2015年6月13日(土)「ハイネケン誘拐の代償」

KIDNAPPING MR. HEINEKEN・2014・蘭/英/ベルギー・1時間35分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(表記なし。IMDbではデジタル、Arri ALEXA)/音声:表記なし

(英15指定、米R指定)

公式サイト
http://kidnapping.asmik-ace.co.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1982年オランダ、アムステルダム。コル・ヴァン・ハウト(ジム・スタージェス)、ヴィレム・ホーレーダー(サム・ワーシントン)、ヤン“カット”ブラート(ライアン・クワンテン)、フランス“スパイクス”メイヤー(マーク・ファン・イーウェン)の幼なじみ4人は、共同で不動産関係の仕事をしていたが、所有するビルは不法占拠者が居すわる不良物件で、資金繰りに困っていたものの銀行が金を貸してくれなかった。そこで大企業のハイネケン社の社長ハイネケン(アンソニー・ホプキンス)を誘拐し、身の代金をせしめる計画を立てるが、それすらも実行する金がなく、実行する資金を得るため、まず銀行を襲うことにする。

71点

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 実話に基づく映画。ドラマ的にまとめられているが、内容としてはドキュメンタリー的で、事実を描いただけで、何がテーマか、何を言いたかったのかがいまひとつ伝わってこなかった。犯罪は割に合わないと言うこと? 物事は思うように進まないと言うこと? 仲の良い友達でもお金がからむと仲たがいをすると言うこと? だからか、キャストが豪華で演技もうまいのに、ごく普通の印象。

 予告では、誘拐したハイネケンの社長がやり手の強引なワンマン社長で、若い誘拐犯たちも手玉に取られて、誘拐事件がとんでもないほうへ展開していくのかと思った。ところが、そういう話ではなかった。映画ではよくある誘拐事件で、展開もほぼ普通。ただ、人質が帰ってきて犠牲者は出なかったまれなケースだったと。ただし、正確なところはわかっていないらしい。身の代金のすべては見つかっておらず、出所したら回収するのではないかと、この作品は見ている。

 それにしても、世紀の犯罪の割にずさん。犯人たちは巧妙なようでいて、いざ実行すると「バカなのか」と思ってしまうほど。すぐ仲間割れはするし、金を受け取った後のことを考えていなかったのかと。実話だから仕方ないとしても、知り合いに電話してはいけないことなど、子供でも知っているだろう。それなのに電話して、案の定捕まる。バカか。だいたい会社経営に行き詰まって、誘拐しようと考える時点でバカだが。

 この事件は同じオランダで2011年にもルトガー・ハウアーのハイネケン役で映画化されている。「誘拐 狙われたハイネケン(未)」(De Heineken ontvoering・2011・蘭)。日本では劇場公開されずDVDスルーで2012年に発売されたようだが、犯人グループから公開差し止めの訴訟がなされて、裁判になったんだとか。本作より話題作だったのでは。なぜ、すぐにまた映画化したのだろう。

 アリフレックスのデジタル・カメラを使っていながら、日本映画のようにコントラストが低めで、画質があまりよろしくない。天候とかいろいろあるのだろうが、もったいない。

 誘拐グループのリーダー、コル・ヴァン・ハウトはイギリス出身のジム・スタージェス。数学的ギャンブル映画「ラスベガスをぶっつぶせ」(21・2008・米)の大学生役で注目された人。その後、あまり作品に恵まれなかった感じで、ハリウッド大作「クラウンドアトラス」(Cloud Atlas・2012・独/米ほか)も残念な感じに。つい最近ミステリー「鑑定士と顔のない依頼人」(La migliore offerta・2013・伊)に出ていたが、本作で再び沈没か。

 コルの相棒ヴィレム・ホーレーダーはオーストラリア出身のサム・ワーシントン。本作ではあまり存在感がなかった。彼でなくとも良かったのかも。「アバター」(Avatar・2009・米/英)で大ブレイクし、「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独)にも出演。残念なリメイク「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)で滑って、B級路線へ。最近はシュワルツェネッガーの特殊部隊アクション「サボタージュ」(Sabotage・2014・米)に出ていた。今後「アバター」の続編2、3、4があるので、復活できるか。

 ハイネケン社長はイギリス出身のアンソニー・ホプキンス。サーの称号をもつ名優だ。「ヒッチコック」(Hitchcock・2012・米/英)は雰囲気はぴったりだった。本作の前に残念な「ノア約束の船」(Noah・2014・米)に出ていた。1937年生まれだから80歳近いが、TVも含め6本も新作が控えている。

 原作は。新聞記者から週刊誌の編集長を経てフリーの犯罪ジャーナリスト、ノンフィクション作家となったピーター・R・デ・ヴリースの小説「The Kidnapping of Alfred Heineken」(1987)。

 脚本はウィリアム・ブルックフィールド。弁護士から作家になったそうで、脚本を担当した作品は日本で劇場公開されていない。「MILK」(Milk・1999・英)では監督もやっているが日本劇場未公開。本作が初の公開作品ということになるらしい。

 監督はスウェーデン出身のダニエル・アルフレッドソン。父も監督で、弟も「ぼくのエリ200歳の少女」(Lat den ratte komma in・2008・スウェーデン)や「裏切りのサーカス」(Tinker Tailor Soldier Spy・2011・仏/英/独)の監督のトーマス・アルフレッドソンという芸能一家。ニエル・アルフレッドソンはTVムービーの「刑事マルティンベック」(Mannen pa balkongen・1993・スウェーデン/独)で高く評価され、世界的に話題となったシリーズの続編「ミレニアム2火と戯れる女」(Flickan som lekte med elden・2009・スウェーデン/デンマーク/独)と「ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士」(Luftslottet som sprangdes・2009・スウェーデン/デンマーク/独)を監督した。

 銃は、ちょっと古い話で、ヨーロッパということからか、誘拐のために用意するのが、第二次世界大戦時の銃で、MP40サブマシンガン。引き金に注意しろといわれているのに、弾の入ったマガジンを装着して、暴発させる。そしてワルサーP38。あとハイパワーのようにも見えたが、あとではガバメントのようだった。ほかに追ってくるタクシーを追っ払うのにUZIのメタル・ストック付きを使う。またP38はラストでベレッタM92になっていた。このへんはロケ場所が変わって銃も変わってしまったのかもしれない。警察は定番のMP5に、スナイパー・ライフルはPSG-1を使用。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前売り券だったので劇場窓口まで行って金曜に確保。電車賃を考えると当日券と変わらない気が......。当日は12〜13分前に開場。ほぼ中高年だが、高齢者多め。女性は1/4ほどいたろうか。最終的には251席に5.5割くらいの入り。あまり宣伝していない割には入っていたのではないだろうか。

 スクリーンはビスタで開いていて、気になった予告は...... 上下マスクのピクサー新作「インサイド・ヘッド」は日本語吹き替え声優のビデオ・メッセージ付き。7/18公開。

 アニメ「バケモノの子」は新予告に。リメイクもされた「ベスト・キッド」(The Karate Kid・1984・米)のような印象だが、どうなんだろう。7/11公開。

 何度見ても怖そうなのが「クーデター」。突然、旅行先の外国でクーデターが起きて、外国人が標的にされたら...... とてもリアルな感じで、誰もが巻き込まれる可能性のある設定。9/5公開。

 上下マスクの「レフト・ビハインド」は、今やB級の帝王ニコラス・ケイジ主演で、思いっきりB級の印象だが面白そうではある。日本語ナレーションでの予告。6/27公開。

 スクリーンが左右に広がって、ようやく暗くなって本編へ。


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