2015年3月28日(土)「ジュピター」

JUPITER ASCENDING・2015・米/英・2時間07分

日本語字幕:丸ゴシック体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri、ALEXAほか)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASAT、SDDS、ドルビーAtmos、Auro 11.1)

(米PG-13指定、英12A指定)(3D上映、IMAX版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/jupiterascending/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

借金のため夫を殺された妻が、親戚と一緒にロシアを脱出する途中、船で生まれたジュピター(ミラ・クニス)。彼女はアメリカで親戚たちと貧しい生活を送っていたが、ある日宇宙人たちに襲われ殺されそうになったところを、元傭兵の宇宙人、交配種のスペース・ハンター、ケイン・ワイズ(チャニング・テイタム)に助けられる。そして宇宙を支配する王家アバラサクス家の勢力争いが起こっており、ジュピターがその末裔に当たると知らされる。しかし彼の宇宙船に乗り込もうとしたところを敵に襲撃され、地球にいる元上官のスティンガー(ショーン・ビーン)のもとへ逃れる。そして翌日やってきた宇宙船で木星の宮殿に向かい、そこで衝撃の事実を知らされる。

71点

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 うーむ、なんだろう。とんでもなく豪華でお金がかかっていて、壮大なスペース・オペラで、派手なS Fアクションなのに、ちっとも訴えてくるものがない。話がよくわからない。なんだか感じはチープなソープ・オペラというか、昼メロ的物語。華麗なる一族の骨肉の争い。愛憎劇。しかも展開が納得できないから(吹き替えでないとわかりにくいのか)、どうにも伝わってこなかった。

 物語の展開はどこか理論的でないというか、つじつまが合わないような感じ。感覚優先で、ちょっと女性的な気もした。また登場人物たちも、多くがオネエ的というか中性的な感じで、違和感がある。なじめない。ヒロインも、ちょっとキツすぎるイメージだよなあ。

 画と音響はすごい。3Dを意識したらしい立体的な画は絵画的で、音はグルグル回り、包み込むよう。しかもクリアで画にシズル感があって、声も聞き取りやすい。オーケストラによる大仰な音楽。レベルが違う。つまりはお金がかかっているということなんだろう。ただしあまりオリジナリティは感じられなかった。ほとんどは「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995・日)的だったり、「スター・ウォーズ」(Star Wars・1977・米)シリーズ、特に後半に作られた3作的で、どうにもマネのよう。ほかにもどこかで見たようなものが目立つ。とんでもない手間とお金をかけてこれか。

 驚いたのは、同じことを2度繰り返すこと。中盤でヒーローたちは宇宙船で敵に突っ込むが、ラストの最高に盛り上がるべき戦いも、同じようにヒーローが宇宙船で突っ込む。まるでデジャブ。なんでこんな構成なんだろう。アイディアが尽きてしまったのか。

 それにしても、バイクに乗った女はどこに行ったの? どういう立ち位置のキャラだったのかもよくわからなかったし。悪いやつなのか、裏切って助けたのか、よくわからん。

 メイクのせいもあってキツそうに見えたジュピターはウクライナ出身のミラ・クニス。ボクが観た作品だと、デンゼル・ワシントンのSFアクション「ザ・ウォーカー」(The Book of Eli・2010・米)のヒロイン、ギリギリのお下劣コメディ「テッド」(Ted・2012・米)の主人公の恋人、「オズ はじまりの 戦い」(Oz the Great and Powerful・2013・米)西の魔女などで出ている。さらにアカデミー賞で話題になった「ブラック・スワン」(Black Swan・2010・米)にも出ているが、本作が一番印象が悪いかも。

 ヒーローのケイン・ワイズはチャニング・テイタム。「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of Cobra・2009・米/チェコ)など作品に恵まれない感じで、本作もオネエのようなメイクで印象が良くない。「フォックスキャッチャー」(Foxcatcher・2014・米)では演技派の面も見せたものの、作品自体がマイナーで暗いものだったのでイメージは良くない。「ホワイトハウス・ダウン」(White House Down・2013・米)がイメージ通りのキャラクターだったかも。

 悪役のバレムはエディ・レッドメイン。「博士と彼女のセオリー」(The Theory of Everything・2014・英)でアカデミー主演男優賞を受賞しただけあって、うまい。繊細な青年役がぴったりくる。本作で、一番、光っていた人。ミュージカルの「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)ではコゼットの恋人役で、見事な歌を披露している。

 2番目に光っていたのは、やはり悪役タイタスのダグラス・ブース。残念な「ノア 約束の舟」(Noah・2014・米)でノアの長男を演じていた人。生意気そうな感じがよく出ていた。

 脚本家で映画監督のテリー・ギリアムもレトロ・フューチャーな地下にいる紋章を入れてくれる役人役で出ていた。どうも最近は映画を作っていない感じ。最後に見たのは「Dr.パルナサスの鏡」(The Imaginarium of Doctor Parnassus・2009・英/加/仏)あたりか。

 監督・脚本はウォシャウスキー姉弟。本作の物語の構成や、キャラクターの設定からはどうも女性的なものやオネエ的なものを感じてしまうので、姉のラナが主導したのではないかという気がした。正直なところ「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)シリーズ以外どれもあまりピンとこなかった。

 銃はSF銃のヘンテコなものがメインで、冒頭の地球のシーンで父親が取り立て屋に撃たれるところでトカレフが使われていた。

 公開初日の初回、新宿の劇場は2Dの字幕版で、ムビチケカードで前日に確保。やはり作品自体の出来が良くなければ3Dなんて意味はない。大した効果もないので、つまらなさを補ってくれることもない。2Dが初回でよかった。12〜13分前に開場。メインはやはり中高年だが、「マトリックス」ファンなのかやや高齢者が多かった。メロドラマ系なのに男女比は8対2くらいで圧倒的に男性が多かった。外国の方も何人か。最終的には301席に5〜5.5割くらいの入り。IMDbでも5.9点の評価で、これ以上伸びる気はしない。

 スクリーンはシネスコ・サイズで開いており、気になった予告編は...... 左右マスクの「フォーカス」は新予告に。ウィル・スミスのビデオ・メッセージ付き。5/1公開。ちょっと微妙な感じかなあ。

 四角の枠付き「ストレイヤーズ・クロニクル」はどうしても「クロニクル」(Chronicle・2012・米)と、「MONSTERZ モンスターズ」(2014・日)が思い出されて。原作は同名のベスト・セラー・ミステリーだとか。6/27公開。

 四角の枠付き「PAN〜ネバー・ランド、夢の始まり」は、なんだか「オズ はじまりの戦い」みたいなタイトルで、ピーター・パンの実写版というからそんな感じなのかもしれない。孤児の話で、凶悪そうなフック船長がヒュー・ジャックマンだとか。まるで別人。9月公開。

 四角の枠付き「ラン・オールナイト」はニーアム・リソン主演のアクションらしく、予告の感じでは「96時間」っぽい感じ。エド・ハリスも出ている。5/16公開。

 四角の枠付き「カリフォルニア・ダウン」はドウェイン・ジョンソン主演のディザスターというかパニック映画。カリフォルニアを巨大地震が襲うらしい。昔のチャールトン・ヘストンの「大地震」(Earthquake・1974・米)のスケール・アップ版のような感じか。当然3D上映と。5/30公開。

 四角の枠付き「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は新予告に。とにかく絵がきれい。画質もいいし、色も綺麗だし、構図も素晴らしい。見たい。6/20公開。

 隣のオヤジが予告の時もケータイをいじってやがって、まぶしいっての。しまいには靴まで脱ぎやがって、自宅かここは。忙しいなら映画に来るな。

 原題のASCENDINGは高い地位などへ上がるという意味らしい。まんまやないかい!

 字幕にはちょっとジャギーがあるのが気になった。絵は高画質なのに、字幕が低解像度って。


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