2015年5月9日(土)「ブラックハット」

BLACKHAT・2015・米・2時間13分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS(IMDbではドルビー・デジタルEXも)

(米R指定)

公式サイト
http://blackhat-movie.jp
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

香港の原子力発電所が何者かにハッキングされ爆発する。中国政府は事件の捜査にチェン・ダーワイ大尉(ワン・リーホン)を指名。彼はアメリカのMITを卒業したコンピューターの専門家で、コンピューター・ネットワークに詳しい妹のチェン・リエン(タン・ウェイ)と組むことにする。犯人から何の要求もなく、手がかりがつかめない中、ネットワークに残っていた痕跡から、RATと呼ばれるコードが使われたらしいことが判明する。ちょうどアメリカでも大豆の先物取引がネットワーク・ハッカーのブラックハットによる侵入で急騰し、ここでもRATが使われる。そこで中国のチェンたちのチームとアメリカのFBIのキャロル・バレット(ヴィオラ・デイヴィス)のチームが共同で捜査することに。チェンは早速、捜査のためにプログラマーのニコラス・ハサウェイ(クリム・ヘムズワース)をチームに加えるように要請する。RATはかつてチェンがMIT時代に、同級生のハサウェイと一緒に開発したプログラムがベースになっているというのだ。ところが、ハサウェイはカード詐欺で刑務所に服役中だったことから、バレットは任務に成功すれば釈放するという条件で出所させ、チームに加える。

75点

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 面白かった。楽しめた。ハイテクのハッカー話だが、さすがマイケル・マン監督だけあってしっかりしたアクションになっていて、リアルな銃撃戦も盛り込みながら、ハラハラドキドキする駆け引きのスリラーっぽい仕上がり。ただし、バイオレンス表現は過激で、たくさんの死人が出て、どす黒い血が流れる。なぜこれで日本はGという誰でも見られるレイティングなのかわからない。どうせ子供は見ないだろうけど。

 見所は姿を見せない敵ハッカーとの静かな戦いと、銃撃戦などの派手なアクションの融合。実にうまく混ぜ合わせている。そこに中国(香港)サイドの法執行機関と、アメリカの法執行機関、FBIやNSAが絡んできて政治的な対立がありながらも現場の人間達は協力し合うという構図と、中国側の捜査官の妹と、アメリカ側の協力者としての犯罪者の恋愛感情も盛り込んでいる。もちろん、マイケル・マンらしい男の友情的なものも。IMDbではわずか5.4点という低評価だが、ボクは面白かった。

 ハッカーをどう追い詰めていくのか。進入路の特定、プログラムの入手、分析などが推理ものののように進められて思わず引き込まれる。多少ネットワークなどに知識があった方が楽しめるのだろうが、ボクでもどうにかついて行けたので、たぶん誰でも大丈夫。そしてせっかく追い詰めても、敵は監視カメラに侵入してこちらを見ていたりして、主人公サイドと観客のちょっと上を行く。この辺がうまい。

 そしてデジタル・カメラよる夜明けか朝焼けの、微妙な光の具合の景色が美しく捉えられている。暗いシーンでも割と細部がわかる。音もクリアで、反響したりこもったり、あちこち回ったり立体的。特に銃声は銃ごとに違ったり、場所で違ったりとリアル。弾着音も当たった場所によって微妙に変えられており、鉄のコンテナに当たったときのカツン、カツンというような反響して抜ける音がことのほかリアルだった。

 ただし、コンパクトで振り回しやすいからといって、ちょっとカメラを動かしすぎの感じはした。不快ほどではないが、その手前というかボーダーライン上。登場人物達と一緒に走ったり、回り込んだり...... シネスコ・サイズなんだから、もう少し落ち着いてくれ。目が回るし、何が写っているかわからない。ビデオ的な生々しい感じはあふれていたが。

 主役のニコラス・ハサウェイはクリム・ヘムズワース 。オーストラリア生まれで、TVから「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)のカーク船長の父の若い頃の役でスクリーン・デビュー。IMDbでは評価が高いが、ボク的には残念な「マイティ・ソー」(Thor・2011・米)が有名ながら、残念な作品は多い。つい最近も評価は高いようだが「ラッシュ/プライドと友情」(Rush・2013・英/独/米)が残念なことに。本作は良かったと思うが、公開を間近に控えている話題作「白鯨のいた海」(In the Heart of the Sea・2015・米)はどうか。ラストに敵から奪って使うのはワルサーP99。

 恋人となるチェン・リエンはタン・ウェイ。「ラスト、コーション」(Lust, Caution・2007・米/中/台)で過激なベッド・シーンを演じていた人。ついにハリウッド進出。どんどん活躍してほしい。

 中国人の相棒チェン・ダーワイ大尉はワン・リーホン。ニューヨーク生まれで台湾で活躍する歌手で俳優。藤原紀香が主演した「SPY_N」(Spy N・2000・香)で劇場長編映画デビュー。SFアクションの「拳神/KENSHIN」(Kuen sun・2001・香)に出た後、HYDEやGacktの出た日本映画「MOON CHILD」(Moon Child・2003・日)にも出ている。「ラスト、コーション」では学生活動家としてタン・ウェイと共演している。使っていた銃はP226かと思ったら、imfdbによるとノリンコのQSZ92ピストルらしい。さすがマイケル・マン監督作品、マニアック。

 FBIのキャロル・バレットはヴィオラ・デイヴィス。「ネエちゃんと呼んでも良いわ」とか、なかなか魅力的な役柄。姉御肌のできる女性が似合うのか、そういう役が多い印象。ジェニファー・ロペスの「アウト・オブ・サイト」(Out of Sight・1998・米)あたりから映画に出始め、最近は残念なSFファンタジー「エンダーのゲーム」(Ender's Game・2013・米)や、シリアスな誘拐事件を描いた「プリズナーズ」(Prisoners・2013・米)などに出ていた。この人も銃を撃っていたが、銃種を確認できなかった。

 連邦保安官のジェサップはホルト・マッキャラニー。どちらかというと悪役の多い印象だが、「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)でもシークレット・サービスを演じていた。 「L.A.ギャングストーリー」(Gangster Squad・2012・米)やスタローンの「バレット」(Bullet to the Head・2012・米)にも出ている。使っていたのは1911オートのカスタム。射撃がうまい設定で、悪党をバンバン倒す。

 レバノン人のカサールはイギリス出身のリッチー・コスター。キーファー・サザーランドとマイケル・ダグラスの「ザ・センチネル/陰謀の星条旗」(The Sentinel・2006・米)や、ヒース・レジャーのジョーカーが素晴らしかった「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)に出ており、最近ではスウェーデン映画のリメイク「モールス」(Let Me In・2010・英/米)にも出ていた。1967年生まれとは思えない貫禄。使っていた銃はガリルのショート・バレルのMAR。ラストはミニ・ウージー。

 ほかに香港のSWATはMP5、香港の刑事は P250、カサールの部下たちはAKS74U、SG552など。カサールはペリカン・ケース入りのRPGも調達するし、対人地雷のクレイモアも使う。アーマラーはロケ地ごとに別な担当がいるが、クレジットではコンバット・アドバイザー、IMDbではテクニカル・アドバイザーはミック・ゴールド。CQBインストラクターで、いくつかのマーシャル・アーツに精通しており、イギリス軍と政府の仕事をしていたらしい。マイケル・マン作品では「ヒート」(Heat・1995・米)から、「コラテラル」(Collateral・2004・米)、「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・米/独ほか)、「パブリック・エネミー」(Public Enemie・2009・米/日)などに関わっている。ほかに「ロング・キス・グッドナイト」(The Long Kiss Goodnight・1996・米)、「リプレイスメント・キラー」(The Replacement Killers・1998・米)、「RONIN」(Ronin・1998・英/仏/米)、「96時間」(Taken・2008・)(続編には関わっていないから、続編がダメなのかも)、「コルト45」(Colt 45・2014・仏/ベルギー)など、銃や撃方が印象的な映画のほとんどに関わっている。

 原案・脚本は監督のマイケル・マンとモーガン・デイヴィス・フェール。モーガン・デイヴィス・フェールはTVで編集を担当していたようで、映画の脚本は初めてらしい。これは今後も楽しみかも。

 マイケル・マンは大御所だと思うが、上映館を見ると、こんな扱いだと驚かされる。公式サイトで「巨匠マイレル・マン監督5年ぶりの最新作」と言っているのだから、わかっていてこの扱いということだ。ユニバーサルとTOWAか......。古くはTVの「刑事スタスキー&ハッチ」(Starsky and Hutch・1975〜1979・米)の脚本、「特捜刑事マイアミ・バイス」(Miami Vice・1984〜1990・米)の製作総指揮もやったヒット・メーカー。映画でボク的にしびれたのは「ラスト・オブ・モヒカン」(The Last of the Mohicans・1992・米)と「コラテラル」(Collateral・2004・米)かなあ。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケで金曜に確保。当日は20分前くらいに着いたらすでに開いていた。観客層はメインはもちろん中高年。少し若い人。男女比は男50人くらいに女性4〜5人。マイケル・マンだからなあ。最終的には183席に7割くらいの入り。結構いいのではないだろうか。もちっとちゃんと広告して、もっといい劇場に掛ければ。

 スクリーンはビスタで開いており、気になった予告編は...... 1.5cmの小さな男が活躍するらしい「アントマン」はまだ日本語公式サイトがない模様。ティーザーなのでわからないが、お子様向けのおふざけものか、シリアスなアクションものか。9/19公開。

 そして上下マスクの「ファンタスティック・フォー」はリメイクらしい。なにしろ以前公開されたものが酷かったし、続編が作られたことだけでも不思議たったのに、最初からの契約があったからか。さて、今回リメイクするにあたって、前作はなかったことにするんだろうか。どうだろう。彼らの能力自体が漫画っぽいといえば漫画っぽいけど。秋公開。

 上下マスクの「エベレスト」はジェイク・ギレンホールの主演で、エベレスト登頂の遭難を描く実話の映画化らしい。まだ日本語公式サイトはない模様。11月公開。

 さらにビックリは上下マスクの「バットマン v スーパーマン:ドーン・オブ・ジャスティス」。これってどういうこと?「エイリアン vs プレデター」みたいなことか。2016年春公開。

 「アンフェアthe END」はいよいよ最後か。すべてが終わる、とか。9/5公開。

 上下マスクの「S -最後の警官-」はTV放送が終わってからだいぶ経つが...... TVではアクションも残念な感じだったが、どうなのか。AKの弾をジュラルミンの盾ではじいちゃうか。8/29公開。

 シネスコじゃないらしい「ジュラシック・ワールド」はパークで恐竜が逃げ出してパニックになっているところの予告。あまり緊迫感もない、リアルさもない感じだったが、大丈夫か。8/7公開。

 「このミステリーがすごい」の海外編第1位が原作というもリドリー・スコット製作の上下マスク「チャイルド44」は子供達が消えたミステリーをソ連の警察官が解いていくというものらしい。みなロシア訛りの英語でしゃべっている。俳優陣も豪華で、面白そうだが、劇場がなあ...... 7/3公開。

 上下マイクの「予告犯」はやっと内容がわかるものに。犯人は4人で、復讐をするみたいなことなんだろうか。ニコニコ動画みたいに文字がかぶっていて、なんだかなあ。6/6公開。

 続編が酷かった「ハンガーゲーム」は、3部作のラストとなるもので前後編になる模様。全く期待していなかったのだが、今度は戦争状態になるようだ。予告は面白そう。もう1回、いや正確には2回になるが、だまされてみるか。完結編は11月公開らしい。主人公たちが大人になっちゃって......。6/5公開。

 上下マスクの「真夜中のゆりかご」は主人公の刑事の赤ちゃんが死んでしまって、ひどい状態の犯人の赤ちゃんを盗んで代わりに育てる的なお話のよう。予告だけで十分に重い。デンマーク映画。5/15公開。

 スクリーンが左右に広がって、上下も少し狭まって本編へ。

 この劇場はスクリーンが小さく、しかも真ん中より前の方の席は前席の人の頭がちょっと邪魔になる。床が平らな前方席になると大丈夫なようだが見上げるようになるし......。他で掛けてほしかった。皆それを知っているのか、後ろ寄りから埋まっていった。池袋じゃさらに小さいキャパだし。


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