2015年6月6日(土)「ハンガー・ゲームFINAL:レジスタンス」

THE HUNGER GAMES: MOCKINGJAY PART1・2014・米・2時間02分(IMDbでは123分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA、with Panavision)/ドルビーATMOS、DATASAT(IMDbではAuro 11.1も)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.hungergames.jp
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

カトニス(ジェニファー・ローレンス)が気づくと、そこは第13地区の地下にある秘密基地。反乱軍のリーダー、アルマ・コイン首相(ジュリアン・ムーア)は、政府軍と戦うためカトニスを広告塔にし、人々に立ち上がるよう呼びかけるプロパガンダ放送を行う。スノー大統領(ドナルド・サザーランド)は対抗策として捕らえた反乱軍兵士を公開処刑し、さらにキャピトル・シティに残されたピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)を使って「停戦しよう」と呼びかけさせる。反乱軍は対抗措置として負傷者を治療する病院を見舞うカトニスの映像を流すが、そこを政府軍が爆撃。しかしカトニスが放った矢が爆撃機に命中し2機を撃墜する。そしてカトニスが思わず口走った「私たちを焼く火は、あなたたちも焼く」が合言葉となって市民を鼓舞し、戦いは一層熾烈さを増していく。

71点

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 ファイナルじゃないじゃん。「パート2に続く」じゃないか。騙された。こんなやり方が通じるのは映画界と振り込め詐欺業界くらいでは? しかも前作はすっかり忘れてしまったので(心に残るものでもなかったし)思い出すまで時間がかかり、さらに結局ほとんど思い出さなかったが、わからなくても単独作品としてみることができた。もはや「ハンガー・ゲーム」ではなく、普通のSF戦争映画になっている。これまでなんて関係ない。ならば前2作はなんだったんだろう。まあ、そんな映画。本編上映前に日本語ナレーションの前2作のあらすじも出るが......。酷くつまらなかったことは思い出した。

 ただ戦争映画としてみても、奇抜な気に障るエグいファションは出てこなかったものの、ハリウッド映画のパターンだらけの構成で、水戸黄門的決まり切った展開。安定感というか安心してみられる作品が良い人向き。映画スレしているボクなんかは、先が読めてもの足りなくてしようがない。その分、戦争映画としては、よくできていると言えるかも。

 とはいえ、始まってから30分以上、何も起きないなんて。だから退屈。眠かったあ。気を失うかと思った。ここだけはパターンではない。ハリウッド映画は、基本30分以内に必ず大きな展開がある。

 冒頭、大分前の爆撃で街が廃墟になったはずなのに、見に行くとあちこちで煙が出ている。それなのに映画の後半で前夜に爆撃された現場へ出て行った時の焼け野原の方が煙は少ない。どういう演出だ? 空爆で住民が一斉に非難しているのに、主人公の妹だけは猫を探しに行っていない。こんなヤツ映画にしかいないでしょ。それを主人公が探しに行って、ドアが閉まりかかる。あと15秒、10秒...... 絶対ギリギリで間に合うパターン。主人公をプロパガンダに使おうとして、それを主人公が嫌がるとか、主人公の恋人が敵につかまっていて、助けに行くとか、マシンガンで当たらないのに弓矢でジェット機を撃ち落とす(しかも一石二鳥!)とか、防護策もせずにただ突っ込む人々とか、みんなパターン。原作がこうなのか?

 しかもシロートか初心者みたいに、カメラを動かしたがる。シネスコなのに。最近はデジタル化でカメラが小型になって、EOSなどでも高画質な絵が撮れるから、ついつい動かしたくなるらしい。見てる方はカメラが動くと見にくくて仕方がない。気持ち悪くなる。何が写っているかもわからない。本作はたくさんカメラを動かして撮ったのだろうが、プロデューサーとかに止められてあまり使わなかったという感じ。

 キャストやSFX、セット、衣装などは大変豪華だが、内容が伴っていない。でもアメリカでは受けるらしい。未来型オスプレイのような垂直離着陸機は、まるで本当に作ったみたい。ワン・カットで後部のハッチから乗り込み離陸するし、降下して隊員をおろすとそのまま上昇していくし、一緒に撮ったとしか思えない。素晴らしい技術。爆撃の音も大きくリアルで禍々しく、しかもATMOSではないが天井側からも聞こえる立体感。劇中、ジェニファー・ローレンスが歌う「ハンギング・ツリー」という曲も良かった。これがエンド・ロールでももう一度流れ、耳に残る。アメリカではすでに15万ダウンロードを達成ているらしい。

 ラストに「フィリップ・シーモア・ホフマンに捧ぐ」と出る。それからエンドクレジットが流れ、CGの鳥のマークが動いて続編は11/20(金)、世界同時公開と出た。

 配役は前作とほぼ同じ。ただカトニスのジェニファー・ローレンスや、ピータのジョシュ・ハッチャーソン、カトニスの妹プリムローズのウィロウ・シールズらが大人になって、印象が変わっている。

 新しいキャラクターとしては、反乱軍のリーダーとして登場するアルマ・コイン首相のジュリアン・ムーア。さすがにうまいが、本作のようなファンタジーだともったいないような感じも。なにしろ近作「アリスのままで」(Still Alice・2014・米/仏)でアカデミー主演女優賞を受賞している。

 また第1シーズンだけよかったTVドラマ「プリズン・ブレイク」(Prison Break・2005-2009・米)のティーバッグ役でブレイクした強烈な悪役ロバート・ネッパーが政府側の幹部で出ていたが、ほとんど存在感もなく顔見せといった程度。次回活躍するのだろうか。反乱軍のホッグス大佐はマハーシャラ・アリ。途中でよくわからなくなったTV・SF「4400未来からの生還者」(The 4400・2004-2007・米/英)に出ていた人。

 脚本は、またまた変わってピーター・クレイグとダニー・ストロングに。ピーター・クレイグは「ザ・タウン」(The Town・2010・米)を監督のベン・アフレックと共に書いた人で、なんと「ノーマ・レイ」(Norma Rae・1979・米)のアカデミー賞女優サリー・フィールズの息子。ダニー・ストロングは「大統領の執事の涙」(The Butler・2013・米)を書いた人で、役者としても活躍している。前後編なので次作「ハンガー・ゲームFINAL:レボリューション」も2人が書いている。また原作者のスーザン・コリンズが脚色を担当している。

 監督のフランシス・ローレンスは、とても残念な「2」から監督していて、その前はなかなか面白かった「コンスタンティン」(Constantine・2005・米/独)や、リメイクSF「アイ・アム・レジェンド」(I Am Legend・2007・米)を監督しているのだが、なぜ「2」みたいなものを撮るのか。もちろん自作も監督する。まあ戦争映画になるのなら大丈夫だろう。

 銃は、最初の方のTV放送での処刑に使われていたのがシルバーのオートマチック。一瞬だったのでよくわからなかったが、HScっぽい雰囲気。ヒロインのカトニスはアーチェリー=弓を、彼氏のゲールはクロスボウだが、兵士たちはG36、FN2000、タボールTAR-21など。反乱軍の女性司令官はM1カービン。マシンガンもあったが、確認できなかった。

 ウェポン・コーディネーターはマーク・リロヤー(Marc Leroyer)。古くは「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)や「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)などを手がけていて、最近だと「96時間/レクイエム」(Taken 3・2014・仏)を手がけている。フランスの人だろうか。キー・アーマラーはニック・ジェフリーズ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜にムビチケカードで確保。当日は12〜13分前に開場。下は親に連れられた小学生くらいからいたが、やはりメインは中高年。女性は25人中4〜5人という割合。最終的には200席に4.5割くらいの入り。まあこんなものだろう。あまり日本受けはしないかなと。

 スクリーンはカーテンなしのむき出し、シネスコ、角丸。まあケータイをいじっているヤツが多い。まぶしい。気になった予告編は…… 明るいまま始まった四角 の枠付きの「ファンタスティック・フォー」は、とても残念なできだったので再起動するらしく、監督とプロデューサーらによるビデオ・メッセージ。もともとキャラが漫画向きなのに実写化して面白いものにできるのか。ほんのちょっとだけの映像ではまったくわからない。手足がゴムのように伸びる男とか岩男とか、火男、透明女だからなあ。秋公開、公式サイトでは10/9公開。

 佐藤健と神木隆之介が少年ジャンプの漫画家を目指す左右マスクの「バクマン。」は人気漫画の映画化らしい。10/3公開。公式サイトはクッキーをONにしないと見られない。

 ラストにディオールのCMが流れたが、そのクォリティーの高さに圧倒される。演出はもちろん、画質のよさ、色使い、構図……ヘタな映画の予告をしのぐ。

 マスクが左右に広がって本編へ。


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