2015年6月21日(日)「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

MAD MAX: FURY ROAD・2015・豪/米・2時間00分

日本語字幕:手書き風書体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/ドルビーATMOS(IMDbではドルビー・デジタル、DATASAT、SDDSも)

(豪MA15+、米R指定、日R15+指定)(日本語吹替版、3D、IMAX上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/madmaxfuryroad/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

核戦争後の未来、世界は荒れ果て、水もガソリンも尽きかけていた。そんな中、元警察官のマックス(トム・ハーディ)はイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)率いる軍団に捕まえられ、人間輸血袋として使われることになる。そして大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が指揮する部隊が、遠く離れたガス・タウンへガソリンを調達に出かけるが、途中でフュリオサは進路を変更し、そのまま逃亡してしまう。実はタンク内にイモータン・ジョーに捕らわれていた女達を隠していたのだ。逃亡を知ったイモータン・ジョーはウォー・ボーイズと呼ばれる戦闘員たちを引き連れ、大部隊で後を追う。マックスはウォー・ボーイズの1人、ニュークス(ニコラス・ホルト)の人間輸血袋として車両の前面に縛りつけられ、出撃する。するとフュリオサたちはヤマアラシと呼ばれるグループの支配地域に逃げ込み、逃げる側も追う側もヤマアラシの攻撃を受けることになる。

84点

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 面白い。暴力満載だが、楽しめる大冒険活劇。ロード・ムービー的でもある。素晴らしい絵作りと音響効果。ビックリの車両デザインに、奇妙で不気味なメイクというかファッションというか、キャラクター・デザイン。ビートの効いた音楽。ちゃんと「マッドマックス」の世界観を基盤としつつ、先の読めない奇想天外な物語のように感じさせる(実はありがちなストーリーだが)。とにかく過激で刺激的。安定感のあるどっしりとした映画作りだが、どこか新人監督のようでもある。味方も敵もたくさん残酷に死ぬ。暴力表現が苦手な人には刺激が強すぎるかもしれない。IMDbでは8.6点の高評価。

 3D上映もあり、時間の関係で3Dで見たが、特に必要性は感じられず、また効果もそれほどではなく、むしろ速いアクションに3Dはじゃま。3Dの認識には時間がかかるようで、それが速いカット、速いアクションとなじまない。そのため、見ている途中からすでに疲労を感じてしまう。さらに軽いめまいというか、乗物酔というか、そんなかすかに不快な感覚になる。映画そのものを楽しみたいのなら、2Dで見ることをお勧めしたい。少なくとも、この作品には必要ない。

 1人のワンマンなボスが牛耳る王国から、女達を助けて逃げるというようなパターンは昔からよくあった気がする。最近でもデンゼル・ワシントンの「ザ・ウォーカー」(The Book of Eli・2010・米)で、週末戦争の後、悪党のボスが仕切る町から主人公がボスの女のミラ・クニスを連れ出す。当然追ってきて撃ち合いになる。

 それにしても過激なスタント。デジタルを使わなければ不可能だと思うが、どうやって撮ったのかわからないほどリアルで怖い。猛スピードで失踪する車から落ちて、後を追う車に引かれる。1カットだ。すごいなあ。かつてはスタントマンが死んだとかいう噂を流してプロモーションしたとかしないとかあったが……。

 やたらセリフで説明しないのが良い。主人公であるマックスはほとんどセリフもなく、ヒーロー的でもはない。むしろセコイ感じで、ラストになってかっこ良くなるだけ。あまり印象に残らない。対してヒロインのフュリオサを演じたシャーリーズ・セロンは抜群に良い。こちらもほとんどセリフはないが、強い意志で仲間を助け、理想の地を目指してひたすら突き進むその姿。カッコいい。感情も良く伝わってくる。そして、それが打ち砕かれたとき、ひとり砂丘で号泣するさまは感動的。ラストで主人公を助けるところもけなげだった。こちらのほうが主人公なのかもしれない。マックスは狂言回し的存在。

 その存在感の薄いマックスはトム・ハーディ。クリストファー・ノーランの傑作SFミステリー「インセプション」(Inception・2010・米/英)で良い味を出して注目され、「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)でその演技力と存在感は主役を食うほどに。バイオレンス映画「欲望のバージニア」(Lawless・2012・米)も素晴らしく、本作につながるが、本作は実力を発揮できるほど重要な役ではなかった。まあクリストファー・ノーラン監督にかかると光るということか。くさりを外すのにソウド・オフした水平二連ショットガンを使う。手首にパラコードのブレスレットを巻いていた。

 この映画の主役的存在感で光り輝いていたのはフュリオサ役のシャーリーズ・セロン。髪を坊主刈りにして熱演。男っぽいクールな感じもありつつ、リーダー感も出して、女っぽいところもあるという難しい役。あまり作品に恵まれていない気もするが、初期のキング・コング的大猿物語「マイティ・ジョー」(Mighty Joe Young・1998・米)などはとても良かった気がする。女性の連続殺人犯の実話を自ら映画化した「モンスター」(Monster・2003・米/独)では特殊メイクで醜く変身したが、あれより本作の方が良い感じ。悪役を演じた「スノーホワイト」(Snow White and the Huntsman・2012・米)は残念なものながら、「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)はなかなか貫録があって良かった。超美形なので、演じる役にブラッド・ピットと似たような傾向があるのかも。使っていた銃は、M92かと思ったら、ポスターを見るとタウルスPT92のアジャスタブル・サイト搭載版PT99(裏焼きだったが)。トラックに隠していたのはグロック。また信号銃も使う。狙撃シーンで使うのはソ連時代のSKS(シモノフ)カービン。ほかに隠し持っていた銃にルガーP08、モーゼルC96、ワルサーP38などがバッグに入っているが、第1作で使われたモデルガンのような雰囲気だった。

 一緒に旅をすることになる白塗りのウォー・ボーイズのニュークスはニコラス・ホルト。ほとんど素の顔がわからないが、本当はなかなかの二枚目。あの残念な「ジャックと天空の巨人」(Jack the Giant Slayer・2013・米)でジャックを演じていた人。「X-MEN:フューチャー&パスト」(X-Men: Days of Future Past・2014・米/英)ではビーストの若い頃をやっていた。本作では白塗りばかりかスキンヘッド。強烈。ボスのイモータン・ジョーからシルバーのSAAアーティラリーを託されるが、撃つ前にトラックから落としてしまう。口の中にシルバーのカラー・スプレーのようなものを吹きつけてハイになるところが不気味。

 大ボスのイモータン・ジョーはヒュー・キース=バーン。「ダークナイトライジング」でトム・ハーディが演じたベインのようなビジュアル。オリジナル第1作の「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)でトーカッターという役をやっていたらしい。オーストラリアのSFアクション「チェーン・リアクション」(The Chain Reaction・1980・豪)にも出ていたようだが、最近はTVが多いみたい。使っていた銃はコルトのパイソンかと思ったら、銃口が大きかったので、.44マグナムのアナコンダだったようだ。

 脚本は監督でもあるジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラソウリスの3人。ブレンダン・マッカーシーはストーリーボード・アーティストからキャリアをスタートさせた人で、長編劇場映画の脚本は初めてらしい。ニコ・ラソウリスはオーストラリアの俳優で、オリジナル第1作の「マッドマックス」にグリース・ラットという役で出ていたんだとか。TVが多く、映画もオーストラリア作品がメインで、日本ではほとんど劇場公開されておらず、それも2001年以降、出ていない。それでいきなり本作の脚本とは。

 製作・監督・脚本の3役はジョージ・ミラー。1945年生まれの70歳。オリジナル第1作の「マッドマックス」で劇場映画監督・脚本デビュー。その後ハリウッドで、あまりピンと来なかった大人のファンタジー「イーストウィックの魔女たち」(The Witches of Eastwick・1987・米)や、息子を難病から救おうとする夫婦の物語「ロレンツォのオイル/命の詩」(Lorenzo's Oil・1992・米)を撮ったかと思うと、日本では多いに受けた「ベイブ」(Babe: Pig in the City・1995・豪)というファミリーで楽しめるファンタジー・コメディを撮ったり、3D-CGアニメの「ハッピーフィート」(Happy Feet・2006・豪/米)も撮っている。実に才能あふれる監督だ。そして70歳でこの過激さとは。

 銃は、冒頭、出動する車両に乗せられていたのはM2マシンガンとデクチャレフのRPDなど。そしてボスの大奥に1人残っていたばあさんが持っていたのが、水平二連ショットガン。谷を閉鎖して出てくるやつらはポンプ・ショットガンを装備。沼地のようになった緑の地で武器将軍が使うのが、コルト・フロンティアのシルバーのロング・バレル、バントラインの2挺拳銃。ウォー・ボーイズはウージー、MP5K、AKなど。逃げた女の1人はウインチェスターM92かと思ったら、imfdbではロッシだという。ほかにドラム・マガジンを装着したオートマチック・ショットガンのマシンガンみたいなものも出てくるが正体は不明。

 武器係りはロケ地ごとにいるようで、オリジナルの銃を作ったのはモーリー・マグレガーという人らしい。映画だとデンゼル・ワシントンとライアン・レイノルズの「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア/日)で小道具係の助手をしていたらしい。マリー・スーパーバイザー兼キー・アーマラーはランス・ピータース。武器商人を描いたニコラス・ケイジの「ロード・オブ・ウォー」(Lord of War・2005・米/独/仏)や、レオナルド・ディカプリオの「ブラッド・ダイヤモンド」(Blood Diamond・2006・独/米)、「デンジャラス・ラン」、最近だと「ケープタウン」(Zulu・2013・)の武器係りを勤めている。どれも銃の設定がリアルで、レアなものも混じっていて良かった。どうも南アの人らしく、本作も南アでロケされているし。

 混乱を避けて公開2日目の初回を選んだら3D上映しかなかったので、仕方なくチョイス。プラス400円もの価値があるとは思えない。映画に集中できないし、選びたくなかったが……。金曜にムビチケカードで確保して、当日は12〜13分前に開場。その前にアニメの「ラブライブ」などがあったせいで、劇場は大混雑。若い男女でどんでもなくあふれていた。観客層はやはり中高年がメイン。前3作を劇場で観た人たちだろう。それでも20人中、若い人は5〜6人。女性は2〜3人。最終的に若い人も結構増えて、老若比は6対4くらいに。といっても301席に2〜3割くらいの入り。3Dだからなあ。2Dならもっと入っていただろう。

 スクリーンはシネスコで開いていて、気になった予告編は……マスクが左右に広がってからの「ストレイヤーズ・クロニクル」は新予告に。叫んでいるシーンばかりで、ちょっと不快だったが、大丈夫か。6/27公開。

 「PANネバーランド、夢のはじまり」はヒュー・ジャックマンが悪役をやるらしい。素晴らしい絵作りで、圧倒される。そして意外と恐そう。10/31公開。また3Dか。

 「ターミネーター新起動」の予告は割と立体的だった。安心はできないが、ジェームズ・キャメロンが絶賛したとかしないとか。監督は「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」(Thor: The Dark World・2013・米)のアラン・テイラー。どうなんだろう。7/10公開。


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