2015年3月14日(土)「イントゥ・ザ・ウッズ」

INTO THE WOODS・2014・米/英/加・2時間05分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/字幕監修あり/シネスコ・サイズ(デジタル、by Panavision(IMDbではArri))/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも、公式サイトではドルビーサラウンド7.1&5.1と表記)

(米PG指定、英PG指定、加PG指定)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/woods.html
(全国の劇場リストもあり)

むかし、むかし、大きな森の外れの村に、強い願いを持つ娘のシンデレラ(アナ・ケンドリック)と、強い願いを持つ少年ジャックの母(トレイシー・ウルマン)と、強い願いを持つ少女の赤ずきんちゃん(リラ・クロフォード)と、強い願いを持つ子供のいない夫婦のパン屋(エミリー・ブラント、ジェームズ・コーデン)がいた。そしてシンデレラも、ジャックも、赤ずきんちゃんも、その強い願いから大きな森を目指すことになる。そんなとき、隣に住む魔女(メリル・ストリープ)がパン屋を訪れ、2人の子供が生まれないのは、パン屋の父親が妻のために自分の家から野菜と魔法の豆を盗んだから、2人いた赤ん坊のうちの妹を奪い、永遠に赤ん坊が生まれないように呪いをかけたからだと告げる。しかし、自分も呪いがかかり、若さを失い醜い姿になったのだと。そして、2つの呪いを解くための100年に1度のチャンスがやってくるから、青い月の夜の3日の間に森へ行って「赤い頭巾」「トウモロコシのような黄色い髪の毛」「ミルクのような白い牛」「金の靴」を手に入れろと。

72点

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 予告編ではわからなかったが、完全なミュージカル。のっけの第一声から歌で始まる。苦手な人にはもうだめだろう。好きな人はすぐに乗せられるはず。そしてミュージカルということは往々にして悲惨な話を歌で明るく描く系だったりするが......。本作の場合は「ジャックと豆の木」「シンデレラ」「塔の上のラプンツェル」「赤ずきんちゃん」そしてパン屋の話なんだかわからないが、5本のディズニー系おとぎ話を同時進行させて、まとめて見せたあと、最後にもう一捻り加えて有名な話のその後的なものまで描くと。で、やっぱり、よく考えてみると酷い話で、死人もたくさん出ている。浮気もある。妬みに騙し、呪いまで。獣に人が食われているし、巨人はものを奪われた上に取り返しにきて惨殺される......まあ、残酷。やっぱりねえ。

 そして、おとぎ話というと教訓があるものだが(?)、本作はそれがなんだかよくわからない。ボク程度の知能では理解が難しかった。何が言いたかったの? 結論は「願い事には気をつけて」ということ? それとも「言葉の力に気をつけて」ということ? どちらも日本的な考え方とは馴染みにくい。神社での願い事は、どんなことをお願いしてもいいと言われている。そして「言霊」は常識だろう。

 映画オリジナルの話かと思ったら、本作は1980年代に作られたブロードウェイ・ミュージカルだそうで、数々の賞を受賞しているらしい。うーむ。絵は素晴らしいし、音響も見事で、5本の話が鮮やかに1つにまとまり、どんでん返し的なものもある。構成はよくできている。歌も笑いもある。ただ、あまり感動がないなあ。

 シンデレラはアナ・ケンドリック。もともと13歳の時にミュージカルでブロードウェイ・デビューしたのだそう。「トワイライト〜初恋〜」(Twilight・2008・米)に出て、ジョージ・クルーニーの「マイレージ、マイライフ」(Up in the Air・2009・米)でアカデミー助演女優賞にノミネートされた。「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・英/米ほか)では主人公の妹、「エンド・オブ・ウォッチ」(End of Watch・2012・米)では主人公の彼女を演じていた。

 子供のないパン屋の夫はジェームズ・コーデン。TVと映画を半々くらいでやっている人で、日本劇滋養公開されたものだと、残念なファンタジー「ガリバー旅行記」(Gulliver's Travels・2010・米)でエミリー・ブラントと共演している。その後これまた残念な歴史アドベンチャー「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」(The Three Musketeers・2011・独/仏ほか)に出て、実話の映画化「ワンチャンス」(One Chance・2013・英/米)で主演をやり歌声、しかもオペラを披露している。また「はじまりのうた」(Begin Again・2013・米)という音楽映画にも出ている。

 子供のないパン屋の妻はエミリー・ブラント。「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米/仏)の同僚役がいい感じで注目を集める。「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(The Young Victoria・2009・英/米)ではヴィクトリア女王を演じ、小品ながら感動のSFラブストーリー「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)は素晴らしかった。最近ではトム・クルーズのSFアクション「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(Edge of Tomorrow・2014・米/加)で女戦士を演じていた。

 隣の家の魔女はメリル・ストリープ。こんな大女優が、特殊メイクでの「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)のスーザン・サランドンのように醜い魔女を演じるなんて。でも、やぱりうまいなあ。傑作ベトナム戦争映画「ディア・ハンター」(The Deer Hunter・1978・英/米)の昔から活躍している人。まあ名作といわれる作品にガンガン出ている。「ミュージック・オブ・ハート」(Music of the Heart・1999・米)では音楽の先生を演じているし、「プラダを着た悪魔」でエミリー・ブラントと共演している。「マンマ・ミーア!」(Mamma Mia!・2008・米/英/独)では見事な歌声を披露している。ちょっと前「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(The Iron Lady・2011・英/仏)でサッチャー首相を演じアカデミー主演女優賞を受賞した。

 ちょい役では、「赤ずきんちゃん」の狼に最近残念な「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」(Mortdecai・2015・米)に出ていたジョニー・デップ。短い出番ながらさすがに印象に残る。こういうエキセントリックな役が似合う気がする。歌もうまかったと思う。そして王子兄弟の兄に「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(Star Trek Into Darkness・2013・米)のクリス・パイン。いい男だが、王子なのにあの無精髭はどうなんだろう。おとぎ話なんだから。しかも何度もシンデレラに逃げられるなんて。バカなのか。歌はうまかった気がする。用もないのに胸をはだけるのは笑った。

 「シンデレラ」の継母にクリスティーン・バランスキー。「マンマ・ミーア!」でメリル・ストリープと共演している。独特の妖艶な雰囲気を持つ人。63歳でこの色気とは。まあメリル・ストリープの方が年上で66歳だけど、活躍している分お金をかけているのか、ずっと若く見える。

 オリジナルのミュージカルを書いたのは、ジェームズ・ラパインとスティーヴン・ソンドハイムの2人。ジェームズ・ラパインは監督もやっている人で、日本で劇場公開されたものだとマイケル・・フォックスの「ライフwithマイキー」(Life with Mikey・1993・米)を手がけている。脚本ではほとんどTVで、本作の原作本を2011年に、ミュージカルの脚本を2014年に書いている。

 スティーヴン・ソンドハイムは主に音楽部門でサウンドトラックを担当している人。脚本は「シーラ号の謎」(The Last of Sheila・1973・米)を書いており、アナ・ケンドリックが出た「キャンプ」(Camp・2003・米)では出演している。最近だとジョニー・デップの「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street・2007・米/英)の原作と、作詞・作曲を手掛けている。本作も主に作詞・作曲ということらしい。

 監督は製作も兼ねるロブ・マーシャル。ミュージカル「シカゴ」(Chicago・2002・米/独/加)の監督で、日本を舞台にした傑作チャン・ツィイーの「SAYURI」(Memoirs of a Geisha・2005・米)などを手がけている。話題のミュージカル「NINE」(Nine・2009・米/伊)や、ファンタジー・アクションの「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」(Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides・2011・米/英)も撮っているが、あまりピンとこなかった。やっぱりミュージカルはどれもなかり酷い話が多い。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定でムビチケカードで確保。当日は11〜12分前に開場。若い人から中高年まで幅広いが、若い女性が目立っていた。男女比は3.5対6.5くらいで女性が多かった。ミュージカルだからだろうか。最終的には232席がほぼすべて埋まった。これはビックリ。舞台挨拶とかあるわけでもないのに、なぜだろう。そんなに人気の高い作品とも思えない。メリル・ストリープが来日していたけど。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いていて、気になった予告編は...... 四角の枠付きで「シンデレラ」は新予告に。ヒロインと王子はピンとこなかったが、継母がケイト・ブランシェットで、実に意地悪な感じが見事だった。これは期待できそう。4/25公開。

 左右マスクの「インサイド・ベッド」はピクサー・アニメで、頭の中の5つの感情を描くらしい。ただキャラが日本人の好みとは合わないかも。主人公らしい女の子も、ちっともかわいくないし。ちょっとパスかなあ。7/18公開。

 この日はアニメの「境界の彼方」と「ウルトラマンギンガ」の初日だとかで劇場は大混雑。アニメ目的の若い女子が驚くほどたくさん。前売り券を扱っている売り場は、関連グッズを求めるお客が大行列。アニメはすごいなあ。


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