2015年5月3日(日)「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」

THE NEXT GENERATION -PATLABOR-・2015・東北新社/松竹・1時間34分

シネスコ・サイズ(デジタル、SONY CineAlta)/ドルビーAtmos

(一部4Kデジタル上映もあり)

公式サイト
http://patlabor-nextgeneration.com
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

2002年に東京で柘植行人(つげ ゆきひと)の起こしたクーデターが発生し、それを止められなかった警視庁特車二課の後藤や南雲らメンバーは散り散りとなり消息も知れなくなっていた。特車二課もパトレイバー(レイバー)の衰退とともに活躍のチャンスを失い、課の解体もささやかれている。そんなとき、東京のレインボーブリッジが突如爆破される事件が発生する。画像解析により、陸自で評価試験中の熱光学迷彩機能を有する最新戦闘ヘリによるミサイル攻撃を受けたことが判明する。そのとき、特車二課第二小隊は、初代隊長後藤警部補の後輩、後藤田継次(ごとうだけいじ、筧利夫)隊長以下メンバー全員で慰安旅行に惚けていたが、急遽東京へ呼び戻され、警視庁・公安部外事課の高畑慧(たかはたけい、高島礼子)から証拠となるビデオ映像を見せられる。特車二課伝統の超法規的活動で、どうやって隠して移動し、補給をしているのか探って欲しいというのだった。

74点

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 驚いた。デジタル技術もあるのだろうが、スケールの大きな、まさに映画らしい大予算作品。もちろんあちこちに押井節はあるが、正面からハイテクを使った現代戦を描いたアクション・エンターテインメント。もちろん面白かった。そして正面から正攻法で描いているからこそ、数々のギャグが生きていた気がする。搦め手からだとギャグは当たり前というか、あざとくなって、逆に笑えないことがあるが、本作は結構笑える。リアルにシリアスに描いているからこそ、緊張の裏返しで笑いが生きてくると。

 予告やポスターなどでは「リアル・ロボット・バトル」となっていたが、サブ・タイトルにも「首都決戦」とあり、公式サイトでも「ニッポンが戦場になる」とあるとおり、これは戦争映画なのだ。日本で起こりうるテロとの戦争。ぶっ放すだけはよくあるが、実に緻密にリアクションである破壊や爆発が描かれている。まさかという警視庁、都庁、レインボーブリッジ、ゲートブリッジなどが、攻撃され、ぶっ壊される。これは驚きで、かつ痛快。雰囲気とレベルはハリウッドの「ダークナイト ライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)に勝るとも劣らない。すごいなあ。

 後藤田継次は筧利夫。前任者同様の昼行灯のようなおとぼけキャラだが、実はキレもので大活躍するという役所。やはりTVから映画へとつながる「踊る大捜査線」(1997〜2012・日)シリーズのキャリア、新城賢太郎がはまり役。本作は正反対のキャラだが、とぼけた感じが良かった。ミニパトのような小さなパトカーを使っているのがまたおもしろかった。

 押井作品によく登場するキレものの女役、高畑慧は高島礼子。部下の男たちにテキパキと指示を与え、ガンガン前に進む男前キャラ。イメージ的には「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003・日)の沖田管理官を演じた真矢みき的な感じもある。TBSのTVドラマ「ハンチョウ5 〜警視庁安積班〜」(2012・日)でもそんなキャラクターだった。使っていた銃はPPKのように見えたが。ラストに撃つのはFN MAG。日本映画初登場だろうか。ちゃんとベルト給弾で動いていた。

 あまりセリフはないが、美人で、口を歪めたニヒルな笑いが良かった灰原零はモデルでもある森カンナ。ちょっと倉科カナに似ているか。TVの「仮面ライダーディケイド」(2009・日)」のヒロイン役から本格的に女優をはじめたらしい。期待できそう。

 特車二課第二小隊にロシア連邦保安庁から研修に来ているというカーシャは太田莉菜。モデルから「69 sixty nine」(2004・日)のヒロイン役で女優デビュー。本作では格闘技や銃撃などかなり頑張っているが、台詞回しとは裏腹にやはり女性っぽさはだいぶ残っている感じ。惜しい。使っていた銃はAK74。突入の時、銃剣を装着していたので、とても邪魔そうに見えた。フルオートで撃ち合うのはちょっとどうなかと。セミの速射の方がプロっぽかったような。

 ほかに押井組ではおなじみの、千葉繁、藤木義勝もアニメ的なキャラで出演している。

 監督・脚本は押井守。「Avalonアヴァロン」(2000・日)以降、実写は規模の小さな作品が多かったが、本作は久々の大作。さすがの横綱相撲といったところ。謎を残して実行犯の逃亡というエンディングは、当然続編があるということだろう。

 実寸のレイバーやパイソン型リボルバーも作ったりと、日本映画としては破格ではないだろうか。いずれも素晴らしいデザインと出来栄え。ステルス・ヘリもいかにもありそうな形状で、ステルス性を高めるため、車輪のみならず機首のバルカン砲も引き込み式になっていて、いちいち収納するところが良い。透明になるところも見事だったし、液晶パネルが故障して数枚が黒いままになったりするのも良かった。ただ、バルカン砲のマズル・フラッシュが1箇所からだけではなく、3本の銃身全てから出ていたように見えたが......。

 ほかに出ていた銃は、特車二課第二小隊が突入する時ポンプ・ショットガンにグロックを装備。でもショットガンでコンクリートの壁の穴を広げられるかなあ。スラッグ弾ならコンクリート・ブロックは割れると思うけど、普通の壁はどうだろう。特殊部隊はMP5、敵は自衛隊の89式小銃などを使う。銃器特殊効果はビッグショット。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定。たまったポイントで金曜に座席を確保。当日は10分ほど前に開場。若い人から中高年までいたが、メインは中高年。やっぱり昔からの押井ファンだろうか。ほぼ男性。最終的には287席がほぼすべて埋まった。さすが。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は...... 四角の枠付き「ピクセル」はまだティーサーで同じ予告。絵は面白そうなのだが、主演アダム・サンドラーで大丈夫か。結局はおふざけおバカ映画でなければいいが。9/19公開。

 左右マスクの「母と暮らせば」は山田洋次監督作品。松竹120周年記念作品だそうで、吉永小百合と二宮和也の共演。なんだか終戦日から始まる幽霊話のようだが、ティーザーなので内容はほとんどわからない。12/12公開。

 左右マスクの「リアル鬼ごっこ」はシリーズが何作も作られているので、新しい作品という感じがしないが、今回はターゲットが女子高生と。「JKのみなさんはふてぶてしいので数を減らすことにしました」という子供のナレーションが面白かった。監督は園子温。トリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜のビデオ・メッセージ付き。7/11公開。

 左右マスクの「グラスホッパー」は伊坂幸太郎の同名小説の映画化。またまた生田斗真の主演で、監督は「脳男」の瀧本智行。はたしてどうか。ティーザーなので内容は不明。11/7公開。

 枠付き「天空の蜂」は原作が東野圭吾。巨大ヘリがキーのようで、ちょっと「パトレイバー」みたいだが...... 監督は堤幸彦。合っているのだろうか。9/12公開。

 マスクが左右に広がり、4Kと出てから本編へ。


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