2015年5月31日(日)「誘拐の掟」

A WALK AMONG THE TOMBSTONES・2014・米・1時間54分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA、with Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定)

公式サイト
http://yukai-movie.com
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

1991年、ニューヨーク市警の刑事マット・スカダー(リーアム・ニーソン)はアル中で、相棒からも酒をやめるように言われていたが、酔った状態で銃撃戦に巻き込まれ、犯人を射殺する。1999年、刑事を辞めライセンスを持たずに私立探偵をやりながら、断酒会に参加しているマットのもとに、断酒会の参加者の自称絵描きのピーター・クリスト(ボイド・ホルブルック)が現れ、弟のケニー・クリスト(ダン・スティーヴンス)を助けてくれという。ケニーは麻薬のディーラーで、妻が何者かに誘拐され、40万ドルの身代金を払ったにもかかわらず惨殺されたのだった。それで犯人を見つけ出し連れてきてくれと。一旦は断るが、マットはあまりにむごたらしい犯行の手口を聞き、引き受ける決心をする。

76点

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 日本ではGレイティングだが、かなり強烈な連続猟奇殺人事件を描いたハードボイルド作品。大人でも気分が悪くなるほど。きっちりハードボイルドの世界を構築し、約2時間、そこへ連れて行ってくれる。驚いた。すごい映画。IMDbでは6.5点だが、堪能した。

 とても手がかりがないように思われる事件を、ちょっとしたところからコツコツともつれた糸をほぐすように、1つ1つ解いていくところが素晴らしい。そして、いろんな人が関わってきて、小さな相棒までできて、それぞれに人生とドラマがあって、それがこの映画に深みを与えている。悲惨なものが多いが、うんざりさせられることはない。その辺のさじ加減も絶妙。それに対して犯人だけはバックグラウンドが語られない。純粋な悪として存在する。被害者が対照的に犯罪者というのもおもしろい。

 スーパー・ヒーローも出てこない。普通の人々が、普通に悪戦苦闘して生きている。しかし、アル中だった主人公は身寄りのない少年にとってスーパー・ヒーローになる。嫌な猟奇殺人事件で、とんでもない犯人で、嫌な世の中なのに、最後には小さな希望を見せて、さわやかに微笑みとともに終わる感じ。圧倒された。

 元刑事の私立探偵というハードボイルドを絵に描いたような設定の主人公マット・スカダーはリーアム・ニーソン。最近映画に出まくり。つい最近、最強の63歳アクション「ラン・オールナイト」(Run All Night・2015・米)に出ていたばかり。使っていた銃は1911オート。セカンダリーにS&Wのステンレス製センチニアル。

 相棒となるTJはブライアン“アストロ”ブラッドリー。ちょっと生意気だけど、実は子供らしい純粋な子というキャラクターにぴったり。ニューヨーク出身だが、イギリスの音楽ディション番組で注目を集めたラップ・ミュージシャンなんだとか。今後の活躍に期待したい。拾う銃はベレッタM92。

 事件の調査を依頼してくる兄のピーター・クリストはボイド・ホルブルック。ため息の暗い映画「ファーナス/訣別の朝」(Out of the Furnace・2013・米/英)にちょっとした役で出ていて、「ラン・オールナイト」ではエド・ハリスのバカ息子を演じ、リーアム・ニーソンと共演している。チンピラ的な役がぴったり。軍にいたという設定で、使っていたライフルはレミントンのM700ぽかった。

 弟の麻薬デーラー、ケニー・クリストはダン・スティーヴンス。どことなくボイド・ホルブルックに似ていて無理のない設定。イギリス出身で、残念な続編「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」(Night at the Museum: Secret of the Tomb・2014・米/英)にランスロット役で出ていた。本作ははるかに適役。使っていた銃はグロック。

 真っ赤なコートが印象的な麻薬ディーラーの美しい娘ルシアはダニエル・ローズ・ラッセル。本作が劇場映画デビュー作になるらしい。セリフも少ないが印象に残った。今後活躍するかも。指を切られているところが妙にリアルでよかった。

 犯人の1人、レイはデヴッド・ハーパー。「007/慰めの報酬」(Quantum of Solace・2008・英/米)やドキュメンタリー・タッチの警察もの「エンド・オブ・ウォッチ」(End of Watch・2012・米)、「イコライザー」(The Equalizer・2014・米)などに出ている。TVの出演も多い。

 原作は小説家で脚本家でもあるローレンス・ブロックの「獣たちの墓」(二見書房)。オリバー・ストーンが脚本を書いた「800万の死にざま」(8 Million Ways to Die・1986・米)の原作もローレンス・ブロックだ。それもマット・スカダー・シリーズの1本になるらしい。

 監督・脚本はスコット・フランク。脚本家として1990年代から多くの作品に関わっていて、だいたいどれも面白い。ケネス・ブラナーの「愛と死の間で」(Dead Again・1991・米)、ジョディ・フォスターが監督した「リトルマン・テイト」(Little Man Tate・1991・米)、ニコール・キッドマンの「冷たい月を抱く女」(Malice・1993・加/米)、バリー・ゾネンフェルドの「ゲット・ショーティ」(Get Shorty・1995・米)、アカデミー脚本賞を受賞した「アウト・オブ・サイト」(Out of Sight・1998・米)など、話題作がずらりと並ぶ。最近だとシドニー・ポラックの「ザン・インターピリター」(The Interpreter・2005・英/米ほか)、「ウルヴァリン:SAMURAI」(The Wolverine・2013・米/英)などを書いている。

 製作の1人が俳優でもあるダニー・デヴィート。「ゲット・ショーティ」や「アウト・オブ・サイト」など過去にもスコット・フランク脚本を製作している。最近見かけないなあと思ったら、TVには出ている模様。ボクが最後にスクリーンで見たのは「ゲット・ショーティ」の続編「Be Cool/ビー・クール」(Be Cool・2005・米)だったような。

 ほかに銃はDEAの連邦捜査官がグロック、犯人はM4のような銃を使っていたがimfdbではロッキー・マウンテンのパトリオット・ピストルとしている。銃声は大きく、かなり怖め。しかし、残酷さを演出するシーンでは刃物が多く使われている。

 公開2日めの初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に前売り券で劇場まで行って確保。ここはムビチケカードに対応していない。無駄に時間と交通費がかかる。独自の会員制オンライン予約かあ。メリットが少ないなあ。当日は7〜8分前になってやっと開場。すでに「ぴったらず」が流れているという状態。おい、おい。

 最終的には226席に4割くらいの入り。ほぼ中高年の男性。若い女性が少し。もっと入ってもいい映画だと思うが...... 。

 ほぼ暗くなってから上映された予告編で気になったのは、やはり気になるのは「クーデター」。東南アジアの某国でクーデターが発生して、外国人が標的になるというもの。オーウェン・ウィルソンとピアース・ブロスナンが出ている。本当にありそうだし、予告だけでも緊迫感がすごい。9/5公開。

 上下マスクの「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」もすごそうだが、同じパターンの予告なので注目度はかなり落ちる。やはり公式サイトの映像の方が情報が多い。8/7公開。

 上下マスクの「ターミネーター新起動ジェニシス」も古いパターンのようだが、若干長いか。その分興味を引いた。7/11公開。

 上下マスク「レフト・ビハインド」はニコラス・ケイジなので思いっきりB級だろうが、その分、自由に作れるからか面白そう。6/27公開。

 1983年に起きた誘拐事件の実話の映画化、上下マスクの「ハイネケン誘拐の代償」も面白そう。6/13公開。

 スクリーンが左右に広がって、映画泥棒のあと暗くなって本編へ。


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