2015年3月15日(日)「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

THE IMITATION GAME・2014・英/米・1時間55分(IMDbでは114分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビー・デジタル

(英12A指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://imitationgame.gaga.ne.jp
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

1951年、イギリス・マンチェスター。アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の自宅に泥棒が入り、警察はアランから事情聴取を行うことになり、ロバート・ノック刑事(ロリー・キニア)が担当する。そして経歴を問われたアランは驚くべき話をする......1939年、ロンドン。ブレッチリー無線製造所に呼ばれたアランは、デニストン中佐(チャールズ・ダンス)と面会し、実際にはドイツ軍のエニグマ暗号を解読する仕事だと知らされ職を得ると、チェス・チャンピオンのヒュー・アレグザンダー(マシュー・グード)ら、イギリス中から集められた天才たちのグループに加わることになる。

85点

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 若干画質が古い感じがしたが、物語の舞台が1951年と1939年からの第二次世界大戦だったので、それほど違和感はなかった。

 最初に「実話」と出る。もちろんエニグマの解読は有名な話で、それを解読する機械がコンピューターになったという話も今では有名だが、こうしてドラマとして描かれると驚きと感動に満ちた物語だったことがよく伝わってきた。素晴らしい。なんという切ない話なのか。あやうく涙がこぼれそうになった。

 てっきり「エニグマ」(Enigma・2001・英/米ほか)的な作品かと思ったのだが、全く違っていた。暗号の解読に焦点を当てたのではなく、それによってアラン・チューリングという人間を描こうとした作品だった。エニグマのことを書いた本は何冊か読んだが、アラン・チューリングの少年時代のいじめ、救ってくれた友人、変人ぶり、同性愛、そして41歳での自殺など、初めて知った。衝撃的だった。功績はあまりにも大きく、それが50年以上も極秘とされた。2013年にエリザベス女王によって恩赦が出されたという。それで本作が作ることができるようになったというわけか。さらに、イギリスでは1967年まで同性愛は違法だったらしい。そのためにアラン・チューリングは、評価もされず、国家的な英雄でありながらひどい仕打ちを受けていたと。

 アラン・チューリングはベネディクト・カンバーバッチ。人をイラつかせる変人ぶりと、自信満々な天才ぶりと、それでいてナイーブな感じなどが見事だった。さすがにうまい。TVの「SHERLOCK(シャーロック)」(Sherlock・2010〜・英/米)で人気が爆発したようだが、その前に「つぐない」(Atonement・2007・英/仏/米)でキーラ・ナイトレイと共演している。スピルバークの「戦火の馬」(War Horse・2011・米)や「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(Star Trek Into Darkness・2013・米)では敵役で出演している。

 紅一点のジョーン・クラークはキーラ・ナイトレイ。「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(Star Wars: Episode I - The Phantom Menace・1999・米)のナタリー・ポートマン演じるアミダラ王女の影武者役に抜擢されて注目。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)のヒロイン役は有名。やはりメロドラマ系が多い気はする。「プライドと偏見」(Pride & Prejudice・2005・仏/英/米)でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。

 直接の上司、デニストン中佐はチャールズ・ダンス。なんとデビューはロジャー・ムーアの「007/ユア・アイズ・オンリー」(For Your Eyes Only・1981・英)。悪役のイメージが強い人。以外にSFコメディの「スペース・トラッカー」(Space Truckers・1996・英/米/アイルランド)にも出ている。最近では「ドラキュラZERO」(Dracula Untold・2014・米)に出ていた。

 MI6のスチュアート・ミンギスはマーク・ストロング。「リボルバー」(Revolver・2005・仏/英)や「ロックンローラ」(RocknRolla・2008・英/米/仏)にも出ており、悪役のイメージが強い人。「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)の悪役も強烈だった。傑作アクション・コメディの「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)もよかった。最近は「記憶探偵と鍵のかかった少女」(Mindscape・2013・米)に出ている。

 原作はアンドリュー・ボッジェスが書いたアラン・チューリングの伝記「エニグマ アラン・チューリング伝」("Alan Turing: The Enigma"、頸草書房、土屋俊・土屋希和子訳、上巻、下巻は今夏)。「イミテーション・ゲーム」とは、劇中語られているようにアラン・チューリングの論文のタイトル。マシンか人間か当てるゲーム。刑事にアラン・チューリングがどっちか当てられるかと問う。

 これを脚本にしたのは、製作総指揮も兼ねる小説家のグレアム・ムーア。本作が初の劇場長編映画の脚本で製作総指揮。そしてアカデミー脚色賞を受賞している。

 監督はノルウェイ生まれのモルテン・ティルドゥム。TVから短編を経てノルウェイ映画「ヘッドハンター」(Hodejegerne・2011・ノルウェイほか)で劇場長編映画監督デビュー。それが高く評価されて本作に繋がるらしい。アカデミー監督賞にノミネートされた。

 銃はイギリスが舞台なので、軍の衛兵はリー・ライフル、トンプソンM1928を装備していた。

 公開3日目の初回、六本木の劇場は15分前くらいに行ったらすでに会場済み。残念ながらここの全スクリーン中最もスクリーンが見難い(スクリーンが低くて前席の人の頭が邪魔になる)2番スクリーンでの上映。リニューアルしたというので期待したが、真ん中あたりに広いプレミアム・シートができただけ。あと幾つかのスクリーンでドルビーATMOSに対応したとかその類。大事なのは見易さじゃないのかなあ。

 観客層はメインはいつもの中高年で、下は小学生の男の子を連れたお父さんらしい2人連れもいたが、こういう作品は小学生には向いていないと思う。暗号の話はともかく、同性愛については理解しづらいと思う。映像的に出てくるわけではないが、「性器を触らせた」などというセリフもあるわけで適切ではないと思う。大人的には薬物治療による「生物学的去勢」というのがショッキングだった。日本ではG指定(年齢に関わらず鑑賞可能)だが......。男女比は半々くらいで、最終的に351席の7割くらいが埋まった。なかなかの人気。外国人客も多かった。口コミでこれから増えるかもしれない。人気を受けて公開劇場が増えるらしい。

 気になった予告編は...... 予告が始まったらケータイを開くな! iPadを開いているヤツまでいた。まぶしい。 東宝チャンネルでは上下マスクで「テッド2」の予告。テッドが子供が欲しいとか言い出して.....8/28公開。監督のセス・アクファーレンは前作「荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜」(A Million Ways to Die in the West・2014・米)で失敗、ラジー賞候補になっているからなあ。精子バンクだって? ヤバいかも。ヒットによって認められると悪ノリしてしまうパターン。足かせが外れ、誰も止められなくなる。イヤな予感。日本の公式サイトはまだない模様。

 上下マスクの「メイズ・ランナー」は、「CUBE」(Cube・1997・加)と「ハンガー・ゲーム」(The Hunger Games・2012・米)を混ぜたような感じ。また3部作になるらしく、そこに危険な匂いが。アメリカでは受けるんだろうけど、日本ではどうか。5/22公開。

 そのあとYKKの猫が出てくる窓の長いバージョンCMがあって、これがいい感じ。

 半暗になってから上下マスクの「海街dairy」は是枝裕和監督による人気コミックの映画化らしい。三姉妹がどうしたこうしたと。6/13公開。

 「脳内ポイズンベリー」は真木よう子主演の、少女コミックの脳内コメディらしい。5/9公開。「アナと雪の女王 エルサのサプライズ」は上下マスクの「シンデレラ」と同時上映する短編らしい。

 上下マスクの「ワイルド・スピード スカイ・ミッション」がついに予告開始。ポール・ウォーカーがもういないなんて。ジェイソン・ステイサムは悪役ということか。ドウェイン・ジョンソンがハマってるなあ。4/17公開。

 上下マスクの「セッション」は、鬼のようなスパルタ式ドラムのレッスンを描くもののようで、アカデミー賞3部門受賞したほか、数々の賞に輝くらしい。が、予告の印象はすごく暴力的。4/17公開。

 上下マスクの「バードマン」はティーザーのようで、内容はよくわからない。ただビジュアルとか、なんか過ごそうと。4/10公開。シャンテだけならバスしようかと思ったが、日本橋でもやるらしいので見るか。

 暗くなって、映画泥棒の後、左右に広がって本編へ。


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