2015年1月31日(土)「エクソダス:神と王」

EXODUS: GODS AND KINGS・2014・英/米/西・2時間30分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Red)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビーも)

(英12A指定、米PG-13指定)(3D上映、一部IMAX版もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/exodus/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

紀元前1300年、エジプトにヒッタイト軍が攻め入ろうとしていた。セティ王(ジョン・タトゥーロ)は自分の息子であるラムセス(ジョエル・エドガートン)と、王女に拾われ兄弟同様に育てられたモーゼ将軍(クリスチャン・ベイル)におそろいの剣を贈る。占い師が戦いを占うと、「次の王を救う者がリーダーとなり、民衆を導く」と出る。出陣したラムセスとモーゼはヒッタイト軍に奇襲を仕掛け勝利するが、あやうくチャリオットにひかれそうになったラムセスをモーゼが救っていた。人気を高めるモーゼだったが、セティ王が病死した後ラムセスが王位につくと、奴隷のヘブライ人の間で流布するモーゼはヘブライ人だという噂が総督によりもたらされ、モーゼは追放されてしまう。放浪を続けたモーゼは羊飼いの部族の族長の娘ツィポラ(マリア・ベルバルデ)と出会い、結婚。子供も生まれた9年後、神の山で謎の少年と出会い、「エジプトで奴隷となっている40万人のヘブライ人を助ける戦いために、将軍が要る」と告げられる。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 これは「聖書物語」の「出エジプト記」だ。エクソダスというのはそういう意味らしい。つまり「十戒」(The Ten Commandments・1956・米)であり、クリスチャン・ベイルはチャールトン・ヘストンで、ジョエル・エドガートンはユル・ブリンナーだ。ただし、超常現象的に描くのではなく、可能な限りリアルに、自然現象のように描いている。海は割れるのではなく、引き潮のように引いていく。モーゼは超人的人物ではなく、優秀だが普通の人間で、将軍で民衆を率いるリーダーだ。そこが映画的には弱いかもしれない。IMDbでは6.3点の低評価。

 とはいえ、いかにも映画らしい大きなスケールのスペクタクル。やっぱり絵がすごい。そして画質が良いので、2D版でもどことなく立体感があった。

 セティ王によって兄弟として育てられたモーゼとラムセスの微妙な関係もわかりやすかった。ただ、「聖書物語」で有名な話であり、勝手にストーリーを変えるわけにはいかず、最後はリドリー・スコット監督お得意の1対1の対決というわけにはいかなかった。そして壮大な物語であり、それを「十戒」の220分に対して本作は150分しかないので、どうしても出来事を追うだけになりがちだ。

 奴隷として連れてこられたヘブライ人が自分たちの国へ帰ると主張して戦うのだが、巨大なエジプト軍に対して少数しかいないので、ゲリラ戦を仕掛ける。それは戦略としてありなのだろうが、対象が軍ではなく一般市民。民衆の生活を脅かして、それで民衆から王に圧力をかけさせようとする。食料庫を燃やし、輸送船を焼き討ちする。いくら主張が正しくても、これはまるでテロではないか。だからか、神のメッセンジャーである少年が現れて、モーゼに対して「失敗を見に来た」と言わせてはいるが。でも、何もせずに見ていろと言って、結局は天変地異などによって一般市民を巻き込んで大きな悲劇を巻き起こすのって、同じようなことではないのか。

 モーゼはクリスチャン・ベイル。私生活はともかく、演技は素晴らしい。基本、シリアスな役柄ということになるが。最近で言えば「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)や、「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)、シリーズ最新作の「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)が良かった。

 敵となるラムセスはジョエル・エドガートン。ユル・ブリンナーのようにスキン・ヘッドで異国情緒を醸し出しているが、髪があると普通の西洋人っぽい。オーストラリア生まれ。「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)の部隊のリーダーや「華麗なるギャツビー」(The Great Gatsby・2012・豪/米)の大富豪の夫などをやっている。

 ほかに先王のセティにジヨン・タトゥーロ、その王妃にシガーニー・ウィーヴァー、ヘブライ人のヌンにベン・キングスレーなど、有名俳優も多く出ている。

 妻となる美女ツィポラはマリア・バルベルデ。実際にはスペイン生まれ。2003年くらいから映画に出ているが、ほぼ日本では公開されていない。たぶん本作が初めて。今後の活躍に期待したい。

 脚本はアダム・クーパー、ビル・コラージュ、ジェフリー・ケイン、スティーヴン・ザイリアンの4人。アダム・クーパーは面白かったベン・スティラーのコメディ「ペントハウス」(Tower Heist・2011・米)の原案を作った人。ビル・コラージュも原案を作っていて、ほかの作品は日本で劇場公開されていない。

 ジェフリー・ケインは「007/ゴールデンアイ」(GoldenEye・1995・英/米)や「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・英/独ほか)を書いた人。

 スティーヴン・ザイリアンは古くから活躍している人で、「レナードの朝」(Awakenings・1990・米)や「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)を書いている。最近だと「マネーボール」(Moneyball・2011・米)を書いている。

 監督はリドリー・スコット。1937年生まれなので78歳。最近は製作総指揮が多いものの、バリバリの現役監督だ。本作の前は「エイリアン」の続編となる「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)、そして救いのない犯罪物語「悪の法則」(The Counselor・2013・米/英)を撮っている。いずれも大きな話題になった。

 ちなみに原題はGODS AND KINGSと複数形になっている。対決の形としてはモーゼとラムセスなのだが、そういう話ではないということなんだろう。お得意の1対1の対決もなかった。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、2D上映の初回。ムビチムカードで金曜に確保。当日は12〜13分前に開場。ほとんど中高年の高寄りで、若い人はわずか。男女比は半々くらい。最終的には157席がほぼ全て埋まった。

 スクリーンは小さいが近いので大きく感じる。椅子はなかなかいい感じ。ビスタで開いていたので嫌な予感。QPのCMは意味不明なものからようやくCMらしいものに変わった。色は相変わらず浅いが。

 上下マスクの「愛を積む人」は海外の小説が原作。舞台を北海道に置き換えたらしいが、ティーザーなので内容はよくわからなかった。6/20公開。

 上下マスクの「アメリカン・スナイパー」は新予告。スナイパーが狙っていると子供がRPGに手を伸ばす。「やめろ」といいながらトリガーに指をかける。誰かがやらなければならない仕事。任務なら撃たなければならないが……。2/21公開。

 「ナイト・ミュージアム エジプト王の秘密」は新予告に。ロビン・ウィリアムズの遺作だが、「2」は残念だったし、他のことがやれるとは思えない。見る価値があるか。3/20公開。

 悪い予感通り、ビスタのスクリーンに上下マスクで本編上映。デジタルだとアナモフィック・レンズはいらないということなのか。


1つ前へ一覧へ次へ