2015年5月2日(土)「フォーカス」

FOCUS・2015・米/アルゼンチン・1時間45分

日本語字幕:手書き風書体下、藤澤睦美/ビスタ・サイズ(デジタル、IMDbではArri ALEXA)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、アルゼンチン13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/focus/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

大きな詐欺師集団を指揮する若いボスのニッキー(ウィル・スミス)は、1人で食事中に美人局を仕掛けてきた美女のジェス(マーゴット・ロビー)をあっさり見破る。そのテクニックに魅了されたジェスは弟子入りを希望し、ニューオーリンンズで開催されるアメリカン・フットボールの大きな試合でどれだけスリができるか、大勢のスリしたちに混じってテストされることに。しかし、見事合格したジェスの前から、ニッキーは姿を消してしまう。3年後、2人はブエノスアイレスで思わぬ再会を果たすことになる。

73点

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 うーむ、面白い話なのに主人公がウィル・スミスであることが邪魔をして、純粋に楽しめなかった。たぶん映画としては悪くない。だから他の人が主人公を演じていたら、もっと楽しめて面白かったのではないだろうか。あまりに主人公がカッコ良すぎる。スーパー・スターの雰囲気が出すぎている。もっと地味な人だったら。ウィル・スミスをよく知らない人の方が楽しめる映画だと思う。

 それに、金持ちのみを標的にするとはいえ、結局は他人の物を盗む犯罪者の話なのだ。被害を受けてやり返すのではないし、ターゲットは社会の敵でもない。義賊じゃなく、私利私欲で、働きもせずただ豪華な暮らしを楽しむためにやっている。そこはどうかと。コメディのように作られているものの、心底楽しめないではないか。犠牲者が、被害者がいるのだ。笑いも、エロの度が過ぎて......。

 構成はうまい。ついつい、ここからどんでん返しで「こんな風にならなければいいが」という最悪な方向に向かうのではと思わされてしまう。しかし、実際にはその方向に向かうように見せながら、見事に裏切って魔法のように元へと軌道修正してしまう。一瞬、ダメなプレイボーイの恋愛ゲームになるのかと思わせて、ちゃんと詐欺話に戻す。一瞬、ダメなギャンブル中毒の話になるのかと思わせて、ちゃんと詐欺話に戻す。そして詐欺を仕掛けて失敗したように思わせて......。うまい。ただ恋愛の部分に関しては、そんなに愛が伝わってこない。他のほとんどが嘘のため、愛は信じられないし、そんなエピソードもないのだ。セリフだけでは、いかにもそらぞらしい。

 とはいえ「スティング」(The Sting・1973・米)とは違う。あれはギャングへの復讐で、悪者をやっつけたのだ。だから溜飲が下がった。スッキリ爽快、大いに楽しむことができた。それを期待するとガッカリすることになってしまう。この主人公は自分の贅沢、快楽のために人の物を奪い、犯罪を働いているのだ。逮捕もされず、美女まで手に入れてしまうなんて。

 主演のウィル・スミスは自身の製作会社「オーバーブルック・エンターテイメント」を持っているそうで、どうも彼が最近製作した作品が?だ。息子を主演にジャッキー・チェンを招いて作った「ベスト・キッド」(The Karate Kid・2010・米/中)、おバカ・スパイ・コメディ「Black & White/ブラック & ホワイト」(This Means War・2012・米)、息子共演したラジー賞3冠の残念なSF「アフター・アース」(After Earth・2013・米)、ラジー賞を獲得したリメイク・ミュージカル「ANNIE/アニー」(Annie・2014・米)など、酷い作品がずらり。息子との初共演作「幸せのちから」(The Pursuit of Happyness・2006・米)なんかは良かったのに。概して、最近作で言えば、出演だけのものは悪くない感じ。「ニューヨーク冬物語」(Winter's Tale・2014・米)もボクは良かったと思うが......。本作も出演のみ。

 見習いスリのジェスは、オーストラリア出身の美女、マーゴット・ロビー。レオナルド・ディカプリオの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(The Wolf of Wall Street・2013・米)で注目された人。かなりエロティックなものだったが、本作もその延長にあるようだ。きわどい水着は驚かされる。いま撮影中の新作で、またウィル・スミスと共演するらしい。

 ニッキーの右腕らしいホーストはブレナン・ブラウン。とぼけた感じが良い。TVの出演が多く、「パーソン・オブ・インタレスト」(Person of Interest・2011〜・米)では主人公の正体を疑う怖いFBIエージェントを演じていた。

 仲間の1人で、下ネタ連発の憎めない明るいぽっちゃりキャラ、ファーハドはアドリアン・マルティネス。ジェスにケータイで写真を見せながら「俺の妻だ」「俺の息子だ」「俺の犬だ」「俺のディックだ」というお下劣ギャグには笑った。アカデミー賞で話題となった「アメリカン・ハッスル」(American Hustle・2013・米)、感動リメイク「LIFE!」(Life!・2013・米/加)など、1990年代から多くの作品に出ている。

 レーシング・チームのオーナー、ガリーガはブラジル出身のイケメン、ロドリゴ・サントロ。「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米/仏)や「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」(Charlie's Angels: Full Throttle・2003・米)に出ていた人で、「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・米)や「チェ 28歳の革命」(Che: Part One・2008・仏/西/米)「チェ 39歳別れの手紙」(Che: Part Two・2008・仏/西/米)にも出ている。最近では「ラストスタンド」(The Last Stand・2013・米)に出ていた。悪役の方が多い感じか。

 銃は冒頭の美人局のシーンでS&WのM28によく似た4インチ・リボルバーが使われている。後半レーシング・チームのオーナー、ガリーガのボディ・カードのような初老の男オーウェンズがベレッタに弾を入れておこうといっているので、持っていたオートマチックはM92だろう。胸の弾痕は実に見事で、射入孔は小さな丸い穴で、どす黒い血がどくどくと出てくるさまはリアルで恐ろしかった。すごい特殊効果。

 監督・脚本はグレン・フィカーラとジョン・レクアの2人。学校で意気投合して以来、コンビを組んでいるらしい。コメディ作品が多く、犬と猫の戦いを描いた実写コメディ「キャッツ&ドッグス」(Cats & Dogs・2001・米/豪)の脚本を手がけ、監督はジム・キャリーの「フィリップ、きみを愛してる!」(I Love You Phillip Morris・2009・仏/米)から。最近スティーヴ・カレルのラブ・コメ「ラブアゲイン」(Crazy, Stupid, Love.・2011・米)を監督している。そこから本作とは意外な展開。

 アポロという役名で出ているアポロ・ロビンスという人が、詐欺とスリの演出・監修をしているらしい。本物のスリ/詐欺犯罪/詐術に関する専門家で、コンサルタントらしい。政府機関にも協力しているのだとか。本作の驚くべき仕掛けの数々はたぶんこの人のおかげなのだろう。TVの詐欺師ドラマ「リバレッジ」(Leverage・2008-2012・米)にもアポロ役で出ているらしい。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜にムビチケカードで確保。当日は10分前くらいに開場。スクリーンはシネスコで開いており、中高がメインで、やや中年層が多いか。最初は30人くらいいて女性は3人ほど。中学生くらいも3人。その後、やや若い女子も増えて、本編上映ギリギリに若い男子がぞろぞろと入ってきた。最終的に232席に5.5割くらいの入り。まあこんなもんだろうか。

 気になった予告編は...... 左右マスクの「ヒロイン失格」はまたまたコミックスの実写映画化。桐谷美玲なのでバンパイアのやつかと思ったら違うようだ。それは「恋する・バンパイア」。似たような雰囲気だったけどなあ。しかもタイトルが分かりにくかったし。9/19公開。

 四角い枠付きの「ストレイヤーズ・クロニクル」は再び予告が始まった感じ。能力者は「ブレードランナー」のレプリカントみたいに余命が短いらしい。M4も出ていた。6/27公開。

 枠付きの「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は新予告に。絵がきれいだなあ。不気味なボスがいて、「俺に従え」と、そして「俺の女たちはどうした」と。脱走するんだろう。早く見たい。6/20公開。

 カーテンではなくシネスコに左右マスクのまま本編へ。やっぱりちゃんとカーテンで仕切ってほしいなあ。どうにも手抜きのような感じがする。テレビで見てるわけじゃないんだから。



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