2015年4月26日(日)「シンデレラ」

CINDERELLA・2015・米/英・1時間45分

日本語字幕:手書き風書体下、古田由紀子/シネスコ・サイズ(レンズ、by Panavision)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米PG指定、英U指定)(日本語吹替版もあり)

同時上映「アナと雪の女王/エルサのサプライズ」(短編)
FROZEN FEVER・2015・米・7分(IMDbでは8分)

日本語字幕:手書き風書体下、翻訳者名表記無し/シネスコ・サイズ(2.39:1、デジタル)/ドルビーATMOS

(米G指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/cinderella.html
(全国の劇場リストもあり)

エラ(リリー・ジェームズ)は、商人の父(ベン・チャップリン)と美しい母(ヘイリー・アトウェル)の間に生まれ、裕福な家庭で何一つ不自由なく、まっすぐで素直な少女に育てられた。しかしある日、母が病気で倒れ、エラに「勇気と優しさを忘れないで」の言葉を残して逝ってしまう。月日が流れ、エラが年頃に成長したとき、父は仕入れの旅で知り合ったトレメイン卿が亡くなり、未亡人となった女性と再婚したいと切り出す。エラは快く聞き入れるが、やって来た継母(ケイト・ブランシェット)はとても魅力的な女性で、2人の連れ子がおり、それぞれドリゼラ(ソフィー・マクシェラ)とアナスタシア(ホリデイ・グレインジャー)と言った。3人は派手好きで、毎日パーティーを催して客を招いていたが、仕入れの旅に出た父が旅先で亡くなり、一家は突然、破産状態となってしまう。使用人はすべて解雇、エラは屋根裏部屋に押しやられたうえ、すべての下働きを命じられる。屋根裏は寒いので、暖炉の前で寝ていたため、灰をかぶり顔が黒くなったので、シンダー(灰)エラ、シンデレラと呼ばれることになる。

84点

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 堂々たる正統派の「シンデレラ」。昔、おとぎ話として聞かせられたストーリー、または本で読んだ通りのストーリーになっている。しかも雰囲気を崩さない範囲で、ちゃんとしたディズニー映画になっている。ちょっとだけ擬人化された動物や妖精(フェアリー)が出てきて大活躍。魔法も派手。そして、みんなが納得して幸せな気持ちになれるハッピー・エンド。わかりきったストーリーなのに、優しさや素直さ、けなげさに感動して、何回か泣きそうになった。終わって出て行くとき、若い女の子が「私3回泣いた」とか言っていた。

 たいていは個性を出そうとしてなのか、ちょっとひねりを加えたり、現代的にアレンジしたりして、ゲテモノに仕上がって観客を失望させてしまうことが多いが、本作はまったくそんなことはない。独りよがりなところはなく、ファンタジーなのにじっくり描いた説得力溢れる作品。監督のケネス・ブラナーは名もあり腕も確かな大監督なのに、独りよがりにならずに、実に丁寧に、みんなが期待するようなことを照れたりバカにしたりせず、ちゃんと撮ったように思える。

 ちゃんと、美人で素直で勇気があって優しいヒロインがいて、ハンサムで歯が真っ白で眩しいほど輝いている笑顔の素敵な国民思いで父を尊敬している王子様がいて、そして何より、とことん意地悪でおそろしい継母という悪役もいる。しかもそれがとびっきり美しくて、出てくるたびに美しくて豪華なドレスを纏っているという、ヒロインに匹敵するような存在感。それを演技派のケイト・ブランシェットが演じるのだから説得力がすごい。この悪役で本作は成功が決まったと言えそうなほど。ケイト・ブランシェットすごいなあ。

 シンデレラはリリー・ジェームズ。最初はヒロインという感じではないような気がしたが、物語が進むにつれ、とても可愛く見えてきた。残念な映画の残念な続編「タイタンの逆襲」(Wrath of the Titans・2012・米/西)に出ていたらしい。

 王子のキットはリチャード・マッデン。イギリス生まれの正統派紳士で、とても爽やかな感じが役にぴったり。あまり映画には出ていないようで、TVは「ゲーム・オブ・スローンズ」(Game of Thrones・2011〜・米/英)シリーズに出ていたらしい。

 フェアリー・ゴッドマザーはヘレナ・ボナム=カーター。本作は「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)的エキセントリックな、でも意地悪じゃないキャラクター。企みを巡らす大公はステラン・スカルスガルド。父王は「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」(Grace of Monaco・2014・仏/米ほか)のデレク・ジャコビ、シンデレラの父は「ウォーター・ホース」(The Water Horse・2007・米/英/豪)以降見かけなかったベン・チャップリン。......といった具合に、有名俳優が多数出ている。

 しかし、何よりすごいのは継母を演じたケイト・ブランシェット。美しいドレスと見事な演技で主役を食う存在感。「エリザベス」(Elizabeth・1998・英/米)的な気品ある感じ。「シャーロット・グレイ」(Charlotte Gray・2001・英/豪/独)も良かったが、最近だと「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)も良かった。まさか「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull・2008・米)で悪役を演じるとは思わなかったが。

 脚本はクリス・ワイツ。役者もやっていて、監督でもあり、残念な「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(The Golden Compass・2007・米/英)の脚本・監督、残念なシリーズ第2作「ニュームーン/トワイライト・サーガ」(The Twilight Saga: New Moon・2009・米)の監督。脚本ではダメな続編「ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々」(Nutty Professor II: The Klumps・2000・米)を書いている。どちらかというとコメディ系の感じ。それでよく本作が書けたなあ。

 監督はケネス・ブラナー。シェイクスピア俳優として知られる役者で、イギリス王立演技学校を首席で卒業したらしい。映画でも多くのシェイクスピア作品を手がけている。「恋の骨折り損」(Love's Labour's Lost・1999・英/仏/米)もその1つで、コミカルでハッピーなミュージカルとなっている。かと思えば、モーツアルトのオペラを第一次世界大戦に置き換えた「魔笛」(The Magic Flute・2006・仏/英)や、シェイクスピア的家族の骨肉の争いの「マイティ・ソー」(Thor・2011・米)、そして頭を使う娯楽アクションの「エージェント:ライアン」(Jack Ryan: Shadow Recruit・2014・米/露)も撮っている。

 みごとな衣装はサンディ・パウエル。「恋に落ちたシェイクスピア」(Shakespeare in Love・1998・米)など、わりと歴史物を手がけている人。「アビエイター」(The Aviator・2004・米/独)などマーティン・スコセッシ作品も多い。最近は「ヒューゴの不思議な発明」(Hugo・2011・米)や「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(The Wolf of Wall Street・2013・米)など。

 公開2日目の字幕版初回、新宿の劇場は全席指定で。ムビチケカードで確保。当日は15分前くらいに開場。小学生くらいの子供連れから中高年まで幅広く、メインは20〜30代くらい。男女比は最初3.5対6.5くらいだったが、遅れてくる女子が多く、最終的には2対8くらいの感じに。607席の8割くらいが埋まった。すごいなあ。今後も口コミで増えるかも。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は...... とにかくあかるいまま始まる予告はもったいない。ギリギリまで来ない奴らもいるし、スクリーンがよく見えない。マナー広告やっててもケータイ点けてる奴らも多いし。

 左右マスクの「インサイド・ヘッド」は新予告に。最初の予告ではつまらなそうだったが、ちょっと内容がわかるようになってきたら、面白いかもと。でもなあ、どうだろ。日本映画の実写「脳内ポイズンベリー」とも似てるし7/18公開。

 四角い枠付きの「トゥモローランド」は普通の子供向けファイタジーのようなのに、ジョージ・クルーニーが出ているところがミソか。ただのファンタジーじゃないだろう。6/6公開。前売りでは映画に出てくるピン・バッチが付いてくるらしい。

 枠先の「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」はとにかくビジュアルがすごい。スタークが開発した人工知能ロボット、ウルトロンが人類を敵とみなし反乱を起こすらしい。7/4公開。

 アスクが左右に広がって、映画泥棒の後、「アナ雪」の上映へ。


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