2015年2月28日(土)「アナベル 死霊館の人形」

ANNABELLE・2014・米・1時間33分

日本語字幕:手書き風書体下、佐藤真紀/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri Alexa)/ドルビー・デジタル、 DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/annabelle/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1970年代初めのアメリカ。カリフォルニア州パサディナに住むミア・フォーム(アナベル・ウォーリス)は赤ちゃんを身ごもっていて、夫のジョン(ウォード・ホートン)からプレゼントのアンティークな人形をもらう。その夜、ミアは深夜に隣家の悲鳴を聞いて目覚める。夫に話すと隣家に確認に行くが、血だらけで飛び出してきてすぐに救急車を呼べという。ところがミアが電話している間に、隣家を襲撃した男女が侵入してきて男に腹を刺されるも、間一髪のところで駆けつけた警官が男を射殺。女は自ら首を切って、人形を抱えたまま息絶える。そしてその血が人形の目に入る。その後、奇妙な現象が起こるようになり、出産を機に引っ越しし、人形も捨ててしまう。ところが、引越し先の荷物から、捨てたはずの人形が出てくる。

62点

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 始まった瞬間、いきなり怖そうな音。おいおい、音で脅かすパターンか。しかも見所なし。魅力的な俳優も出ていないし、特に美男美女でもないし、演技がすば抜けてうまいわけでもないし、派手な特殊効果もないし、感動的なストーリーもないし、魅力的なキャラクターもいないし、大して怖くもない......ただ音で脅かすだけ。怖いではなくビックリ。誰でもできるだろ。しかもビックリさせるところはほぼすべて予告で出てしまっていて、ほかにはない。ないない尽くしではないか。

 音楽、効果音はすべて脅かすために使われている。緊張緩和や安心とかいったシーンには一切使われていない。つまりセリフ以外の音は、すべて脅し。何だ、これ。もう最初から音で脅そうという気満々じゃないか。そんなのはホラーじゃない。だだのビックリ・ハウスだ。ということは、ストーリーも必要ないし、巧妙な伏線とか、本能に訴えるような恐怖とかも必要ない。怖そうな絵と、突然の大きな音があればいい。

 そしていけないのが、大したストーリーもないのに、ドラマ風に撮ろうとして、特に前半を何もないのに意味ありげに撮ってしまったこと。退屈だ。しかも最終的には悪魔の話になるわけで、幽霊ではない。日本人的には幽霊は怖くても、悪魔はピンとこない。幽霊の祟り話の後ろにあるのは、宗教的な儀式と悪魔だ。西洋の人々は(キリスト教の人は)、悪魔が一番恐ろしいのだろう。バチカンも認めた夫婦がいると神父に振っておかせながら、そうはならずに終わってしまう。予算がなかったのかもしれないが、この程度のドラマならば、最後はせめて専門家の夫婦に来てもらって大決戦を見せて欲しかった。

 前作の実話に基づいた「死霊館」(The Conjuring・2013・米)はなかなか面白かったのに。どうして、あの線で行かなかったのか。あれも結局は悪魔だっだけど。

 実話、実話というが、その説明で心霊学者が封印したとかという記述があるが、そもそも心霊学というアカデミックな学問はあるのだろうか。個人、民間の自称ではなく、科学的に認められた学問としての心霊というものが。なければ心霊学者もいないことになり、話は嘘ということになる。この辺からして微妙。自称では何でもありだ。となると人形の存在も怪しくなってくる。いわく「いまも神父が月に2回祈祷している」とかなんとか。

 冒頭の色を抑えたリアル風インタビューは何だったんだろう。ほぼストーリーに関係がない。実は、あのインタビューに答えていた女性が、この話の赤ん坊だったとか、何かしらの繋がりとかオチがないとなあ。意味ないじゃん。真実味を出したかっただけか。

 銃は、冒頭、警官が4インチ・クラスのリボルバー。隣家に侵入した男を射殺するのに使う。

 主役となるミアはアナベル・ウォーリス。ちょっとアメリカ駐日大使のキャロライン・ケネディを若くしたような感じ。イギリス生まれで、ほぼTVと日本劇場未公開作品が多く、レオナルド・ディカプリオの「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米/英)や、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米/英)に小さな役で出ていたらしい。ちょっと主役としては弱かったかも。

 何の力にもならない頼りないペレツ神父はトニー・アメンドーラ。T Vによく出ている人で、たぶん話題作のほとんどに出ている。映画はドラッグ・ディーラーの半生を描いたジョニー・デップの「ブロウ」(Blow・2001・米)や、面白かった冒険活劇の残念な続編「レジェンド・オブ・ゾロ」(The Legend of Zorro・2005・米)に出ている。どちらかというと悪役のイメージだが、本作はいい人。

 冒頭の隣家の夫ピートは、ブライアン・ホウ。脇役でよく見かける人で、たくさんの人気T Vに出ている。映画はホームレスから億万長者になった実話を映画化した「幸せのちから」(The Pursuit of Happyness・2006・米)やイーストウッド監督・主演の傑作「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米/独)に出ている。

 ミアを助ける黒人女性のエブリンはアルフレ・ウッダード。「それでも夜は明ける」(12 Years a Slave・2013・米/英)に出ていた。TVも映画もよく出ている。

 残念な脚本はゲイリー・ドーベルマン。TVムービーやビデオ作品は書いているが、劇場長編映画は初めての模様。ただ、クレジットはされていないものの「ファイナル・デッドブリッジ」(Final Destination 5・2011・米/加)やマイケル・ベイの残念なリメイク版「エルム街の悪夢」(A Nightmare on Elm Street・2010・米)のリライトをしているらしい。もともとホラー系というかゲテモノ系を書いているよう。うむむ。

 監督はジョン・R・レオネッティ。13歳から映画業界に関わっていたようで、カメラ助手からオペレーターを経て撮影監督になった叩き上げ職人。本作ではプロデューサーをやっているジェイムズ・ワンの監督作品「インシディアス」(Insidious・2010・米/加)や「死霊館」(The Conjuring・2013・米)の撮影監督を務め、それらが評価されてワンに抜擢されたらしい。

 プロデューサーのジェイムズ・ワンはマレーシア出身で、衝撃的だったミステリー・ホラー「ソウ」(Saw・2004・米/豪)の監督。制作総指揮もよくやっているが、どれも残念なものが多く、良かったのは自身が監督したものだけという感じ。ホラーではない新作「ワイルド・スピードSKY MISSION」(Furious 7・2015・日/米)は近日公開だが、どうだろう。真価が問われることになるかも。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にたまったポイントを使い劇場窓口で確保。当日は13分くらい前に開場。観客層は若い人から中高年まで幅広かったが、157席に4割ほどの入りはかなり少ないのでは。男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。

 スクリーンはビスタで開いていて、そのまま上下マスでの上映。今後シネスコはレンズを使わずに上映するんだろうか。なんだか騙されたような気がしてしまうのは被害妄想か。

 この日は「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル」の公開初日で、ファンで大混乱。とんでもなく混んでいた。アニメはスゴいなあ。しかも今回は年齢層がちょっと高かったような気がする。それでも長蛇の列をなして関連商品を買っていた。

 気になった予告編は...... ウイル・スミス主演の上下マスク「フォーカス」は、詐欺師のグループに美人の詐欺師見習いが入ってきて、最後の大仕事に挑む話らしい。ウイル・スミスはこのところパッとしないが、はたして。5/1公開。

 上下マスクの「ジュピター」はこのところよく予告が流れている。とにかく絵がすごい。SFは絵が命のところもあるから期待したいが、ヒロインが、美人なんだけれど、日本人的にはちょっとピンとこない感じが......。ウォシャウスキー姉弟監督は「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)シリーズ以外はいまひとつだからなあ。3/28公開。

 上下マスクの「ストレイヤーズ・クロニクル」はどうしてもアメリカの「クロニクル」(Chronicle・2012・米)と、日本の韓国映画リメイクの「MONSTERZ モンスターズ」(2014・日)が連想されてしまって...... ちゃんと原作はあるようなんだけど。6/27公開。


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