2015年6月14日(日)「予告犯」

2015・製作幹事:TBS/WOWOW・1時間59分

シネスコ・サイズ(表記なし)/ドルビー・デジタル(表記なし)

(一部日本語字幕版もあり)

公式サイト
http://yokoku-han.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ある日、ネット動画でTシャツにシンブンシの頭巾をかぶった“シンブンシ”と名乗る男が現れ、法で裁かれない社会の悪を制裁すると宣言する。まず集団中毒を起こした食品加工会社を制裁すると予告。予告通り工場で火災が発生し、吉野絵里香(戸田恵梨香)率いる警視庁サイバー犯罪対策課が捜査に当たることになる。すると予告は3件目で、2週間前から始まっていて、すべて実行されていることがわかる。さらに、ネット・カフェの「ビットボーイ」のパソコンを使って送信されていることが判明するものの、あちこちを経由していて本当の所在地がわからない。そうこうしているうちに、第4の予告がアップされる。

76点

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 思っていた映画とは違って、感動した。原作漫画を読んでいないのが良かったのかもしれない。予告では、てっきりパソコンお宅的な話で、もっとお宅とか炎上とか、ネット寄りの話かと思ったのだが、意外とドラマとしての展開の方が大きく、社会問題や人間ドラマが面白く、それらがよく伝わってきて感情が揺り動かされた。そして、よくできた話だなあと。ラストにすべてがピタッとかさなって、快刀乱麻のごとく、すべて解決する。ミステリーらしい。

 たしかに、ちょっと大げさなところはあるかもしれない。こんな酷いヤツがいるかという部分もあると思うが、短時間でその事情や感情をできるだけ的確に観客に伝えるには、ここまでやらなければならなかったのだろう。その意味でソフト開発会社の社長役の滝藤賢一と廃棄物処理業者の社長役の仲野茂のポジションは大変重要で、多少カリカチュアライズされたて大げさだとしても、これくらい憎たらしくないと成立しない。さすがにうまいなあと感心させられる。

 派遣切り、ツイッターへの過激写真投稿、いじめ、食品偽装問題......など、ポップな話題を取り込み、それらをスッキリと制裁して見せる。だれもがそう思ってできないことを、映画の中で彼らはやってみせる。その気持ちよさ。読んでいないが、たぶん原作漫画の面白さもそんなところにあったのだろう。それだけでも楽しめるが、それらは枝葉であって、本作はには幹となるストーリーがあり、それがまた感動的。キャラクターも立っていて、ちゃんと説得力があって等身大。たぶんこれが大事なのだろう。犯罪を犯していても、決して憎めない、ゆるせるキャラクターたち。そして見事な対比。そこがまた面白い。

 ただ、デジタル撮影だと思われるのに、画質が昔の日本映画のイメージのまま。ロケ撮影だとコントラストが低く、いつも曇天のようなボーとした感じはどうしたことだろう。室内になると色が乗ってきてコントラストが強くなるのに。もったいない。

 シンブンシ男のリーダー、ゲイツは生田斗真。「脳男」(2013・日)は感情のない感じがなかなか良かった。本作は普通な感じが逆に良く、いじめを受けるあたりは抜群のリアリティ。次も話題作「グラスホッパー」に出るらしい。

 眼鏡をかけているからとゲイツにあだ名を付けられたノビタは、濱田岳。気が小さくて、ちょっとトボケた役が抜群。「鴨川ホルモー」(2009・日)のエキセントリックな役は彼しかできないような感じ。一方で。そんな雰囲気を逆手にとった「ゴールデンスランバー」(2009・日)の殺し屋役も実に良かった。

 太めだからとゲイツにあだ名を付けられたメタボは荒川良良(よしよし)。独特の雰囲気がすごい。名わき役という感じか。「鴨川ホルモー」でも良い味を出していた。最近作は「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」(2015・日)。

 関西弁をしゃべるからとあだ名を付けられたカンサイは鈴木亮平。残念な「ガッチャマン」(2013・日)に出ていた人。予告では「TOKYO TRIBE」(2014・日)が強烈だったが、「海街diary」(2015・日)にも出ているらしい。今やあちこちに引っ張りだこ。

 犯人を追いつめる東大出のキャリア捜査官、吉野絵里香は戸田恵梨香。まあ、この人も映画に良く出ている。「DEATH NOTEデスノート」(2006・日)の時はまだ新人だったような気がするが、ここまで売れっ子になるとは。TVの「SPEC(スペック) 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」(2010・日)の主演も大きかったのかもしれない。今年は「エイプリルフールズ」(2015・日)も「駆込み女と駆出し男」(2015・日)も話題になった。

 その吉野の部下の岡本は宅間孝行。普通な感じと、つぶやくようなセリフが絶妙。劇場版の「劇場版SPEC」やTVのスペシャル版にも出ている。

 吉野の東大出の同級生で公安の北村は田中圭。切れ者だが嫌みな感じが良く出ていた。小栗旬の時代劇「TAJOMARU」(2009・日)など印象的だったが、コミカルな役もやる。最近で印象に残っているのは「図書館戦争」(2013・日)か。

 抜群のうまさだったのは、ソフト開発会社の社長役の滝藤賢一。まあ嫌らしい。「クライマーズ・ハイ」(2008・日)の精神がおかしくなる記者役が素晴らしく、強く印象に残った。その後も「ゴールデンスランバー」などいろいろ出ていて、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」(2010・日)も存在感があり、「半沢直樹」(2013・日)は壊れそうになる感じが素晴らしかった。「エイプリルフールズ」にも出ている。

 そしてもう1人、産廃業者の社長、石田役は仲野茂。元ロック・バンド「アナーキー」のメンバー(ボーカル?)だそうで、そんなロックな感じが、役ににじみ出ていたのかも。素晴らしい存在感で、「カイジ人生逆転ゲーム」(2009・日)や「クローズEXPLODE」(2013・日)に出ているらしい。

 原作は「ジャンプ改」(集英社)に連載された漫画で、作者は筒井哲也。脚本は林民夫。「ゴールデンスランバー」や「永遠の0」(2013・日)、「白ゆき姫殺人事件」(2014・日)などを書いている。

 監督はビデオ作品「ほんとうにあった!呪いのビデオ」シリーズの構成を手がけた中村義洋。ホラー映画「仄暗い水の底から」(2001・日)の脚本も書いている。しかしホラー系ではない「チーム・バチスタの栄光」(2008・日)を監督。「映画怪物くん」(2011・日)や濱田岳が主演した「ポテチ」(2012・日)も撮っているが、何といっても良かったのは「ゴールデンスランバー」と、「白ゆき姫殺人事件」。コメディ系は見ていないが、ミステリー系で期待したい。

 銃はSATがMP5を使用。刑事はたちはグロックのようだったが、確認できなかった。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定。配給会社の東宝より松竹系の劇場の方が大きめの劇場だったのでそちらで見た。金曜にムビチケカードで確保。当日は13〜14分前に開場。下は大人に連れられた小学生くらいから、中学生もいたものの、やっぱりメインは中高年。男女比は4対6くらいで女性の方が多く、年齢層は女性の方が若め。これは漫画が原作ということと、生田斗真が出ているからということだろうか。最終的には157席に7.5割くらいの入り。でも、話題作なのに、公開9日目くらいでこんな縮小した感じ?

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は...... 四角の枠付きの「ビッグゲーム」は不時着したアメリカ大統領と少年ハンターのファンタジー。思いっきりB級だがサミュエル・L・ジャクソンの主演なので...... 8/15公開。

 四角の枠付き「図書館戦争 THE LAST MISSION」って、あの設定で続編が作れるのか。話、終わってない? 10/10公開。

 枠付き「S-最後の警官-」はTVからの劇場版。主人公は銃を使わず、犯人を殺さず捕まえるのか信条の特殊部隊の警官の話だが、毎回語られる自分の信条の演説がうっとうしかったが、銃を使わない特殊部隊でアクション映画として成立するのか。AKの至近距離からの銃撃を2枚重ねにしたジュラルミンの盾でやすやすと防ぐヤツだからなあ。8/29公開。


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