2015年2月8日(日)「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」

MORTDECAI・2015・米・1時間47分

日本語字幕:黒フチ丸ゴシック体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(デジタル、by Panavision)/ドルビー・デジタル、 DATASAT(IMDbではドルビー・サラウンド7.1も)

(米R指定)(日本語吹き替え版もあり)

公式サイト
http://www.mortdecai.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

イギリス、オックスフォード、絵画修復士のもとから修復中のゴヤの絵画が強奪され、修復士は弓によって殺される。国際テロリストとして手配される人物の関連が疑われたため、MI5のマートランド警部(ユアン・マクレガー)が担当することになる。そして、彼は絵画にくわしいインチキ美術商で友人のチャーリー・マルデカイ(ジョニー・デップ)に、協力しないと訴追すると脅し、半ば強引に捜査に引きづり込む。実はマートランドはチャーリーの妻で、これも同級生のジョアンナ(グウィスル・パルトロー)に学生時代から惚れていたのだ。それを知りつつ、チャーリーは回収した絵画の10%の協力費を約束させ、用心棒兼執事のジョック(ポール・ベタニー)を連れ、まずは美術商仲間から聞き込みを始める。マルデカイ家は税金滞納など破産寸前だった。

60点

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 始まってすぐ眠くなり、ほぼ全編、半分気を失っていた。なんだこれは。下ネタ満載のお下劣コメディ。映像表現はそれほど過激ではないけれど、言葉、セリフはかなりひどい。TVなら「ピー」と入りそうな単語連発。ストーリーの展開も、登場人物もかなりいい加減。どうでもいい人たちが、どうでもいいことをやらかし、どうでもいい結末に終わると。ジョニー・デップのファン以外は見所がないのでは。

 ゲラゲラ笑っていた人が2人くらいいた他は、クスクス笑いが少しだけ。コメディというよりは悪ふざけに近い印象。ジョニー・デップが、この映画のプロモーションで彼女を連れて来日していたが、自身がプロデューサーの1人なので、客が入ってくれないと困るからだろう。記者会見を体調不良でドタキャンしたのは、出来が悪かったからじゃないかと邪推したくなる。

 とりたてて見所もなし。日本語吹き替えもあるそうだが、ヴァジャイナやクリトリスなんかどう訳しているのだろう。字幕はアソコやクリちゃんになっていたが。日本語字幕も一部が酷かった。「めちゃ、でかっ」「……だもん」「……だってば」マンガの吹き出し感覚なのだろうか。無理して若者の言葉を取り込んだような違和感。読みにくいし、浮いている。これらが作品の印象をより悪くしている。

 銃は、用心棒のジョックがワルサーP38、ロシア人の用心棒がマカロフ、モルデカイの貴族仲間や農夫が水平二連ショットガン。MI5のマートランドがPPK、富豪クランプの娘ジョージアがP230/232。アーマラーはベン・ロズウェルしか見つけられなかったが、IMDbではほか数名。

 チャーリー・マルデカイはジョニー・デップ。インタビューなどを見ると普段は酔っ払ったようなダラダラしゃべりのようだが、映画の中では割とシャキシャキしている。本作より先に、これから公開される「イントゥ・ザ・ウッズ」(Into the Woods・2014・米/英/加)に出ている。その前に本劇場公開されたのは「トランセンデンス」(Transcendence・2014・英/中/米)。これはS Fのシリアスもの。コメディ系が多いようだが、最近はどれもあまり評価は高くない。本作では製作も担当している。

 ジョアンナはグウィスル・パルトロー。この人も最近パッとしない印象。本作の前はシリーズ最新作「アイアンマン3」(Iron Man 3・2013・米/中)うーむ、きれいな人なんだけど。

 面白い味を出していたのは用心棒兼執事ジョックのポール・ベタニー。硬い役か怖い役ばかりかと思いきや、こんな役もできるとは。とはいえ、タイトルのせいで注目されなかった気がする痛快作「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)では変な役だったが。「トランセンデンス」や「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏/伊)でもジョニー・デップと共演している。うまいなあという感じ。

 そしてMI5のマートランド警部はユアン・マクレガー。甘い二枚目という感じだが、本作の前に出ていた「ガンズ&ゴールド」(Son of a Gun・2014・豪)は日本では小さな劇場での限定公開。さらにその前が「荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜」(A Million Ways to Die in the West・2014・米)でラジー賞候補作と振るわない感じ。

 原作はキリル・ボンフィリオリの「チャーリー・モルデカイ(1) 英国紳士の名画大作戦」(角川書店刊)で、ユーモア・スパイ小説なんだとか。それを脚本にしたのはエリック・アロンソン。公式サイトによると、10年前にロンドンの本屋で原作を見つけ、脚本にしたらしい。しかしそれは残念な結果と言わざるを得ないのでは。他にラブ・コメの「オン★ザ★ライン 君をさがして」(On the Line・2001・米)という残念な作品を書いているらしい。それで本作をよく映画化できたなあ。

 監督はデヴィッド・コープ。監督より脚本家として活躍している人。過去には「トイ・ソルジャー」(Toy Soldiers・1991・米)や「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park・1993・米)、「ザ・ペーパー」(The Paper・1994・米)に「ミッション・インポッシブル」(Mission: Impossible・1996・米)などもあるが、最近はジョニー・デップの残念なミステリー「シークレットウィンドー」(Secret Window・2004・米)を監督・脚本、リメイクS Fパニックの「宇宙戦争」(War of the Worlds・2005・米)、冒険SF「ザスーラ」(Zathura: A Space Adventure・2005・米)、ユアン・マクレガーが出たミステリー「天使と悪魔」(Angels & Demons・2009・米/伊)などの残念な脚本を手がけている。「エージェント・ライアン」(Jack Ryan: Shadow Recruit・2014・米/露)はまあまあ面白かったが。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケカードでインターネットから確保。当日は15分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広い。ファミリーもちらほら。男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多い。やはりジョニー・デップ・ファンか。最終的には157席ほぼすべて埋まった。すごいが、今後増えるとは思えない。

 運が悪いことに、座った席の両隣がマナーなしオバサンとマナーなし中年、わざわざ半クラになってからケータイを取り出し、メールチェックぽい動作。眩しいっての。本編が終わるとまだエンド・クレジットが流れているのにケータイをつける。出てからやれ。両側でやられるとたまらないものがある。しかもスクリーンでは「ケータイはオフに」なんてやってるのに、まったく聞いちゃいない。その上、ついさっきまでタバコを吸ってたやつが近くにいたらしく、タバコ臭いのなんの。さんざんだった。せめて映画が面白ければ……。

 気になった予告編は……「マジック・イン・ムーンライト」はウッディ・アレンの新作。若い女性の霊能者が本物かどうか見極めようとする男性マジシャンの話らしい。ただ画質がとても悪く、新作とは思えなかった。昔の映画を見ているかのよう。予告がこれでいいのか。テーマは面白そうなんだけど、はたして。ポイントで見るならいいか。4/11公開。

 あとは何度も見た予告ばかりで、いまひとつ。ビスタのまま上下マスクで本編へ。アナモフィック・レンズを使っていないのか。なんだか家のテレビでブルーレイを見ているような感覚。劇場がこんなことでいいのか。


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