2015年3月7日(土)「ソロモンの偽証 前篇・事件」

2015・松竹/木下グループ/博報堂DYメディアパートナーズ/朝日新聞社/GyaO!/KDDI・2時間01分

シネスコ・サイズ(レンズ、表記なし〈IMDbではArri〉)/表記なし(IMDbではドルビー・デジタル)


公式サイト
http://solomon-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

城東第三中学に新任教師、中原涼子、旧姓藤野涼子(尾野真千子)が赴任してくる。彼女は校長の求めに従い、この学校で伝説となった23年前の出来事の当事者として、事件を語り始める...... 藤野涼子(藤野涼子)は1990年12月25日、2年A組のクラス委員でウサギの世話を担当しているため野田健一(前田航基)とともに早く登校し、通用門で雪に埋まったクラスメートの柏木卓也(望月歩)の死体を発見する。遺書がなかったものの、警察と学校は自殺と断定し発表する。そんな中、刑事の娘である藤野と津崎校長(小日向文世)のもとに、ボクと名乗る人物から告発状が届く。そこには2年B組の大出(清水尋也)をリーダーとする不良グループ3人によって、柏木が屋上から落とされるところを見たと書かれていた。それを嗅ぎつけたTV局のHBCの茂木ディレクター(田中壮太郎)が他殺前提の強引な取材を始め、世間が騒然とする中、警察と学校による保護者説明会が開かれる。城東警察署の佐々木礼子警部補(田畑智子)は、告発状の矛盾点を指摘して保護者を納得させる。そんなとき不良グループにいじめられていた2Aの三宅樹理(石井杏奈)の友人、浅井松子(富田望生)が交通事故で死亡する事件が発生する。それに責任を感じた津崎校長は辞職、樹理も声が出なくなってしまう。柏木の事件がまだ終わっていないことを実感した藤野は、真実を知るために、生徒たちだけで裁判を開くことを提案する。

76点

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 画質、悪っ! まるで昔の映画みたい。話が23年前のバブルがはじける頃ということでわざとそうしているのかもしれないが(ちょっと黄色味を帯びた色調)、最近はデジタルの高画質が当たり前になってきて、ハリウッドは当たり前として、邦画の予告編でも高画質のものが多くなってきている。そんな中で、直前に上映された予告編より本編の画質が悪いなんて......。のっけからガッカリさせられた。せっかくのスカイツリーからのパンダウン、咲き誇る桜に子供たちのいるグラウンドという絵が......。演出にも古く感じられるところがあって、テーブルを挟んで話しているところにカメラが寄っていく感じは、昔の映画によくあった手法。ちょっと芝居がかっている。それと、冒頭の被害者の顔は逆さまで、雪に埋もれていて、よく認識できなかった。そのため、あとで幻のように出てきても、認識できなかった。これは演出プランとしてどうなんだろう。

 しかし、物語は現代的で衝撃的。つい最近の川崎・中一殺害事件ともダブルような、リアルな設定と展開。学校のいじめ、不良、横暴な教師、思春期の不安定に揺れ動く心と、感情の爆発のはけ口、事件を穏便に早く終わらせたい学校側と、関わりたがらない警察、独善的でいい加減なTVマン....... 実に多くの人々が登場し、それぞれにリアルで存在感がある。だからこういう展開になってしまうのが、よく伝わってくる。あまりにリアルで、身近で、日常を思い出させてうんざりな感じもあったが、その中で主人公は悩んだ末に立ち上がる。この辺が映画らしい。ただし、話はここまで。本作は前編なのだ。

 やはり生徒たちがリアルでなかなかいい。オーディションで選ばれて、本作で初めて演技に挑む人もいるらしいが、演じている感があまりなく、等身大で概ねいい雰囲気。裏表というより、人によって振れ幅が違う感じで、それぞれに純粋という感じ。それに対して大人たちは、だいたいどこかおかしい。裏表があって、信用できない感じ。たぶん意図的な設定・演出なのだろう。若干、わざとらしいステレオタイプな感じもあったが、それでもいそうなキャラクター。

 いじめの不良グループが3人で、リーダー格の問題児に、取り巻き2人というのには、ぞっとした。まるで予言しているかのような設定だ。彼らもひどいが、この映画で一番悪く見えたのは、HBSというTV局のT Vマン。記者ならもっと真面目に取材をしそうなものだが、ワイド・ショーのディレクター風のこの男は勝手な思い込みで、正義を振りかざしてメディアという暴力をふるう。「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)の赤星的な人物をもっと悪くした感じ。こういう奴が一番たちが悪い。

 登場人物が多く、大人の役に有名俳優を配しているので、まるでオール・スター・キャストのような感じ。ここまでの必要があったのかどうか。シリアスなテーマなのに、エンターテインメントの雰囲気が漂ってしまう。むしろここは、有名俳優を少なくして、実力派のいかにもいそうな俳優を揃えたほうがよかったのではないだろうか。キャストでも保険をかけたかったのだろうという気はするが、逆効果ということもありえるわけで......。

 藤野涼子は本作でデビューする藤野涼子。役名をそのまま芸名にしたらしい。2000年生まれというから15歳で、まさに等身大。本作が失敗したら出だしからつまずくことになると思うが、この感じなら大丈夫そうだ。

 いじめっ子の大出は清水尋也。乱暴な役は誰でもうまいと言われるが、なかなかの不良っぽさ。「渇き。」(2014・日)では逆にいじめられっ子を演じていたそうで、最新作は「ストレイヤーズ・クロニクル」(2015・日)。期待できるかも。

 藤野涼子と一緒に裁判をやろうとする野田健一は前田航基。お笑いコンビ「まえだまえだ」の兄だ。ちょっとぽっちゃりしてしまったが、等身大の感じで良かった。すでにたくさんのTVに出ている。

 謎の少年、他校の神原和彦は板垣瑞生。存在感があって、さわやかキャラ。「闇金ウシジマくんPart2」(2014・日)で劇場長編映画デビューし、最新作は「アオハライド」(2014・日)だとか。

 ちょっとねじれているいじめられっ子三宅樹理の友人、浅井松子は富田望生。この子もいそうな感じが素晴らしかった。なんと本作が劇場長編映画初出演らしい。今後期待できそう。

 原作は宮部みゆきの同名小説。構想15年、執筆に9年かかったという。そこまで時間をかけられるのもすごい。脚本は真辺克彦。映画では衝撃的なミステリー「脳男」(2013・日)を、本作の監督、成島出とともに書いている。また成島出の監督作品「草原の椅子」(2013・日)や、松岡錠司監督の「歓喜の歌」(2007・日)や「映画深夜食堂」(2014・日)を書いている。「脳男」以外は見ていないが、ミステリーの構築が上手い気がする。

 監督は成島出。脚本家でスタートして、「油断大敵」(2003・日)というコメディから監督をやるようになったらしい。この時の脚本家が真辺克彦だ。その後、監督がメインとなり、「ミッドナイトイーグル」(2007・日)や「クライマーズ・ハイ」(2008・日)など多くの作品を手がけ評価を高めていった。そして「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011・日)や「脳男」を撮り、「ふしぎな岬の物語」(2014・日)でモントリオール映画祭審査員特別賞などを受賞する。普通のドラマでも活躍することだが、ボク的にはミステリーやアクションで手腕を発揮してほしい。

 エンド・クレジットの後、予告が少々あり。

 新宿の劇場は全席指定。ムビチケで確保し、当日は12〜13分前に開場。スクリーンはシネスコ・サイズで開いていた。観客層は若い人から中高年までわりと幅広く、小学校低学年の子供を連れたおばあさんもいたが、小さな子供に見せても大丈夫か。男女比は3.5対6.5くらいで女性の方が多く、特に若い女性が目立っていた。

 気になった予告編は......左右マスクのアニメ「境界の彼方」はTVアニメの映画化らしい。なかなかタイトルが出ずイライラした。最後の最後に出すなんて、覚えて欲しくないのか。3/14公開。

 左右マスクの「天の茶助」は松山ケンイチ主演、SABU監督のファンタジーらしい。なんだか「天国から来たチャンピオン」(Heaven Can Wait・1978・米)というか、TVドラマの「アナザー・ライフ-天国からの3日間-」(Twice in a Lifetime・1999-2001・加)みたいな印象。6/27公開。

 左右マスクの「トイレのピエタ」はちょっと苦手な雰囲気。しかし画質はとても良かった。ただタイトルをもっと早く出してくれないと。最後に1回って。6/6公開。

 左右マスクの「パトレイバー首都決戦」は実写版。SFXがすごそうだったが、ロボット・アクションとはいえ押井守監督だから普通のパターンではないのだろう。5/1公開。

 関係者らしい人々が立ち代り入ってきて気になった。マスクが左右に広がって、本編へ。


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