2015年2月1日(日)「ワイルドカード」

WILD CARD・2015・米・1時間32分

日本語字幕:丸ゴシック体下、平井かおり/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、〈IMDbではデジタル、Red〉)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://wildcard-movie.com
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ネバダ州ラスベガス、弁護士事務所の片隅を借りボディガード業をやっているニック・ワイルド(ジェイソン・ステイサム)のもとに、元恋人のホリー(ドミニク・ガルシア=ロリド)から連絡があり、ある男に暴行され瀕死の重傷を負ったという。訴えるため、何者か調べて欲しいという。一流ホテルのペントハウス・スイートだったと聞き、悪い予感がしたニックは一度は断るが、ツテを使って調べると、イタリア・マフィアのダニー・デマルコ(マイロ・ヴィンティモリア)と判明。絶対に関わってはいけないと言われ、ホリーにもわからなかったと告げるも、何をされたか詳しく聞かされ、名を伝えてしまう。すると、訴えるのではなく、復讐したいから手伝ってくれと話が変わってくる。結局ニックはペントハウス・スイートに1人で乗り込み、ドアをノックする。

76点

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 面白かった。なにか暴力シーンが展開しそうな緊張感というか不安感のようなものが常に根底に流れつつ、主人公のジェイソン・ステイサムは愛想はないが優しくて頼もしく、強い。そしてどこかに余裕からくるものなのか、かすかなユーモアのようなものが隠し味となって、多くのステイサム映画にも通ずるのだが、いい雰囲気にまとまっている。

 わずか92分の作品だが、これが短く感じず、ちょうど良い長さ。ここまでの暴力と、とんでもない悪党をこれ以上長く見せられたら、うんざりしてしまうかもしれない。いい頃合いで決着がつく。うまいなあ。アクションとドラマのバランスも、ちょっとアクションが少なめな気はするも、たぶんこれがちょうどいいのだろう。

 いい女、いい男、とんでない金額の1発勝負のギャンブル、悪党どもをぶちのめす、素手対銃……アクション映画のオモシロ要素がキッチリ盛り込まれている。しかも痛快。ちょっとピカレスク的でもある。そしてドラマ的要素として、暴力、アル中、ギャンブル中毒、娼婦、マフィア、夢の地としてのコルシカ島、街を出て行く夢などが盛り込まれている。本作はこれらが上手く融合しているわけだ。ちょっと暴力描写がどぎついが、よくできていると思う。見ている間、別の世界にいたようだった。I MDbでは厳しい評価で、わずかに6.1点。

 アバンは狙いで、あえてステイサムが小悪党のような役。見たのは失敗かと思ったら、次第になんとなく展開が読めてきて、タイトル後に種明かしがされる。本作はボディガードの設定だが、実際にやっているのはラスベガス案内人(21歳未満のギャンブル後見人)や便利屋、探偵、用心棒的な仕事で、しかも元特殊部隊という設定。もはやステイサムはそれだけでキャラクターになってしまったようだ。他の作品でも、名前や設定は違っても、演じているのは元特殊部隊的な隠れたヒーロー、ステイサムだ。同じといえば同じで、ここをどう評価するか。

 ニック・ワイルドはジェイソン・ステイサム。まあ、映画に出まくり。すでにアクション映画に欠かせないキャラクターに。だから今はどの映画に出ても、役というより、ジェイソン・ステイサムというキャラクターになってしまった感じも。もちろんハズレもあるが、その率は低い。B級では「PARKER/パーカー」(Parker・2013・米)も「バトルフロント」(Homefront・2013・米)も面白かった。ハリウッド大作では「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」(The Expendables 3・2014・米/仏)に出ていた。

 元恋人のホリーはドミニク・ガルシア=ロリド。美人だなあと思ったら、俳優のアンディ・ガルシアの娘さんなんだとか。なんと予告ではきわどいシーンもあったが、本編ではなし。演技力もあって、いい味を出していた。映画デビュー作は12歳の時、父主演の「悪魔たち天使たち」(Steal Big Steal Little・1995・米)で、ここでは石橋貴明も出ていたらしい。その後日本劇場未公開作やTVに出演して、本作に至るらしい。今後期待できるかも。

 ボディガードを依頼する若い男サイラス・キニックはマイケル・アンガラノ。古くは子役として、メリル・ストリープの「ミュージック・オブ・ハート」(Music of the Heart・1999・米)や、見ていないが「あの頃ペニー・レインと」(Almost Famous・2000・米)、競馬を描いた「シービスケット」(Seabiscuit・2003・米)などに出ている。最近は日本劇場未公開作が多く、どうにかジャッキー・チェンとジェット・リーが共演した「ドラゴン・キングダム」(The Forbidden Kingdom・2008・米/中)と残念なスパイ活劇「エージェント・マロリー」(Haywire・2011・米/アイルランド)があるくらい。とぼけた感じがいい。

 イタリア・マフィアのお坊ちゃんボス、ダニー・デマルコはマイロ・ヴィンティモリア。どんどん残念になっていった人気TVの「HEROES/ヒーローズ」(Heroes・2006〜2010・米)シリーズで、ピーター・ペトレリを演じていた好青年。こんな怖い役ができるとは、さすが。映画では「アーマード武装地帯」(Armored・2009・米)やジェラルド・バトラーの「GAMER」(Gamer・2009・米)、そしてロバート・デ・ニーロとジョン・トラヴォルタが共演した「キリングゲーム」(Killing Season・2013・米/ベルギー/ブルガリア)などに小さな役で出ていた。最近作は残念な「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」(Grace of Monaco・2014・仏/米ほか)。

 ほかに小さな役で冒頭に出てくるのは「マチェーテ・キルズ」(Machete Kills・2013・露/米)の美女ソフィア・ベルガラ、カジノのディーラーで「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)のホープ・デイヴィス、ダイナーのウエイトレスに残念な「6デイズ/7ナイツ」(Six Days Seven Nights・1998・米)以降すっかり見かけなくなったアン・ヘッシュ(本作は良かった)、怖い大ボス役で「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米/仏)のスタンリー・トゥイッチらが出ている。

 原作・脚本は二度のアカデミー脚本賞に輝くウィリアム・ゴールドマン。受賞作は「明日に向かって撃て!」(Butch Cassidy and the Sundance Kid・1969・米)と「大統領の陰謀」(All the President's Me・1976・)。ボクの好きな「ホットロック」(The Hot Rock・1972・米)も書いている。本作は小説「HEAT」の映画化。最近の作品は「アトランティスのこころ」(Hearts in Atlantis・2001・米/豪)や残念な「ドリームキャッチャー」(Dreamcatcher・2003・米/豪)を書いているが、その後ずっとなかった。まあ、なにしろ83歳だ。

 アクション監督はコリー・ユン。京劇チーム「七小福」の1人。「リーサル・ウェポン4」(Lethal Weapon 4・1998・米)からハリウッドに進出したらしい。ジェイソン・ステイサムとは「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)シリーズでずっと仕事をしている。最近では残念な「アイアン・フィスト」(The Man with the Iron Fists・2012・米/香)や、「ドラゴン・コップス -微笑(ほほえみ)捜査線-」(Badges of Fury・2013・中)などを手がけている。

 監督はサイモン・ウェスト。アクション快作「コン・エアー」(Con Air・1997・米)で監督デビューした人。その後「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」(The General's Daughter・1999・独/米)や、ジェイソン・ステイサムを使ったリメイク「メカニック」(The Mechanic・2011・米)、ハリウッド大作「エクスペンダブルズ2」(The Expendables 2・2012・米)、ニコラス・ケイジの「ゲットバック」(Stolen・2012・米)などを撮っている。基本アクションの人だろう。

 登場した銃は、ボスが彫刻入りシルバーのガバメントと、部下もハンドガンを持っていたがメモし忘れた。主人公が銃が嫌いという設定なので、あまり銃は出でこない。

 新宿の劇場は2/1が映画の日ということで1,100円で見られる。入り口から大混乱。すごい人。映画は高いから人が入らないのか、人が入らないから高いのか。これを見ると安くしたらもっと若い人が来るような気がした。普段から狭いロビーも人だらけ。正直なところ、こういう人は普段映画にこない人も来るから、いい迷惑なのだ。マナーを知らない人が多い。暗くなっても平気でケータイを煌々と光らせて使っている。まったくもって迷惑。眩しくて仕方がない。スクリーンで「携帯はオフに」と言っているのに、画面の操作に夢中で聞いちゃいない。エンドクレジットになるとすぐつけるし。外に出てからやれ。暗くなってから遅れて入ってきて堂々とケータイを使うし。忙しいなら来るな。

 公開2日目の前売り券で金曜に座席を確保し、当日は12〜13分前に開場。観客層は若い人から中高年まで幅広く、意外と若い人が多かった。安ければ若い人も来るのだ、きっと。男女比は6対4で男性の方が多かった。最終的には148席がほぼ全て埋まった。

 ビスタ・サイズで半暗になって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「リピーテッド」は、ニコール・キッドマンが記憶障害の妻を演じるリドリー・スコット製作のミステリー。5/23公開。

 上下マスクの幕末ゾンビという「新撰組オブ・ザ・デッド」はバナナマン日村やチャドが出るコメディ。なかなか見た目は怖かった。4/11公開。

 時空警察の活躍を描くという上下マスクの「プリデスティネーション」はSFサスペンス・アクション。主演はイーサン・ホーク。2/28公開。

 スクリーンの上下が狭まってシネスコ・サイズになって暗くなり、本編へ。ちっちゃ。


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