情報を入手したという女性エージェントのナタリア・ウラノヴァ(メディハ・ムスリオビック)をスイスのローザンヌで救出する仕事を依頼される。ところが、ナタリアが逃げる途中で潜入していたロシアの大物政治家フェデロフの部下の追跡を受けたため、ハンリーの命令でデヴィッドによって狙撃されてしまう。ナタリアはミラという女性の名前をピーターに告げ息を引き取り、ピーターはナタリアの携帯のデータが入ったメモリー・カードを抜いてその場を脱出するが……。

74点

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 アクションで物語をつづった、まれな成功作。ほとんど余計な会話は廃し、登場人物の行動で物語を語っていく。現実には、普通のアクション映画のように状況説明や自分の心情をいちいち言葉として語ったりはしないだろう。しかし映画として分かりやすくするため便利なので良く使う。それはリアルではないし、よく考えてみれば不自然。わざとらしい。しかもせっかくの緊迫の場面でしゃべったりしてせっかくのスピード感にブレーキをかけてしまったりする。ところが、本作はたぶんそれがほとんどない。必要最小限のことしかしゃべらない。だからリアルだし、ハラハラするし、先が読めない。当然ながら物語は分かりにくい。それはしようがない。銃を撃つ前にペラペラしゃべったりしないから。いきなりバンと撃つ。だから怖い。

 テンポもちょうどイイ感じ。あまり観客に考える時間を与えない。次々と何かが起り、何かを起こす。だから先が読めない。物語はつねに少しだけ観客の先を行く。この辺がうまい。そして必要以上のお金を掛けなくても、面白いスパイ・アクションは作れるという証明だろう。もちろんお約束の爆発は仕込まれているけど。

 そしてスーパー・ヒーローでなくても、引退した元エージェント、60歳を過ぎたピアース・ブロスナンでもアクションはできると。TVシリーズ「探偵レミントン・スティール」(Remington Steele・1982〜1987・米)のときのスリムさはもうないけれど、優雅さや大人のスタイルがある。ピアース・ブロスナンが「007」になる前に出たTVムービー「テロリスト・ゲーム」(Death Train・1993・スロベニア/英/米)の雰囲気もちょっとあるかも。最近見かけなかった気がするが、やっぱりこの人はアクションで光る気がする。本作では製作総指揮も担当。

 難民センターのアリスはオルガ・キュリレンコ。「007/慰めの報酬」(Quantum of Solace・2008・英/米)でボンドガールを演じた人。「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)でもエロティックで光っていたし、トム・クルーズと共演した「オブリビオン」(Oblivion・2013・米)も良かった。

 冷血で無口の女殺し屋アレクサはアミラ・Terzimehic。読み方がわからない。ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれだそうで、まだTV1本、本作を含め映画2本の新人。いい雰囲気だったので、今後活躍してくれるかも。

 銃は……狙撃で使っているのがH&KのPSG1だと思ったら、imfdbによるとアメリカではアサルト・ウェポン・バンが実施されていた当時(1994〜2004)、該当しないように改装したスポーター・モデルのSR9-TCが輸入され、それが使われているんだとか。冒頭、書類を盗み出す場面で金庫の中に入っていたのはシルバーのPPKまたはPPK/Sのようだった。また新人のメイソンがスイスで狙撃に使うのはブレイザーのR93。ピーターが最初使っていたのはワルサーのP99かPPS、あるいはH&KのUSPのようだったが、のちにP226にかわる。しかしこれもimfdbによるとP226ではなく、ユーゴスラビアのそっくりさん、CZ99なんだそう。ほかに撃ち合いではグロックとM92、M92アイノックス、CZ75 SP-01も使われている。ロシアン・ルーレットをするのはルガーGP100。長ものはM4カービン、AKSなど。ベレッタM84のような銃もあったような気もしたが、確認できていない。

 アーマラーはIMDbによるとBojan Nenadovicという人。ボーヤン・ネナドヴィッチと読むのだろうか。リュック・ベッソンの続編「アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ」(Banlieue 13: Ultimatum・2009・仏)や、同じくリュック・ベッソンの「ロックアウト」(Lockout・2012・仏)などを担当している。

 原作はビル・グレンジャーの「ノヴェンバー・マン」。ジャーナリストからコラムニストとなり、その後小説家としてデビューしたらしい。デビュー作が本作で、シリーズ化され13冊出版されているんだとか。これはぜひ続編の映画も作って欲しいところだが……。惜しくも2012年に亡くなっている。

 脚本はマイケル・フィンチとカール・ガイダシェクの2人。マイケル・フィンチは本作の前にシリーズ3作目(?)にあたる「プレデターズ」(Predators・2010・米)を書いている。本作が評価されたのか、新作が3本控えている。

 カール・ガイダシェクはTVの脚本から、ニコラス・ケイジの「アウトブレイク」(Trespass・2011・米/ブルガリア)や「オブリビオン」を書いた人。その関係でオルガ・キュリレンコが出たのか。新作はないようだが、今後活躍してくれそうだ。

 監督はオーストラリア出身のロジャー・ドナルドソン。過去にはトム・クルーズがカッコ良かった「カクテル」(Cocktail・1988・米)を監督している。その後、シリーズ化されたエロティックSFアクションの「スピーシーズ種の起源」(Species・1995・米)を撮り、ボクは火山映画で一番面白かった「ダンテズ・ピーク」(Dante's Peak・1997・米)をピアース・ブロスナンで撮っている。そのつながりで本作に至ったのでは。そのあとも感動作「世界最速のインディアン」(The World's Fastest Indian・2005・ニラュージーランドほか)やジェイソン・ステイサムの「バンク・ジョブ」(The Bank Job・2008・英/米/豪)など面白い作品を手がけている。ただそれらの公開はB級扱いで、本作の前の作品、面白かったニコラス・ケイジの「ハングリー・ラビット」(Seeking Justice・2011・米)も、その流れがあったからかB級扱いで、すぐにDVDリリースという扱い。まあニコラス・ケイジだとその時点でB級という感じになってしまうが、こうして見てみると、もともとB級テイストの人だったのかも。

 ちなみに、原題のノヴェンバー・マンというのはピーターの暗号名だ。

 公開2日めの初回、豊洲の劇場は全席指定、当日劇場で前売り券で確保。10分前くらいに開場。ほとんど中高年で、メインは中年層。最初は男性10人くらいで、女性が3人くらい。最終的には267席に60人くらいの入り。あまり宣伝もしていないし、こんなものだろうが、内容的にはもっと拡大公開してもいいくらいの感じ。ちょっともったいないかも。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は......この劇場は4DXアトラクション・シアターというのに対応していて、3D、動くイス、フラッシュ、エアー、フォグ、かおり、などの効果があるという。臭い匂いは嫌だけど、上映する作品の内容次第じゃないかなあ。

 四角の枠の「ワイルドカード」はジェスソン・ステイサムの最新アクション。今度の役は用心棒らしい。とにかくアクションがすごそう。1/31公開。

 四角の枠の「パーフェクト・プラン」は、ジェームズ・フランコとケイト・ハドソンの顔合わせのアクション。偶然手に入れた闇の金3,500万円。あなたならどうすると。いつから公開か出なかった気がするが、公式サイトによると2/28公開。劇場がなあ......豊洲はちょっと遠い。


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