2015年5月16日(土)「ラン・オールナイト」

RUN ALL NIGHT・2015・米・1時間54分

日本語字幕:手書き風書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(レンズ、Panavision)/ドルビー・デジタル(IMDbではDATASATも)

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/runallnight/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

ジミー・コンロン(リーアム・ニーソン)は、現在は合法組織となったマフィアの殺し屋だが、半ば引退したような状態で、アル中気味ですでに初老、若い構成員たちからもバカにされていた。ある日、アルバニア人マフィアのヘロイン密輸を手助けする話を、ボスの息子ダニー(ボイド・ホルブルック)がボスである父のショーン・マグワイア(エド・ハリス)のところへ持ってくる。しかしショーンに断られ、ダニーはアルバニア人マフィアとトラブルになり、ボスたちを射殺してしまう。そしてそれを目撃したジミーの息子マイク(ジョエル・キナマン)も命を狙われることになる。それを知ったジミーは、まったくのカタギで絶縁状態の息子マイクを救うため銃を持ってマイクの家に駆けつけ、マイクを撃とうとしたダニーを射殺してしまう。ボスのショーンは全組員にマイクとジミーの殺害命令を出し、2人は一緒に逃げることになる。

74点

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 すごい映画。ヤクザの世界の話なので、暴力満載。さすがにR15+指定。悪い奴らばかりで、警官も買収されていてあてにならない。しかも主人公の男はアル中気味の半分引退したような殺し屋で、ヘタレ寸前のダメ男。息子からは縁を切られているし、同じ組織の若い奴らからは完全に馬鹿にされている存在。観客も応援するのがはばかられるような奴というのが、ちょっとヤリ過ぎかなと。もうちょっとは良いところがないと。ただ。後半になって息子を助けようとすると、人が変わったようにできる男、ヤリ手になってカッコ良く豹変する結果、応援できるようになる。一貫性はないものの、そこからは面白い。ハラハラドキドキ。プロの殺し屋の追手も出てきて、とにかく強くて怖いのもいい。ボスも最初とはうって変わって、冷酷な恐ろしい男になって、存在感を出す。

 素晴らしい緊張感がある。これはみごと。いかんせん、パターンという感じはある。ハリウッド・パターンともいうような感じ。主人公側の父と子の諍い。敵側の馬鹿息子とできる怖い親父。それによる主人公と敵の戦い。そして主人公と敵の友情関係のようなもの。犯罪地域のようなところで、子供達にボランティアでスポーツを教えている良い人とか、これらはありがちだ。それでも、事件が起きてからはテンポが良く、緊張感にあふれているので、惹きつけられる。そして主人公側は、基本的には小さなミスが重なって、避けられずに大事になっていくのは良い。バカばっかりでは、嫌気がさして付いていけなくなる。

 ただし、このジャウマ・コレット=セラ監督は後味の悪い映画ベスト10の1本に選ばれた「エスター」(Orphan・2009・米/加/独/仏)も撮っているので、注意は必要。本作も、すべて解決スッキリ爽快とはいかない。バッド・エンディングではないが、これだけの事件を起こして、何もなしというわけにはいかないだろう。しようがない。

 主人公のジミー・コンロンはリーアム・ニーソン。残念なものから、すごいものまで、いろいろ出ている人だが、初期は「ダークマン」(Darkman・1990・米)のようなアメコミ的ヒーローものにも出ていたが、スピルバーグの超大作「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)あたりから文学路線的になったりして、残念な大作ホラー「ホーンティング」(The Haunting・1999・米)のあとあたりからB級路線になって、日本では劇場未公開となった西部劇の「セラフィム・フォールズ(未)」(Seraphim Falls・2006・米)あたりからアクションが多くなってきたような印象。やはり良かったのは続編は別として第1作の「96時間」(Taken・2008・仏)だろう。1952年生まれなので63歳。本作の予告では最強の63歳とか言っていたけれど、本当にこの年齢になってからのアクションはすごい。今後も何歳までできるのか、大いに期待したい。本作のジャウマ・コレット=セラ監督とは「アンノウン」(Unknown・2011・英/独/仏)と「フライト・ゲーム」(Non-Stop・2014・英/仏/米)というアクション作品で仕事をしている。使っていた銃は、過去の男ということでかリボルバーで、たぶんルガーのGP100の4インチ。今は、セカンダリーとしてはともかく、メインにはしないだろう。ラストには山小屋に隠しておいた.44-40のウィンチェスターM92を使う。imfdbではM94としている。カートリッジのヘッド・スタンプが映って、.44-40とあったと思うのだが。

 ボスのショーン・マグワイアはエド・ハリス。古くは「ライトスタッフ」(The Right Stuff・1983・米)などに出ているが、強く印象に残ったのはジェームズ・キャメロン監督のSF「アビス」(The Abyss・1989・米)あたりから。スナイパーの戦争映画「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2000・米/仏ほか)のドイツ軍将校のスナイパーも良かった。監督・脚本・出演を務めた日本劇場未公開西部劇「アパルーサの決闘(未)」(Appaloosa・2008・米)も良かった。どちらかというと悪役が多く、かなり怖い。最近はB級が多くなってきた感じ。これはある種パターンだ。使っていた銃は、やはり古い男なのでブローニング・ハイパワー(コマンダー・タイプのリング・ハンマーだった)。

 主人公の息子のマイクはジョエル・キナマン。どこかで見たと思ったら、リメイク版の「ロボコップ」(RoboCop・2014・米)で主役のマーフィを演じていた人。作品が残念な感じだったので、印象も薄かったようだ。警官のグロックを拾うが、父が使わせない。

 ボスの息子のダニーはボイド・ホルブルック。こすい感じが見事だった。デヴィッド・フィンチャーのミスタリー「ゴーン・ガール」(Gone Girl・2014・米)に出ており、「誘拐の掟」(A Walk Among the Tombstones・2014・米)ではリーアム・ニーソンと共演している。使っていた銃はたしかシルバーの1911ガバメント。若いやつなのに銃のチョイスは古い。

 感情がないような殺し屋プライスはコモン。ミュージシャンとして成功しているが、役者としてもアクション系でかなり出ている。アクション・コメディの「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・英/仏/米)、リドリー・スコットのギャングもの「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米/英)、ティムール・ベクマンベトフの奇想天外アクション「ウォンテッド」(Wanted・2008・米/独)、キアヌ・リーヴスのアクション「フェイク・シティある男のルール」(Street Kings・2008・米)、「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)と矢継ぎ早に出演。最近だと「グランド・イリュージョン」(Now You See Me・2013・仏/米)に出ている。本作ではクールな感じが良かった。使っていた銃は現代の殺し屋らしくCZ75 SP-01。装弾数は18発だからジミーの3倍。レーザー・サイトまでつけている。しかもボディ・アーマーも着用。結構マガジン・チェンジはやっていたし、後半では膝に自由を挟んでのタクティカルなマガジン・チェンジまで披露。

 ちょっとゲスト的に出てくる刑事のジョン・ハーディングはビンセント・ドノフリオ。古くは「ザ・セル」(The Cell・2000・米/独)に犯人役で出ていた人で、最近だと「ジャッジ裁かれる判事」(The Judge・2014・米)にロバート・ダウニーJr.の兄弟役で出ていた。

 カメオ出演のような主人公の兄エディはニック・ノルティ。歳をとってヒゲもじゃもじゃで誰だかわからないくらい。しかもクレジット無し。「48時間」(48 Hrs.・1982・米)の大御所で、最近ジェイソン・ステイサムのアクション「PARKER/パーカー」(Parker・2013・米)に出ていた。74歳。

 ボスの直近の部下パットはブルース・マッギル。悪役の多い人で、TVが多いがスピルバーグの「リンカーン」(Lincoln・2012・米/印)に議員役で出ていた。

 脚本はブラッド・イングルスビー。思わずため息が出てしまうような暗いドラマ「ファーナス/訣別の朝」(Out of the Furnace・2013・米/英)を書いた人。本作はアクションが主体だが、確かに雰囲気は繋がっているかも。

 監督はジャウマ・コレット=セラ。スペイン生まれの41歳。音楽ビデオの世界からCMを手がけるようになり、名プロデューサー、ジョエル・シルバーの目に止まってリメイク・ホラー「蝋人形の館」(House of Wax・2005・豪/米)で監督デビューしたらしい。その後「エスター」や「アンノウン」などを手がけ、そしてやはり後味のよろしくないSFサスペンス「記憶探偵と鍵のかかった少女」(Mindscape・2013・米/西/仏)をプロデュースしたのち、「フライト・ゲーム」から本作へと至るらしい。ポジティブ、ネガティブはあるが、感情を揺さぶる手腕は確かだと思う。

 他に出てきた銃は、NYPDの刑事たちはグロック、SWATはM4カービンなど。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日にムビチケカードで確保。当日は12〜13分前くらいに行ったら開いていた。観客層は中高年がメイン。ほぼ男性で、女性は5分前くらいまで1割ほどだったが、最終的には2割くらいになっただろうか。そして128席が8割ほど埋まった。

 スクリーンは最初からカーテンがなく、シネスコのむき出し。左右マスクで、東宝ニュースに続いて上映された予告で気になったのは...... 四角い枠付きの「S-最後の警官-奪還」はTVの視聴率が良かったので劇場版が作られたらしいが、銃を使わず格闘で倒して逮捕するというコンセプトでアクションになるのかと。やたら理想を語るのもどうかなあ。8/29公開。

 こちらもTVからの劇場版、枠付き「HERO」はアクションじゃないけれどワクワクさせるものがある。音楽を聴いただけでアガる感じ。内容がわからないのに期待させるあたり、すごい。ティーザーから新予告に。7/18公開。

 枠付き「マッドマックス」は何度見てもすごい。サブ・タイトルはどうかと思うけど、力のある美しい絵、強烈なキャラクター、スペクタクル......とにかく期待させる。ガッカリさせるようなことはないよなあ。6/20公開。

 左右マスクが広がって、シネスコのフル・スクリーンになって本編へ。


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