2015年5月16日(土)「シグナル」

THE SIGNAL・2014・米・1時間37分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、in Panavision(IMDbではArri ALEXA))/ドルビー・デジタル

(米PG-13指定)

公式サイト
http://signal-movie.jp
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

ニック(ブレイトン・スウェイツ)、ヘイリー(オリヴィア・クック)、ジョナ(ボー・ナップ)の仲良し3人組。ニックとジョナはコンピューター技術に優れ、MITに入学したが、ヘイリーは1人カリフォルニア工科大に入学した。そこでカリフォルニアへ引っ越しするヘイリーを手伝うため、ニックとジョナが車で送って行くことになる。すると途中、ヘイリーのノートPCがハッキングされ、相手がMITにも侵入した“ノーマッド”と名乗る人物であることが判明する。挑発に激怒したニックとヘイリーはジョナも連れて、ハッキングの痕跡を分析し発信位置を特定しそこへ向かう。ところがそこは荒野の中の廃屋で、調べているうち何者かに襲われて気を失ってしまう。ニックが気付いたのは、政府の隔離施設のようなところ。防護服に身を包んだ責任者と名乗る男、デイモン(ローレンス・フィッシュバーン)が現れ、尋問を開始するが......。

68点

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 うーむ、説明不足。ちゃんと料理されていないというか、料理される前の加工した素材をバラバラに見せられた感じ。そこそこの技は振るわれているが、まとまっておらず、材料の相乗効果も出ておらず、一体、何を作ろうとしたのかもわからない状態。

 ひとことでいうと、わからない映画。難解ではなく、不明。思わせぶり。多くの謎を展開して、観客を引き付け、たった1つにだけ答えて多くは謎のまま終わる。説明放棄。なんだ、これ。実験映画か? 冒頭の仲良し男女3人による、青春恋愛物語のようなロード・ムービー・パートは、よくあるTVドラマみたいだが、それなりに良くできてはいた......。

 低予算というのも伝わってくる。それゆえの結果なのだろうか。途中「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(The Blair Witch Project・1999・米)みたいになるところもいただけない。まるで「六尺の大イタチ」的呼び込み口上。結局何もなしで終わりかという嫌な予感がよぎり、1つの答えを除いてほぼそうなる。それも予想通り。まあ1つでもあるだけ「ブレア......」よりはましだが。

 ミステリーだと思うから細部まで注意して見ていたのだが、結局ほとんどは説明されない。だかせ矛盾だらけのような気がする。というのも、それがコンテ・ミス、製作上のミスか、それとも伏線なのかわからないからだ。説明されればわざとだったのかとわかるが、説明されないと単なるミスのようにも見える。たとえば、冒頭、主人公が着ているTシャツには片側に薄くシミのようなあるが、その後のドライブではないように見える。そして途中のガソリンスタンドでコーヒーをこぼし、Tシャツにシミができる。これはミスなのか、時間軸が入れ替えられているという演出なのか。さらに、尋問で今時時代遅れなテープレコーダーが普通に使われているが、その後で、尋問員が「今時まだボールペーンが残っているとはな」などという。ポールペン、普通でしょ。一体、映画の今は過去なのか、未来なのか。これに答えることもない。研究所のようなところの時計は、皆、12時半でとまっているのはなぜだという質問がありながら、「故障しているんだ」という説明しかない。ほかにもたくさんある。

 主役のニックはブレイトン・スウェイツ。オーストラリアの若手俳優。特にコメントはないなあ。「マレフィセント」(Maleficent・2014・米/英)に出ていたらしいが、記憶にない。

 後半ほとんど存在感がなくなる女の子、ヘイリーはイギリスのオリヴィア・クック。可愛いので、今後活躍するかも。

 味があったジョナはボー・ナップ。どこかで見たような感じがあったと思ったら、「SUPER 8/スーパーエイト」(Super 8・2011・米)に出ていたらしい。つい最近「ラン・オールナイト」(Run All Night・2015・米)でボスの息子ダニーの手下をやっていた。

 たぶん製作費のほとんどを持って行ったのがデイモン役のローレンス・フィッシュバーン。この人が出ていなかったら、だいぶ印象は違ったものになっていただろう。日本で劇場公開されなかったかも。この人のおかげで重みが出ている。ただ最近はTVの方が多くなった感じ。

 問題がありそうな脚本は、監督のウィリアム・ユーバンク、その弟のカーライル・ユーバンク、デヴィッド・フリガリオの3人。カーライル・ユーバンクは本作がデビュー作。このできで、次があるのだろうか。デヴィッド・フリガリオは本作のコンサルティング・プロブューサーでもあるらしい。今後監督デビューの予定もあるらしいが......。

 監督はウィリアム・ユーバンク。絵作りは悪くないと思う。カットごとやシーンごとは良くても、それが有機的につながっていない感じ。CMの世界を経て2006年くらいから撮影監督を務め、「ライジング・サン 〜裏切りの代償〜」(House of the Rising Sun・2011・米)は日本で劇場公開されたらしい。その後「地球、最後の男」(Love・2011・米)で監督・脚本・撮影を務め劇場長編映画デビュー。まともな脚本でどう撮れるか。

 銃は女性の車のグローブ・ボックスにしまってあるシルバーのテーパード・バレルのS&Wらしい古いリボルバー。怪しげなそげの男はオート・ショットガンを持っている。警備員なのか特殊部隊なのかが使うのは定番のM4カービン(マグプルのM4もあったような)。デイモンは1911オートのちょっとカスタム。
 公開2日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで金曜に確保。12〜13分前に開場となり、場内へ。SFホラー系だからか若い人から中高年まで、わりと幅広かった。女性は3割ほど。場内が明るいままCM・予告が始まったが、スクリーンが明るいので、どうにか見れるレベル。最終的には117席に8割くらいの入り。しかし今後増えることはないだろう。どうも2週目からは1日1回夜の上映になるらしい。まあ、そうだろうなあ。

 カーテンなしの角丸シスネコ・スクリーンでの気になった予告は...... ロビーにもポスターが貼ってあった左右マスクの「新宿スワン」は、漫画の映画化で、歌舞伎町が舞台らしいヤクザ映画。みるからにバイオレンス満載。気が滅入る。5/30公開。

 「バットマンvスーパーマン:ドーン・オブ・ジャスティス」は写真のみのアナウンス。IMAXでは予告が流れるとか、ネットで流出したとか、結局、公式のティーザーが公開されたとかいろいろあるようだが、劇場ではTOHOニュースで写真のみ。2016年春公開。まだ公式サイトは英語版のみの模様。

 まあ、とにかく本編上映ギリギリまでケータイをいじっているヤツが多い。右隣のオヤジはケータイでゲーム、左隣のオバさんはiPadでゲーム。予告は見ていない。マナー広告で携帯はオフになどと言っても聞いちゃいない。オバさんは本編直前iPadをしまったら、ケータイを取り出して、LINEなのかメッセージを打ち始めたし...。オヤジは直前にケータイをしまうと、本編が始まって間もなく爆睡。気持ちはわかるが、何しに来たんだ。後半は起きていたようだが。ケータイが放せないほど忙しいなら来るな。触りたいなら外で、ロビーでやれ。

 左右マスクが広がって、シネスコのフル・スクリーンになって本編へ。


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