2015年4月11日(土)「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)・2014・米/英・2時間00分(IMDbでは119分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、黄色、稲田嵯裕里/ビスタ・サイズ(デジタル、Arri、ALEXA)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/birdman/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

映画でスーパー・ヒーロー「バードマン」を演じて一斉を風靡したスター、リーガン・トムソン(マイケル・キートン)は、20年前に「バードマン4」を断って以来、すっかり落ち目となり、起死回生を賭けてレイモンド・カーヴァーの小説『愛について語るときに我々の語ること』を自分で脚本にし、演出と主演も務めて舞台化、親友のプロデューサー、ジェイク(ザック・ガリフィナーキス)とともにブロードウェイで上演しようとしていた。初日を前にプレビューが行われることになるが、リハーサル中に出演者の一人が怪我で脱落、出演女優レズリー(ナオミ・ワッツ)の紹介で、素行に問題のある人気実力派の舞台俳優マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)を起用することになる。するとマスコミの話題はリーガンではなくマイクにばかり向けられていく。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 これは...... たぶん映画・演劇関係者が見るといろいろ感じるものがあるのではないだろうか。あるいは、芸術に造詣の深い人。そういった人たち向きの映画なのだろう。ボクのようなボンクラ一般人にはちっともピンとこないし、わからない。笑えるシーンも多いのだろうけど、ほとんど笑えず、退屈。2時間が長い。

 最初に出るのが20世紀FOXのサーチライトのロゴ。これはメジャー系劇場で公開しない、アート系や海外作品などを扱うブランドだったと思う。まさに本作はそんな感じ。アカデミー賞9部門でノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞を受賞し、注目度は高く、IMDbでは7.9点という超高評価。アカデミー賞は業界人が選ぶ映画賞だ。観客ではない。

 まるで舞台の芝居を見ているような感じもあり、2時間の間ほとんど何も起きない。ただ人が出入りして、どうでもいいような、あるいはエロや暴力、タバコ、衝撃の告白、突拍子もない行動をとるだけ。ようするに、ブロードウェイにかける劇を作ってプレビューするところから始まり、初日の前の最後のプレビューまでまでを描いた、バックステージもの。顛末。「幕が上がる」的なお話。業界を知っている人には「ある、ある」で楽しめるのだろう。一般人が楽しむエンターテインメントではない。そういえば「ドレッサー」というバックステージものの戯曲もあったなあ。

 自分の内なる声との対話もあり、極めて思索的。しかも全編を手持ちカメラ(スタビライザーが付いているステディカムなので細かく揺れたりはしないが、軽くカメラ酔い状態となる)で、ほぼ1カットのようにとっている。舞台のような感じをドキュメンタリー・タッチで出しているということか。その技術はすごいと思うが、印象としては「ワン・フロム・ザ・ハート」(One from the Heart・1981・米)的な感じもあり、酔わないし不思議感があってあちらの方が良かった。ヒッチコックも「ロープ」(Rope・1948・米)でやっているが、監督はきっとやってみたくなる手法なのだろう。カメラが窓や手すりも通り抜けるし。普通は通らなくても、監督が大ヒットを飛ばすと、プロデューサーさえ口を挟めなくなる。まして監督自身が脚本を書き、プロデューサーまでしていたら、やりたい放題だ。

 黄色の字幕はアメリカなどではよくあるようだが、本作の場合、目立ちすぎる気がして気になった。白の方が良かったと思う。

 登場する銃は、最初舞台で使う銃はスターター・ピストルのようなリボルバーだが、それを実銃の、スライドの滑り止めが鱗タイプのSW1911に持ちかえる。imfdbによれば空想シーンの中のモンスターに立ち向かう軍はM4かと思ったらブッシュマスターのACRが使われていたらしい。

 映画でいつも悪役にされるのはTVのリポーターと映画などの評論家。本作でも評論家はコケにされている。いわく「芸術家になれない奴が評論家になる」。痛烈だ。

 リーガン・トムソンはマイケル・キートン。最近はB級の出演が多く、なんだかミッキー・ロークみたい。復活を図ろうとする男を描いたダーレン・アロノフスキー監督の「レスラー」(The Wrestler・2008・米/仏)的なお話。かつては「バットマン」(Batman・1989・米/英)でバットマンを演じていたのに。

 娘のサムはエマ・ストーン。傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)でウィチタを演じていた子。最近だと「マジック・イン・ムーンライト」(Magic in the Moonlight・2014・米/英)にインチキ霊媒師で出ている。

 舞台俳優マイク・シャイナーはエドワード・ノートン。ほぼ全裸で頑張っている。リチャード・ギアの「真実の行方」(Primal Fear・1996・米)でデビューしたときから強烈な個性を放っていた。「ファイト・クラブ」(Fight Club・1999・米/独)も、アクションの「ミニミニ大作戦」(The Italian Job・2003・米/仏/英)も、ミステリーの「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・米/チェコ)も強烈だった。最近は「グランド・ブダペスト・ホテル」(The Grand Budapest Hotel・2013・米/独/英)に出ていたらしいが、小劇場での公開で見ていない。

 舞台女優の1人レズリーはナオミ・ワッツ。美人なのに、結構きわどい役もやる。ボク的にはSFアクションの「タンク・ガール」(Tank Girl・1995・米)が良かったし、ミステリー「マルホランド・ドライブ」(Mulholland Dr.・2001・仏/米)が強烈で、「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)はヒロインにぴったりの雰囲気。ただ最近の「ダイアナ」(Diana・2013・米/仏ほか)は雰囲気がそっくりだったが、映画としては残念なものだった。「21グラム」(21 Grams・2003・米)でアレハンドロ監督と仕事をしている。

 プロデューサーのジェイクはザック・ガリフィナーキス。お下劣ナンセンス・ギャグ満載の「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」(The Hangover・2009・米/独)シリーズのひげ男だ。

 製作・監督・脚本はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。メキシコの人で、あちこちで賞をとりまくりという才能溢れるクリエイター。「21グラム」や「バベル」(Babel・2006・仏/米/メキシコ)など暗い作品が多いイメージ。しかし監督になる前はラジオDJだったらしい。

 劇中劇は映画の中でも語られているレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』。

 公開2日目の初回、日本橋の劇場は全席指定で、ムビチケカードで金曜に確保。20分前くらいに着いたらすでに開場していた。最初はほとんど中高年ばかりで、女性は1/3ほど。ぎりぎりで若い人も少し増えた。最終的には404席の8割くらいが埋まった。アート系の地味な作品だと思うが、さすがアカデミー賞作品。

 スクリーンは東宝の壁をいっぱいまで使う大型のTCX仕様。シネスコ・サイズで湾曲していた、マスクするためのカーテン(幕)はない。そのためビスタで上映するときは映写機側のマスクなので黒が締まらない。シネコンの定番だが、カーテンが開き閉まりするセレモニーがない。TVかビデオみたいで、ちょっと残念。

 気になった予告編は、四角の枠付きで「進撃の巨人」は実写版のやつで、ティーザーなので内容はほとんどわからないが、巨人は漫画というかアニメのままのような印象。はやりの前後編になるらしい。8/1と9/19公開。

 スペクタクルとかアクションとかSFじゃないのに、音楽を聴くとワクワクしてしまう枠付きの「HERO」はティーザーで、メンバーが「Gメン75」みたいに並ぶところだけ。7/18公開。

 枠付き「メイズ・ランナー」はちょっとイヤな予感がしたが、やっぱり三部作方式。「ハンガー・ゲーム」(The Hunger Games・2012・米)の雰囲気もあって、ああならなければいいが。手持ちカメラだし。しかも「ハンガー......」は最終作が前後編。「ハリー・ポッター」か。5/22公開。

 枠付き「セッション」は鬼音楽教師のしごきを描いたものらしい。予告だけで、観客の方まで萎縮する感じ。怖すぎ。アカデミー賞作品だから人が入るんだろうけど、ボクはパスかなあ。ラスト9分10秒がどうとかこうとか。4/17公開。

 枠付き「海にかかる霧」は韓国映画で、実話の映画化で、船による密航を描いたミステリーらしい。 4/24公開。

 枠付きの「シンデレラ」は画質が良くなかったがどうしたんだろう。公式サイトも素っ気ない感じ。できが良くないのだろうか。4/28公開。

 左右マスクの「トゥモローランド」はディズニーらしいファンタジー・アドベンチャーのようだが、なんとジョージ・クルーニーが出演。「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory・2005・米/英/豪)のような雰囲気なのだが大丈夫なのか。6/6公開。

 枠付きの「ワイルド・スピード スカイミッション」は公開間近なので新予告。仲間じゃないファミリーだとか言って、戦争状態になるらしい。ポール・ウォーカーの最後の作品かと思うと残念でたまらない。4/17公開。

 左右マスクで、20世紀FAXサーチライトのロゴの後、本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ