2015年5月30日(土)「メイズ・ランナー」

THE MAZE RUNNER・2014・米・1時間53分

日本語字幕:丸ゴシック体下、若林桃子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arro ALEXA)/ドルビーATMOS、ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビー、Auro 11.1も)

(米PG-13指定)(IMAX版の上映もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/mazerunner/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

トーマス(ディラン・オブライエン)が気づくと檻のようなカゴの中で、WCKDと書かれた資材とともにゴトゴトと暗いトンネルの中を上昇中で、一番上に着くと天井が開き、多くの少年たちが覗き込む。そのリーダーのアルビー(アムル・アミーン)が、その高い塀に囲まれた場所「グレード」の説明をしてくれる。3年前から始まっていて、月に1回、食料や物資と一緒に1人の新人「グリーニー」が「ボックス」で送り込まれてくるという。そしてグレードは周囲を高い塀でできた迷路(メイズ)で囲まれており、朝になると入り口が開き、夕方には閉じてしまう。中には「グリーバーズ」と呼ばれるモンスターがおり、見つかると殺されてしまうため、「ランナー」と呼ばれる特別に選ばれたものだけが入って、出口を見つけようとしているという。トーマスは先月まで新人だったチャック(ブレイク・クーパー)に面倒を見てもらい、そのコミュニティで暮らすことになる。そんなある日、ランナーの1人がグリーバーズに刺され、乱心してトーマスを襲うと「お前のせいだ」と口走る。

74点

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 IMDbでは6.9の低評価だがボクは面白かった。たぶん、冒頭の30分くらいで主人公のキャラクターが好きになれないからではないか。どうにもバカに見えてしまう。新入りのくせに態度が生意気で、ルールを無視し、弱いくせに戦いを挑む。困った問題児。顔つきも目つきが鋭く、チンピラ風。後半、自ら進んで行動を起こし、命をかけて仲間を助け、現状を打破しようと積極的な姿を見せてくれるあたりから、カッコよく見えてきて感情移入できる。ヒロインのキャラクターもヒステリックで、性格がきつい感じで、やっぱり目つきが鋭すぎ。ちょっと好きになれないタイプ。この辺の評価の違いかも。

 系としては「ハンガー・ゲーム」(The Hunger Games・2012・米)3部作と同じような感じだが(「ダイバージェント」(Divergent・2014・米)は問題外)、あちらがアメリカではIMDbで7.3点などと過大評価されている感じなのとは対照的。日本では本作の方が高い評価を得るのではないだろうか。どちらも全米でティーンエイジャーを中心にベスト・セラーとなったSF小説が原作。ちょっと「ハンガー......」のような繰り返しを予測してしまったが、そんなことはなかった。第1作の迷路は第1作で終了。見事クリアして見せ、一旦終了するが、次もあることを匂わせ、さらに新たな謎を作り出して終わる。しかも、起きることが、タイミングも内容もちょっとだけ観客の先を行っていて、予測をさせない。もたつくのは導入部分だけ。あと、アクション・シーンだけはカメラを振ったりするため、何が写っているのか、何がどうなっているのか、わからない。もう少し見せてくれないと。

 あとはよくできている。特に高い壁で構成された動く迷路は素晴らしい。本当にそんなセットを作って撮影したみたい。動く様子もいい感じ。イメージ的に迷路は「エイリアンVS. プレデター」(AVP: Alien vs. Predator・2004・米/英ほか)とか、高い塀は漫画の「進撃の巨人」っぽいけど。錆びた歯車のようなものが付いていて、古い遺跡のようでもあるのに、ハイテクでもあるというのは、サソリのような生体と機械のハイブリッド・サイボーグにも通じる。尻尾は「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)の蛇ロボットみたいだが。

 画質は素晴らしく、暗いシーンでもつぶれず細部まで見える感じ。音もクリアーで聞き取りやすく、耳障りでもない。そして立体的でよく回っていた。このへんのレベルの高さはハリウッドならではか。

 主役のトーマスはディラン・オブライエン。ちょっと精悍な感じはするが、いまひとつパッとしない感じも。胸毛もあったしなあ。1991年生まれの24歳。TVから映画に出るようになって本作の主役に抜擢された。ブレイクするかどうかは続編の出来次第かもしれない。

 サブ・リーダーのニュートはイギリス出身のトーマス・ブロディ=サングスター。新人が多い中、見たことあるなあと思ったら「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米/仏)でリーアム・ニーソンの息子を演じていたらしい。その後「トリスタンとイゾルデ」(Tristan + Isolde・2006・米/英ほか)や、若き日のジョン・レノンを描いた「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」(Nowhere Boy・2009・英/加)にも出ていているが、いずれも日本ではアート系小劇場での公開。

 いじめっ子キャラのギャリーもイギリス出身のウィル・ポールター。この人も見覚えがあるなあと思ったら、2作め以降残念な「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」(The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader・2010・米)に出ていた。

 ランナーのリーダー、ミンホはキー・ホン・リー。韓国出身で、見たことがあるように思ったが、TVと短編がほとんどで、どれも見ていないようなので、気のせいだったのかも。

 ヒロインなのか、最後に登場する女の子、テレサはカヤ・スコデラリオ。イギリス出身で、美人だけれど、ちょっと感じがキツいなあ。男の子にしても、監督はキツめが好きなんだろうか。アート系小劇場で公開された「月に囚われた男」(Moon・2009・英)や残念なリメイク冒険ファンタジー「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)に出ている。

 原作はジェイムシュ・ダシュナーの160万部同名ベスト・セラー。脚本はノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T.S.ノーリンの3人。ノア・オッペンハイムはNBCニュースのプロデューサーだったそうで、ドキュメンタリーから本作に至るらしい。脚本は本作が初めて。なんとあの残念な「ダイバージェント」の第3作にも関わっているらしい。危険だ......。グラント・ピアース・マイヤーズはリメイクの「ザ・フォッグ」(The Fog・2005・米)などの製作総指揮のデレク・トーチーのアシスタントだったそう。やはり本作が初めての脚本らしい。T.S.ノーリンも脚本は本作が初めて。同じ年から製作総指揮はやっていたらしい。いきなり製作総指揮って、どこから入ったんだろう。それにしても、3人とも初脚本でここまでまとまったとはすごい。原作の良さなんだろうか。

 監督はウェス・ボール。大学の映画学科を卒業し、視覚効果のプリビズなどを手がけていたらしい。そこから視覚効果もやるようになって短編を監督した後、本作に抜擢されたらしい。視覚効果がわかっているからこの演出ができたのだろう。ただシネスコのアクション・シーンのカメラ・ワークはもっと工夫したほうがいいような気はする。これは経験の問題かもしれない。次作、期待したい。

 登場した銃は、監視施設のようなところで警備員らしい男のところに落ちているのがマテバ・リボルバー。これをギャリーが拾って撃とうとする。女所長のようなエヴァ・ペイジが使うのは、タウルス版チーフス・スペシャルの旧型M85。特殊部隊が持っていたのは、H&KのUMP、AUGなど。

 クレジット後の予告編は3部作の第2章となる「ザ・スコーチ・トライアルズ」だとか。このままのノリなら面白そう。

 公開9日めの初回、新宿の劇場は全席指定で、ムビチケカードで金曜に確保。当日は12〜13分前に開場。下は小学生くらいからいたが、メインは中高年の男性。女性は、20人くらいいたうち5人ほど。最終的には若い人も少し増えて、128席に7割くらいの入り。キャパは小さいが、2週めでこれはまあまあか。もっと入ってもいい映画だと思うが。

 スクリーンはカーテンがないのでいつも開きっぱなし。角丸のシネスコ・サイズ。何本か東宝作品の予告があって、ほぼ暗くなってから四角の枠付きだがビスタっぽい比率で「ジュラシック・ワールド」の新予告。長くなって、内容がわかるようになってきたら、なんだやヤバそうな雰囲気。3Dだし、ダメかも。8/7公開。

 枠付きのビスタっぽい「トゥモローランド」は、これまでと同じ内容。なぜ左右マスクじゃないんだろうか。6/6公開。

 マスクが左右に広がって、本編終了後に続編の予告があるという文字が出て、本編へ。


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