2015年1月25日(日)「KANO 1931海の向こうの甲子園」

KANO・2014・台・3時間05分

日本語字幕:丸ゴシック体下、島根磯美/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタルとドルビー・サラウンド7.1も)


公式サイト
http://kano1931.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1929年、日本統治下の台湾。嘉義農林学校の野球部は、ちゃんとした監督もいない弱小チームで、まだ1勝もしたことがなかった。見かねた浜田先生(吉岡そんれい)は野球チームの監督経験がある日本人の近藤兵太郎先生(永瀬正敏)に監督を依頼する。近藤は、日本人、漢民族、原住民(先住民)の混成チームを分け隔てなく厳しくしごいて、強いチームにしていく。そして1931年、ついに全島優勝を飾ると、台湾代表として甲子園大会に出場する。

86点

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 みごと! この高揚感! 素晴らしい野球映画。そして感動的な物語。全島優勝のシーンと最後の甲子園決勝戦では不覚にも涙が流れてしまった。しかも台湾映画なのに、日本統治時代が舞台のためほとんど9割くらいが日本語。街には日本語の看板が溢れている。これで台湾で大ヒットし、台湾の多くの映画賞を受賞している。休憩なしの185分が長くなかった。

 どうしても似たような海外野球秘話映画、「バンクーバーの朝日」(2014・日)と比較せざるを得なくなってしまうが、雲泥の差があるように思えた。あちらは野球がちっとも描かれていなかったが、こちらはきっちりと描かれている。当時の街並みの再現、登場人物のキャラクター、弱小チームの特訓、脱落者、応援する人々......さらには脚本、演出、美術、CGどれを取っても本作の方がはるかに優れていると思う。ということは、予算の問題もあるだろうが、プロデューサーの腕か。

 映画は第二次世界大戦末期の1944年から始まり、日本の軍人も描かれ、鬼監督と噂された近藤監督のスパルタ教育など(当時としては当たり前の)日本人の強圧的な態度が最初は気になる。しかし必要以上に描かれることはなく、それに対して批判的でもなく、被害者意識もない。ただ淡々と描いているだけ。特に近藤先生はそこに深い愛情があったことが描かれ、実際には1年早かったという日本人技師、八田によるダム建設などの灌漑事業も同時に盛り込まれている。

 近藤兵太郎監督は永瀬正敏。本作で台湾最大の映画賞「金馬奨」初の日本人の主演男優賞にノミネートされている。映画にはよく出ているようだが、ボクが見たのは「スマグラー おまえの未来を運べ」(2011・日)が最後か。最新作は見ていないが「まほろ駅前狂騒曲」(2014・日)。

 その妻に坂井真紀、ちょっとしか出でこないが台湾灌漑事業の設計者、八田與一に大沢たかお。

 Kano野球部のエース、呉明捷(ごめいしょう)はツァオ・ヨウニン。演じているのは現役の大学野球の外野手で、本作で注目され台湾電影奨の助演男優賞を受賞。日本の事務所にも所属しているらしい。

 野球部のキャストの多くは、実際に野球をやっているか、野球経験にある人が多いのだとか。この辺からも野球シーンに説得力があったわけだ。さすがに彼らの日本語は聞き取りにくかったが。

 脚本は、製作も兼ねるウェイ・ダーションとチェン・チャウェイの2人。ウェイ・ダーションは、台湾で大ヒットした台湾人男性と日本人女性のラブ・ストーリー「海角七号/君想う、国境の南」(海角七號・2008・台)の監督・脚本・製作でデビューした人。その後、日本統治下の台湾で起きた抗日暴動事件を描いた「セデック・バレ 第一部 太陽旗」(Warriors of the Rainbow: Seediq Bale - Part 1: The Sun Flag・2011・台)とその続編「セデック・バレ 第二部 虹の橋」(Warriors of the Rainbow II: Rainbow Bridge・2011・台)を監督・脚本。すごい人だ。どちらも見たかったが、上映劇場が小さかったので見ていないのが残念。

 チェン・チャウェイは本作が初めての脚本の模様。なぜ本作の脚本に選ばれたのか不明。今後の活躍に期待したい。

 監督はマー・ジーシアン。もともとは俳優で、本作が監督デビュー作。「セデック・バレ」で主要ロールを演じた人。実際、父親がセデック族なんだとか。さて次の監督作はどうか。勝負はそこだろう。

 冒頭とラストに日本軍が出てくるので、大砲やら小銃が出てくる。小銃は三八式歩兵銃だろうか。銃剣が取り付けられていた。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に劇場まで行って前売り券で確保。当日は15分前くらいに開場。20代から中高年まで幅広かったが、やはりメインは中高年。下は中学生くらいがいた。男女比は5.5対4.5くらいで男性。最終的には137席がほぼ埋まった。あまり広告していない割にはすごい。今後も増えるかも。

 上下マスクの「ミュータント・タートルズ」はリップスライムのミュッジック・ビデオのようなパターン。うーむ、内容で売る気は無いらしい。2/7公開。

 「幕が上がる」はモモクロ主演の学園ドラマのようで、きっとファンが押し寄せるのだろう。なんと監督は「踊る……」シリーズの本広克行。2/28公開。

 スクリーンが上下に狭まって、シネスコ・サイズになって、映画泥棒のあと本編へ。ちっちゃ。


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