2015年6月27日(土)「レフト・ビハインド」

LEFT BEHIND・2014・米/加・1時間50分

日本語字幕:丸ゴシック体下、北村広子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri ALEXA)/表記なし(IMDbではドルビー・デジタル、DATASAT、SDDSも)

(米PG-13指定、加PG指定)

公式サイト
http://leftbehind-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

パイロットのレイ・スティール(ニコラス・ケイジ)は誕生日で、大学生の娘のクローイ(キャシー・トムソン)も実家へ戻ってきたが、妻のアイリーン(リー・トンプソン)が宗教にはまっていてクローイさえも近寄りたがらなかった。レイも誕生日なのにあえてロンドンへのフライトの予定を入れ、家を離れるような状態。しかもCAの金髪美女ハティ(ニッキー・ウィーラン)をU2のコンサートに誘っていた。ところが、JFK国際空港を離陸してしばらくすると、ドカンという音と共に、子供や一部の乗客が消えてしまう。操縦を任せていた副操縦士も消えたため、ハティといちゃついていたレイはあわてて送受室に戻り、機体を立て直す。一方、地上でも突然ドカンという音と共に子供や一部の人間が消えて強いた。ドライバーが消えたりして、あちこちで事故が起き、パニックとなっていた。しかも、それは世界中で起きていた。

63点

1つ前へ一覧へ次へ
 何だ、コレ!? 宗教映画か。てっきり航空パニック・ミステリーかと思っていたのに。うーむ。あまりに宗教臭が強く、しかも一応の結末はあるものの大きな話の単なるイントロで、話にならないというか、人にはあまりお勧めできない。久々の空振り映画。さすがB級の帝王ニコラス・ケイジ。やっちまったな!!  よくラジー賞候補にならなかったなあ。というか、ラジー賞にも相手にされなかったというべきか。これはビデオ(DVDとかBD)発売のための、アリバイ作りか。

 チラシなどには「全世界シリーズ累計6,500万部を越す大ベストセラー」「全米でスマッシュヒット」とあったが、IMDbでもめったに見たことがない3.1点という低評価。たぶん世界のワートス映画の何本かに入るに違いない。その原作はアメリカの牧師が聖書をベースに書いた終末論の物語らしい。日本人的には全く納得できない物語だし、大きな話の前振りに過ぎないじゃないか。しかも主人公というべきパイロットは爽やかで良い人として演じられているが、実際にはとんでもない悪党野郎で、アメリカのバラエティTV「チーターズ」の標的になりそうなヤツ。演出も演技もおかしいだろう。結末は「心の準備ができていたら」って?! 結局「信じるものだけが救われる」っていうのも、神様はそんな差別をするものなんだろうか。交換条件じゃないか。一部の人は有無を言わさず天国へ、それ以外はそのまま生き地獄へ。その基準が信じるかどうかなんて、インチキ宗教とかマフィアなんかと同じ手口だ。最後には多宝塔とかを売りつけるのかと思った。

 誰でも簡単に操縦室に入れたり、帽子を操縦室内でもかぶっていたり、出発前に機体の点検をしなかったり、リアルさは全くなし。良い加減。イメージだけで作っているらしい。シロートのボクでも変だと思うくらい。乗客もすぐに文句を言うバカばっかりで、女性客はすぐにヒステリーを起こす。それらが1つのポイントではあるが、まったくステレオタイプなキャラクター。コメディか。

 主役のレイ・スティールはニコラス・ケイジ。悪い役なのに、最初はさわやかな感じで演技。ちょっとおかしいチグハグさ。パイロット姿もコスプレにしか見えない。アカデミー賞俳優だから監督も使いにくいのかもしれないが、いまやB級映画の帝王という感じ。本作の前に出ていたのが「ザ・レジェンド」(Outcast・2014・加/中/米)という中国映画。しかもIMDbで4.6点という低評価。それなのに、製作中や製作を予定している映画が10本もある。何なんだろう。不思議。

 ちょっとしか出てこないが、宗教にはまったレイ・スティールの妻アイリーンはリー・トンプソン。大ヒットSFアドベンチャー「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future・1985・米)のママ、ロレインを演じた人だ。しかし直後に撮った「ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀」(Howard the Duck・1986・米)が酷すぎて自爆。シリーズが終了するとほとんどTVの方へ移行。久々の映画出演だったらしい。

 銃はエアー・マーシャルが持っていたP229。地上で出てくるショットガンは、モスバーグのポンプ。

 原作はティム・ラヘイとジェリー・ジェンキンズの共著による『レフトビハインド』(いのちのことば社フォレストブックス刊)。宗教系の出版社で、シリーズが12冊ある。

 脚本はポール・ラロンドとジョン・ペイタスの2人。ポール・ラロンドは本作のプロデューサーでもあり、脚本はどれも宗教絡みのものが多い感じ。「レフト・ビハインド」のタイトルの作品は1994年から何度も書いているし、プロデュースしている。ジョン・ペイタスは「レフト・ビハインド」シリーズも書いているようだが、ほかはSFアクションらしい。

 監督はイギリス生まれのヴィク・アームストロング。1960年代からスタントマンとして活躍している人で、007シリーズはクレジットなしだが日本ロケした「007は二度死ぬ」(You Only Live Twice・1967・英)から関わっていたらしい。年齢的な問題もあるのだろ、最近はスタントロコーディネーターとして活躍している。最近作はケネス・ブラナーが監督したアクション「エージェント:ライアン」(Jack Ryan: Shadow Recruit・2014・米/露)。監督作は4本で、TVが2本。劇場映画だとドルフ・ラングレンのアクション「バニシング・レッド」(Joshua Tree・1993・米)と本作がある。実は、こんなに低評価だったのに、すでに次作を撮り終わっているらしい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に窓口まで行って前売り券で確保。当日はおそらくアニメで混雑するロビーで待っていると、10分前くらいに開場。最初は20人ほどで、ほぼ中高年。女性は3〜4人。セーラー服を着たおやじも1人。最終的には若い人も2〜3人来て、226席に50人ほどの入り。初日でこれはかなり酷いが、これ以上増えるとも思えない。

 スクリーンはビスタで開いており、明るいまま始まった気になった予告編は…… TVの劇場版、上下マスクの「HERO」は新予告に。面白そうな気がしてしまう。作りがうまい。7/18公開。

 上下マスクの「ターミネーター:新起動」はジェームズ・キャメロンのメッセージ付き。ってことは、面白いのかも。3Dというのが気にかかる。3Dに面白い作品はほとんどない。7/10公開。

 ほぼ暗くなって、スクリーンが左右に広がって、「映画泥棒」のあとようやく暗くなって本編へ。もっと早く暗くして欲しいなあ。


1つ前へ一覧へ次へ