2015年4月12日(日)「ソロモンの偽証 後篇・裁判」

2015・松竹/木下グループ/博報堂DYメディアパートナーズ/朝日新聞社/GyaO!/KDDI・2時間26分

シネスコ・サイズ(レンズ、表記なし〈IMDbではArri〉)/表記なし(IMDbではドルビー・デジタル)


公式サイト
http://solomon-movie.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ついに城東第三中学で2年A組の柏木卓也(かしわぎたくや、望月歩)死亡事件の裁判が、生徒のほか、父兄、教師も呼んで開かれることになる。期間は夏休み中の8月15日から5日間。それまでに弁護士役の神原和彦(かんばらかずひこ、板垣瑞生)たちは、被告である不良のいじめっこ2年B組だった大出俊次(おおいでしゅんじ、清水尋也)を出廷させるため、わざと挑発し体を張って正面から挑んでいく。一方、検事役の藤野涼子(ふじのりょうこ、藤野涼子)たちは柏木の両親から電話の通話記録を手に入れ、亡くなる直前に相手が不明な4本の電話を受けていたことを突き止め、調査に乗り出す。

73点

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 前編から1か月ほどとはいえ、前後編に分かれるとテンションが落ちる。特にミステリーの場合、謎解きは畳み掛けるようにバタバタとアリバイを崩したり、新事実が判明したり、新証人が現れたりして、事件が意外な展開を見せ、ほとんど考える間も与えずに大団円を迎え終わらなければならない。ところが前後編で間が空くと、前編の感動部分が薄れている。そこから始まっても、意外な展開が思ったより盛り上がらない。しかも意外な展開と感じられない。間があったため、冷静になっているのだろう。これはBDやDVDで前後編を一気見をしたほうが感動できて良いと思う。ただし、トータル4時間以上は長いが......。

 たぶん、予告で煽りすぎ。あまり前振りで「意外な真実」とか「みんなが嘘をつく」というのを言いすぎたため、期待値が上がってしまったと思う。実際には意外な真実というより、最初の見解通りであり、実際に重大な嘘をついているのは1人だけという事実。つまり「意外な真実」と言って違う展開を期待させ、「みんなが嘘をつく」と言って皆の証言を疑わせるという手法だったのかもしれない。ミス・リーディング。しかし、前に書いたように、前後編に分けると途中で冷静にもどるから驚かなくなってしまうのだろう。一気に見ればショッキングだったはず。

 描きたいことは意外な展開や真犯人ではなく、真実が判明するまでの隠されたドラマということにはなるのだろう。もともと求めるのは「真犯人」ではなく「真実」なのだ。なかでも大きな問題が「いじめ」。25年前の話になっているが、ボクの母校の高校もいま暴力などで荒れているらしい。ものすごい田舎なのに。そんな事件の裏にある隠されたドラマが校内裁判によって明るみに出される。ただ。前編は感動する部分多かったのだが、後編は前校長が証言した後、「生徒のためを思ってくれていたことは、全三中生が知っていました」といって、多くの生徒たちが立ち上がって校長先生にお辞儀をするところ。これは泣けた。まわりでも皆くしゅくしゅやっていた。しかし、ほかはそれ以上に盛り上がらなかった。

 なぜ、ソロモンなのか。ソロモン王がむかし、我が子と主張する2人の母を大岡政談的に見分けた話からきているのだろうか。このへんはやっばり原作を読まないとわからないのだろう。こういう話は読んだほうが衝撃的なのかも。

 後編の画質は解像度などそれほど悪い気はしなかったが、やはり昔の話という感じを出すためか、ちょっと黄色味を帯びた色調になっていて、これが古臭さを過剰に出している気がした。1991年ってそんなに昔なんだろうか。

 スタッフ、キャストは前篇と同じ。やはり良かったのは主役の藤野涼子役の藤野涼子、弁護士役の神原和彦を演じる板垣瑞生、いじめっ子の不良、大出の清水尋也、いじめられっ子の三宅樹理役の石井杏奈。ちょっとしか出ないが、死体で発見される柏木拓也役の望月歩も怖くて良かった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに開場。小学生くらいの子連れファミリーから中高年まで幅広かったが、メインは中高年。上映間近になって若い人も増えた。概して女性の方が若い。男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。まあ女性の原作で、女性が主役の映画で、女性がいじめられるし、登場人物も父たちより母たちの方が存在感があるし、そんな感じか。最終的には607席の8割くらいが埋まった。初回からこれはすごいなあ。話題作だけのことはある。でも場内でケータイは点けるな。

 気になった予告編は、スクリーンはシネスコで開いていて、左右マスクの「フォーカス」はウィル・スミスのビデオ・メッセージ付き。だんだんか内容のわかる予告になってきたら、ちょっちヤバそうな感じもしてきた。5/1公開。

 左右マスクの「劇場霊」は「女優霊」のスタッフが作るらしい。結末はなかったけれど、あれは怖い映画だった。「女優霊」の中田秀夫監督なので脚本さえしっかりしていれば、かなり怖いものになるのではないだろうか。11/21公開。

 四角の枠付きの「天の茶助」は面白いか、残念系か微妙な感じ。ただ「弾丸ランナー」(1996・日)や「MONDAYマンデー」(1999・日)のSABU監督なので期待できる気はするが、小劇場、アート系公開の多い人なので......。6/27公開。

 左右マスクの「グラスホッパー」は伊坂幸太郎原作の120万部を突破した小説の映画化。主演は生田斗真。「脳男」(2013・日)みたいだが大丈夫か。監督も同じ瀧本智行だし。11/7公開。

 枠付きの「日本のいちばん長い日」は原作はあるにしても、岡本喜八監督の傑作「日本のいちばん長い日」(1967・日)のリメイクということになるだろう。「終戦の玉音」を巡る1日の事件の顛末。ただ監督が原田眞人なので大丈夫かもしれないが。8/8公開。

 左右マスクの「天空の蜂」は、福井晴敏原作の「亡国のイージス」(2005・日)とか「ミッドナイトイーグル」(2007・日)のような雰囲気だったが、原作は東野圭吾。堤幸彦監督で適役なんだろうか。9/12公開。

 「映画泥棒」の前に前作のダイジェスト版の上映あり。ただ明るいままだったので、雰囲気がちょっと。早く暗くしろよなあ。松竹120年のロゴが出て本編へ。


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